閣僚交流停止 冷静さ欠く中国の対応

朝日新聞 2010年09月22日

尖閣沖事件 冷静さこそ双方の利益だ

中国政府からすれば当然の対抗措置ということなのだろうが、あまりに激しすぎる。これによる長期的な悪影響を深く憂慮せざるをえない。

尖閣諸島沖で中国漁船が海上保安庁の巡視船に衝突した事件で逮捕、送検された中国人船長の勾留(こうりゅう)延長が19日、裁判所から認められた。中国側はこれに対し、閣僚級以上の交流停止や航空交渉中断などの措置に出た。

日本が実効支配する尖閣諸島を、中国は自らの領土と主張している。そこで起きた事件を日本が国内法で処理するのを黙認すれば、尖閣諸島が日本の領土だと認めることになる。だから、日本の司法手続きは「不法で無効だ」と強硬姿勢に出ているのだろう。

とりわけ遺憾なのは、未来の日中関係を担う若者の民間交流まで止めたことだ。温家宝首相の提案による1千人規模の「日本青年上海万博訪問団」は、出発直前になって受け入れ延期の通知がきた。こうした対応は次世代の率直な相互理解の妨げになろう。

中国側は船長を直ちに無条件で釈放するよう求めている。日本政府の弾力的な判断を期待していたふしがある。だが事件の性格を考えれば、日本側が「法にのっとり粛々と」との姿勢を貫くのは、法治国家として当然だろう。

中国の過激なネット世論は交流停止を支持している。しかし、満州事変のきっかけとなった柳条湖事件79周年の18日も、船長の勾留延長が決まった19日も、上海万博会場の日本館や日本産業館には数時間待ちの行列があった。

日本人の多くと同じように、中国人の多くも日中関係が悪化するのを望んではいまい。

中国のメディアや識者のなかには、中国人の対日感情が悪化すれば不買運動などが起き、中国頼みの日本経済は立ちゆかなくなる、といった主張をする向きが少なくない。

こうした議論は2005年の反日デモの時にも広まったが、相互依存が深まるグローバル化時代、日本だけ一方的に損をする経済関係はあり得ない。明らかに中国にもマイナスである。

ここは両国政府が知恵を出しあい、冷静に事態を収めなければならない。

小泉政権時代の靖国参拝問題でこじれた日中関係は、「戦略的互恵関係」の確認で落ち着きを取り戻した。双方の協力がアジアと世界に平和と安定、発展と利益をもたらすという認識だ。

日中はアジアにとっても世界にとっても「最も重要な二国間関係の一つ」である。今回の事件に目を奪われるあまり、営々と育んできた果実を失うようなことがあってはならない。

かつて外交関係樹立に尽力した田中角栄、周恩来両首相は「求同存異」(小異を残して大同につく)の精神を強調した。

それは今も変わらないはずである。

毎日新聞 2010年09月21日

閣僚交流停止 冷静さ欠く中国の対応

中国政府が閣僚級以上の日中政府間交流の停止を決めた。沖縄県・尖閣諸島沖での中国漁船と海上保安庁巡視船の衝突事件で日本側が逮捕した中国人船長の拘置を延長したことに対する対抗措置としている。しかし、中国側の対応は冷静さを欠いていると言わざるをえない。

中国側の新たな措置には航空路線増便に関する政府間交渉に向けた協議の停止なども含まれている。議会交流のために先週予定されていた全国人民代表大会幹部の訪日はすでに延期され、東シナ海のガス田開発に関する条約締結交渉の延期も一方的に通告してきている。

自民党の安倍政権が首相の靖国神社参拝を見送って以降、日中関係は急速に改善されてきた。それが再び悪化への道をたどるようなことは断じて避けなければならない。事態をこれ以上エスカレートさせないための賢明な対応が必要だ。中国側には自重を求めたい。

そもそもの発端は日本の領海内での衝突事件である。海上保安庁によれば、中国漁船が突然かじを大きく切り追跡中の巡視船にぶつかってきたという。漁船の船長を公務執行妨害容疑で逮捕した海保の対応は非難されるべきものではない。

船長は故意による衝突を認めていないという。だが、漁船には不法操業の疑いもあると日本側は見ている。裁判所が船長の拘置期間の延長を認めたのも事実関係の解明に必要と判断したからだろう。

中国側は丹羽宇一郎駐中国大使に抗議した際、「船長を即時無条件で釈放しなければ強烈な対抗措置を取る」と述べた。中国側は日中が開発事業に共同出資することで合意しているガス田「白樺」に新たな機材を運び込んでもいる。機材が単独開発に向けたものなら日中合意に反する。丹羽大使が一方的な開発行為を控えるよう申し入れたのは当然だ。

08年5月の日中共同声明には首脳の相互訪問と国際会議の場を活用した首脳会談の実施が盛り込まれている。こういう時こそ首脳同士の接触が求められるが、23日にニューヨークで開幕する国連総会では首脳、外相会談とも見送られることになった。残念なことだ。

官民のレベルで影響が拡大しているのが心配だ。北京での観光イベントへの日本の団体の参加が中止されたほか、青少年交流の一環として派遣予定だった日本青年上海万博訪問団の受け入れも中国側に拒否された。

前原誠司外相は日本の法律に基づき「粛々と対応する」と述べる一方で「偶発的な事故」との見方も示し、反日デモの混乱を抑えた中国政府の努力を評価もしている。この冷静さを保つべきである。

産経新聞 2010年09月23日

尖閣漁船事件 危険はらむ中国首相発言

尖閣諸島付近での中国漁船と日本巡視船の衝突事件に関し、中国の温家宝首相が21日、ニューヨークで、日本に勾留(こうりゅう)されている漁船船長の即時無条件釈放を要求、応じなければさらなる対抗措置を取ると警告した。日本の法制度を無視した露骨な脅しで、きわめて遺憾というほかない。

温首相の発言は、これまで戴秉国国務委員はじめ中国側が外交ルートで行ってきた要求と基本的に同じだ。だが温氏は共産党最高指導部の一員であって、中国の党、政府が一切譲歩しない方針を固めている表れといえる。

中国側はすでに、閣僚級交流や東シナ海の天然ガス共同開発条約交渉の中止などに加え、日本ツアーの中止など民間交流にも影響が拡大しつつある。追加措置の検討にも入っており、そこには経済交流の制限や、尖閣諸島海域への艦艇派遣といった強硬手段も含まれていると伝えられる。

日中関係は小泉純一郎政権の時代も、靖国神社参拝問題などで冷え込んだ。中国で大規模な反日デモが発生したが、実務関係や経済交流への影響はほとんどなく、日中貿易は拡大し「政冷経熱」といわれた。双方が、政治的対立が実務関係に及ばないよう、冷静に対処した結果だった。

中国側が強硬姿勢を続ける理由の一つは、尖閣諸島の領有権の主張を含め、東シナ海での海洋権益確保である。日本固有の領土である尖閣諸島の日本の領有権を認めず、中国漁船の拿捕(だほ)、船長の勾留を非難する背景だ。

しかし事件は、日本の領海内で中国漁船が不法操業し、巡視船に体当たりして逃亡を企てたという単純なものだ。日本当局は、公務執行妨害容疑で船長を取り調べる司法手続き中であり、それに中国が圧力を加えるのは内政干渉以外の何物でもない。

中国の強い圧力に対し、日本政府が中国側に自制を求め、「粛々と法手続きを進める」のは当然である。しかし中国側の対抗措置に、手をこまねいているだけでよいのか。在外公館を通じて、各国に尖閣問題についての日本の立場を説明するなど積極的に発信して対抗する必要がある。

日中が敵対関係に陥りかねない事態は双方にとって不幸である。司法の結論を待ち、政府は中国側との対話を模索し、事態の拡大を防ぐ努力をすべきだ。

産経新聞 2010年09月20日

尖閣漁船事件 組織的な背景を解明せよ

事(こと)は日本の主権にかかわる。安易な処理など許されない問題だ。

沖縄・尖閣諸島(石垣市)付近の日本領海で海上保安庁の巡視船に中国漁船が衝突した事件で、検察当局が公務執行妨害容疑で取り調べている中国人船長の勾留(こうりゅう)期間延長を裁判所が認めた。

検察当局には、国内法にのっとった厳正な捜査によって勾留期限の29日までに立件するよう求めたい。

東シナ海の石油や天然ガス資源が確認されてから尖閣諸島の領有権を主張し始めた中国政府は船長の即時釈放を要求する強硬姿勢を続けている。東シナ海のガス田共同開発をめぐる日中両政府の条約締結交渉の延期を通告したのに加え、ガス田の一つに掘削用のドリルとみられる機材を搬入する新たな圧力もかけてきた。

前原誠司外相は、中国側の掘削開始が確認されれば「しかるべき措置をとる」と言明した。当然である。日本単独での試掘や国際海洋法裁判所への提訴といった対抗措置を念頭に、毅然(きぜん)とした姿勢を示すべきだ。

日本の司法が外国からの政治的圧力の影響を受けてはならないのは言うまでもない。それにもまして日本政府として解明しなければならないのは今回の中国漁船衝突事件の背景である。単に違法操業の範囲内でのみとらえるわけにはいかない。

尖閣諸島海域では中国漁船の領海侵犯が急増している。海保によれば、事件発生当日には160隻ほどの中国船籍とみられる漁船が同海域で確認され、そのうち約30隻が日本の領海を侵犯していた。これらの船舶がすべて漁船であったのかも問題視すべきだ。

海洋権益の拡大を狙う中国は海軍力の増強によって実効支配をめざす海域を広げる動きを加速させている。南シナ海では中国の漁船団に武装した漁業監視船が同行するのが常態化し、今年6月には中国漁船を拿捕(だほ)したインドネシア海軍艦船と交戦寸前の状態にまでなったという。

尖閣諸島での事件は中国がこうした強引な手法を東シナ海にも広げてきたことを示している。

米政府は、日本の施政下にある尖閣諸島を「日米安保条約の適用対象」とする立場をとる。日米両政府が情報共有を密にし、組織性が疑われる事件の背景を徹底的に解明する必要がある。

この記事へのコメントはありません。

この社説へのコメントをどうぞ。
お名前
URL
コメント

この記事へのトラックバックはありません。

トラックバックはこちら
http://shasetsu.ps.land.to/trackback.cgi/event/496/