菅直人首相が掲げた「オープンでクリーンな政治」の担い手にふさわしい人物であり、歓迎する。
菅政権を支える民主党の幹事長に、岡田克也外相の起用が決まった。
岡田氏は、開かれた党運営と政治資金の徹底した透明化が持論だ。
代表選に勝ち再スタートを切る菅政権は、「脱小沢」路線を今後も貫く。そのことを強く印象づける人事だといっていい。
党内融和を優先し中間派からの幹事長起用も一時は検討されたようだが、そんなことをしたら世論の手痛いしっぺ返しを受けていたに違いない。
小沢一郎前幹事長を退けることができたのは、大方の民意が菅首相続投を支持したからである。国民の多くは、小沢氏に体現される「古い政治文化」からの脱却を求めている。
首相が向き合い、語りかけるべきは国民である。就任以来、党内向けの発信に腐心しているようにも見えたが、これを機に明確に方向転換すべきだ。
この人事で世代交代の歯車も回る。
政権交代は、菅首相、小沢氏と、鳩山由紀夫前首相の3人が力を合わせることで実現した。しかし、先の代表選最後の演説で、菅、小沢両氏がともに世代交代の重要性を指摘したように、いつまでもトロイカの時代ではない。
岡田氏はポスト・トロイカの最右翼の一人だ。野党時代とは比べものにならない重責を負う政権党の要として、研鑽(けんさん)を積み、次に備えてほしい。
熾烈(しれつ)な代表選のしこりを解き、党をひとつにまとめあげるのは、誰が幹事長になっても容易ではない。
国会議員の半数近くが、小沢氏に投票した事実は重い。菅首相の方針に沿って党運営にあたるのは当然として、小沢氏支持層にどう対応していくか、岡田氏の政治的な力量が試される。
ねじれ国会をどう乗り切るかなど、目先の懸案処理も大切だが、次代を担う岡田氏だからこそ、あえて期待することもある。それは政権交代のある政治をしっかり根づかせるため、長期的な視点に立って党のあり方を点検し、必要な改革を実行することだ。
首相候補選びである代表選の仕組みを改める。政治資金の配分について透明なルールをつくる。党の日常活動や地方組織を強化し民意を吸い上げる。将来を委ねる若手の育成も急務だ。
政権交代時代にふさわしい政党の内部統制の仕組みを築き上げることは、与野党を通じた最重要の課題である。
今回、日本外交の顔である外相が、わずか1年で交代することになった。岡田氏が核軍縮や地球温暖化対策の分野で強い指導力を発揮していただけに、その点は問題がある。
だが、幹事長として新しい政治文化をつくるため先頭に立つというなら、それもやむをえないこととしよう。
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