岡田新幹事長 ねじれと「挙党」の試練

朝日新聞 2010年09月17日

岡田新幹事長 新しい政治文化の先頭に

菅直人首相が掲げた「オープンでクリーンな政治」の担い手にふさわしい人物であり、歓迎する。

菅政権を支える民主党の幹事長に、岡田克也外相の起用が決まった。

岡田氏は、開かれた党運営と政治資金の徹底した透明化が持論だ。

代表選に勝ち再スタートを切る菅政権は、「脱小沢」路線を今後も貫く。そのことを強く印象づける人事だといっていい。

党内融和を優先し中間派からの幹事長起用も一時は検討されたようだが、そんなことをしたら世論の手痛いしっぺ返しを受けていたに違いない。

小沢一郎前幹事長を退けることができたのは、大方の民意が菅首相続投を支持したからである。国民の多くは、小沢氏に体現される「古い政治文化」からの脱却を求めている。

首相が向き合い、語りかけるべきは国民である。就任以来、党内向けの発信に腐心しているようにも見えたが、これを機に明確に方向転換すべきだ。

この人事で世代交代の歯車も回る。

政権交代は、菅首相、小沢氏と、鳩山由紀夫前首相の3人が力を合わせることで実現した。しかし、先の代表選最後の演説で、菅、小沢両氏がともに世代交代の重要性を指摘したように、いつまでもトロイカの時代ではない。

岡田氏はポスト・トロイカの最右翼の一人だ。野党時代とは比べものにならない重責を負う政権党の要として、研鑽(けんさん)を積み、次に備えてほしい。

熾烈(しれつ)な代表選のしこりを解き、党をひとつにまとめあげるのは、誰が幹事長になっても容易ではない。

国会議員の半数近くが、小沢氏に投票した事実は重い。菅首相の方針に沿って党運営にあたるのは当然として、小沢氏支持層にどう対応していくか、岡田氏の政治的な力量が試される。

ねじれ国会をどう乗り切るかなど、目先の懸案処理も大切だが、次代を担う岡田氏だからこそ、あえて期待することもある。それは政権交代のある政治をしっかり根づかせるため、長期的な視点に立って党のあり方を点検し、必要な改革を実行することだ。

首相候補選びである代表選の仕組みを改める。政治資金の配分について透明なルールをつくる。党の日常活動や地方組織を強化し民意を吸い上げる。将来を委ねる若手の育成も急務だ。

政権交代時代にふさわしい政党の内部統制の仕組みを築き上げることは、与野党を通じた最重要の課題である。

今回、日本外交の顔である外相が、わずか1年で交代することになった。岡田氏が核軍縮や地球温暖化対策の分野で強い指導力を発揮していただけに、その点は問題がある。

だが、幹事長として新しい政治文化をつくるため先頭に立つというなら、それもやむをえないこととしよう。

毎日新聞 2010年09月17日

岡田新幹事長 ねじれと「挙党」の試練

ねじれ国会と、党の亀裂という試練が待ち受ける。菅直人首相の続投に伴う新布陣の焦点だった民主党の新幹事長人事は「脱小沢」路線の中心的存在である岡田克也外相の起用が決まった。

党を二分する代表選で小沢一郎前幹事長との戦いを制した首相だが、今後の政権運営は小手先の融和策で打開できるような生やさしいものではない。首相支持派の重鎮である岡田氏が前面に出ることは、むしろ当然だ。重責を担う岡田氏も次代の首相候補たり得るか、真の力量が試されよう。

参院選敗北の責任を取った形の枝野幸男氏に代わる幹事長の人選は、今回の党役員・内閣改造人事の最大のポイントだった。誰を選ぶかで国会議員票で首相と接戦を演じた小沢氏との距離感がほぼ、決定づけられるためだ。

首相は当初、旧民社党系の川端達夫文部科学相ら反小沢色が薄い「中間派」起用も検討し、固辞されたという。党内融和を優先する狙いだったとみられるが、もはやそんな考えで乗り切れる国会や党の状況ではないはずだ。

結局は「脱小沢」路線を維持し、クリーンでオープンなイメージのある岡田氏に落ち着いた。確かに岡田氏の起用に、小沢氏を支える勢力の反発は強まろう。だが、岡田氏や仙谷由人官房長官、前原誠司国土交通相ら首相支持の中枢が一蓮托生(いちれんたくしょう)の構えを示さないようでは、そもそも政権運営は立ち行かないだろう。

首相と同様に、今後問われるのは代表経験者でもある岡田氏の手腕である。岡田氏は昨年の衆院選の際も幹事長だったが、選挙の実務は小沢氏が掌握していた。今回は、文字通り要として、分裂状態になりかねない党の結束を維持し、ねじれ国会を乗り切る司令塔の役割を担わねばならない。

外相としての岡田氏は核密約問題の情報公開などに取り組んだ。だが、米軍普天間飛行場の移設問題では米軍嘉手納基地への統合に言及し混乱を加速するなど、必ずしも十分な成果を上げられなかった。原理原則を重んじる政治姿勢は評価できるが、党をまとめ、国会で野党と合意を形成するには一皮むけた度量や柔軟さも必要だ。得意分野である税制、社会保障の与野党協議に積極的に取り組んでもらいたい。

首相は役員人事を固め、17日に新たな改造内閣を発足させる予定だ。民主党政権発足から丸1年を経過し、ほころんだ体制を立て直す好機である。反小沢、親小沢にとらわれず幅広い人材を起用し、本来の意味の挙党態勢を構築することを改めて求めたい。

読売新聞 2010年09月17日

岡田新幹事長 継続された「脱小沢」体制

新しい民主党幹事長に岡田克也外相が、内定した。岡田氏は外相留任を希望し、幹事長を固辞していたが、最後は菅首相の要請を受け入れた。

岡田氏は、留任する見通しの仙谷由人官房長官、玄葉光一郎政調会長と同様、「反小沢」の立場をとってきた。退任する枝野幹事長も「反小沢」が鮮明だった。

一連の人事は、菅政権として、小沢一郎前幹事長による「二重権力」構造を否定し、「脱小沢」体制を継続する意思表示だろう。

民主党代表選では、衆院選政権公約の見直しや消費税、米軍普天間飛行場移設などの政策課題をめぐり、菅首相と小沢氏の主張は大きく食い違っていた。

表面的な挙党態勢の構築に配慮するあまり、小沢氏に近い人物を幹事長に起用すれば、党の基本路線があいまいになる恐れがあった。それでは、半月を費やした代表選の意味が失われる。

菅首相は、党員・サポーターや地方議員の票で圧勝し、国会議員の票でも僅差(きんさ)ながら勝利した。政権公約の「原点回帰」や、米海兵隊不要論といった小沢氏の主張は否定されたと言える。

3年後の参院選まで大きな国政選の予定はなく、首相は、政策遂行に専念したい考えだ。

ただ、菅政権の今後は、極めて多難である。

15日の首相と小沢氏の会談がわずか10分で終わったように、代表選で表面化した党内の亀裂を修復するのは容易ではない。

「反小沢」の人材を内閣と党の要に配したことで、小沢支持グループは、「党内野党」として非協力的な姿勢を強めるだろう。

今後、残る内閣や党のポストで、小沢氏や鳩山前首相のグループの人材をどう処遇し、政策遂行の体制を整えるのか。菅首相は難しい判断を迫られる。

より厳しいのが衆参ねじれ国会の運営だ。参院選敗北で参院では少数与党となったため、野党の協力なしで法案は成立しない。

首相は、政策・法案ごとに与野党が協力する「部分連合」を志向するが、協調姿勢を見せる野党はいない。来月上旬にも召集される臨時国会では、岡田新幹事長らの手腕がさっそく試されよう。

ねじれ国会の下では、野党も法案の成否に責任を負うが、一義的な責任は無論、政権党にある。

首相は、国益や国民生活にかかわる政策を推進するため、政権公約の抜本的な見直しを求める自民党などの声に謙虚に耳を傾け、大胆に政策転換を図るべきだ。

産経新聞 2010年09月17日

岡田幹事長 「脱小沢」貫き現実路線を

菅直人首相が民主党の新幹事長に岡田克也外相を起用した。仙谷由人官房長官や野田佳彦財務相らも留任する方向で新体制の骨格が固まった。

岡田氏は幹事長に内定後、「天命だ」と語った。党代表や幹事長を務めた経験を生かして現実路線への転換を進め、政治とカネの問題で自浄能力を発揮しなければならない。

民主党は小沢一郎前幹事長の自らの政治資金管理団体をめぐる収支報告書の虚偽記載問題で、小沢氏が説明を果たそうとしなかったことを事実上、容認した。そのことに国民が強い不信感を抱いていることを再認識すべきである。

岡田氏に課された役割は「脱小沢」路線を党運営で貫くことだ。クリーンなイメージを持たれてきた岡田氏と小沢氏の政治資金問題に批判的な姿勢をとってきた仙谷氏の留任は、再選された首相が「脱小沢」路線に踏み出す第一歩といえる。

その一方で、首相が小沢氏と輿石東参院議員会長に党代表代行を打診したというのは理解に苦しむ。代表選前に浮上した鳩山由紀夫前首相や小沢氏らとの「トロイカ体制」を復活させることにつながらないか。

小沢氏は検察審査会の再審査の結果次第で、強制起訴される可能性がある。要職を打診するのではなく、小沢氏が国会で説明責任を果たすよう促すことが、首相や岡田氏の責務である。

衆院選マニフェスト(政権公約)の修正をはじめ、政府・与党の政策決定のあり方も改めて問われる。同時に、岡田氏には安全保障や経済など民主党の基本政策の議論が欠けてきたことを考えてもらいたい。

今後、消費税増税や緊急経済対策などをめぐり、与野党の政策協議に臨むうえでも、欠かせない課題といえよう。

岡田氏を幹事長に起用することについては、小沢氏の支持グループが難色を示し、調整に手間取ったとされる。代表選で勝利した首相の人事構想に対し、「挙党態勢」を理由に敗者側が異論を唱えるのは道理に合わない。どちらの陣営からも、諸課題に対処できる人材を抜擢(ばってき)して危機を克服せねばならない。

円高株安対応や尖閣諸島をめぐる安全保障上の問題を考えれば、論功行賞的な人事を考えている余裕などないはずだ。

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