11月の中間選挙を前にオバマ米大統領が追加景気対策を打ち出した。
総額では3500億ドル(約29兆円)に上るが、財政悪化に配慮し、規模が小粒になった印象もある。
景気をテコ入れして、雇用を拡大する狙いは妥当だが、どの程度の効果があるのか不透明だ。不十分であれば、対策の一層の上積みが求められよう。
追加策は、道路や鉄道などのインフラ整備に、6年間で500億ドル(約4・2兆円)を投じるほか、企業の設備投資や研究開発を促す法人税減税が柱だ。年末に期限が切れる中間所得層向けの所得税減税も継続する。
雇用対策などが争点の中間選挙が迫る中、大統領の支持率は急落し、与党・民主党が苦戦している。劣勢を挽回したい危機感が、大統領に追加策を決断させた。
今後の焦点は、政府と野党・共和党の調整だ。共和党は追加策に反対しており、関連法案を巡る議会の審議は難航しそうだ。
政治的な駆け引きで、追加策がさらに圧縮されたり、実施が大幅に遅れたりすれば、景気浮揚効果が減殺されかねない。追加策を速やかに実施できるよう、大統領は指導力を発揮してほしい。
米国経済は試練に直面している。大統領が昨年初めに決めた8000億ドル(約68兆円)の景気対策などで金融危機を克服し、米国経済はプラス成長に転じたが、最近は急減速しているからだ。
今年4~6月期の国内総生産(GDP)の実質成長率は、年率換算で前期比1・6%増にとどまった。成長のエンジン役である個人消費の低迷が主因だ。
失業率は9%台後半に高止まりし、雇用悪化が消費を冷やす悪循環に陥っている。景気の二番底も懸念される。
米国経済の立て直しは、日本など世界経済の動向にとっても大きな課題である。
難局を乗り切るには、追加金融緩和策に踏み切った連邦準備制度理事会(FRB)と政府の連携強化がますます重要になろう。
米国経済の先行き不透明感から、為替市場ではドル売り圧力が根強い。1ドル=83円台に上昇した円相場が、一段と急騰する展開も警戒しなければならない。
米当局は輸出増で景気を下支えする狙いから、輸出産業の競争力にプラスに働くドル安傾向を容認する姿勢もうかがえる。
日本政府と日銀は、過度な円高の阻止へ、為替介入を含めた機動的な対応を取る必要がある。
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