米景気対策 速やかな実施で二番底を防げ

毎日新聞 2010年09月14日

代表選きょう投票 財源・景気対策 10年先も考え選択を

約2週間の選挙戦で、何が見えただろうか。代表選を実施する以上、「日本の明日につながる理念、政策論争を」と願ったが、理念も深い政策論争も十分だったとは言い難い。

事実上、首相を決める選挙である。それなのに、外交や社会保障制度、環境・エネルギーといった重要なテーマがほとんど語られなかった。

政策面で議論が集中したのは財政・景気だ。小沢一郎前幹事長は主に二つの面から菅直人首相を批判している。「官僚主導の予算編成」が一つ。景気対策が生ぬるいというものがもう一つだ。しかし、では自分ならどうするか、となると政権党の党首に期待される実効性や責任感を伴った約束は、ほとんど聞くことがなかった。

財源の裏付けが弱いことを指摘されてきた小沢氏は、いくつか案を示した。地方への補助金を自治体の使い勝手がよい一括交付金に切り替えることで、歳出を圧縮するというもの。そして、国の資産のうち約200兆円を証券化すれば、まとまった収入が得られるというものだ。だが、具体的な仕組みや、来年度からいくらの財源が新たに確保できるかといった見通しは示していない。

景気刺激では2兆円規模の緊急対策を提唱し、足りなければ国債を増発してでも財政出動を行うべきだと積極姿勢をアピールしている。

浮かび上がってくるのは歳出膨張、借金増大の結末だ。一方、資金の使い道では「全国の高速道路を速やかに完成させる」というように自民党的なものへの回帰がにじむ。

菅氏はどうだろう。首相就任後、最も力を注いだ課題は財政再建だった。歳出の伸びを今後3年間、凍結することを決め、消費税率の引き上げについても一時は踏み込んだ。だが、参院選での敗北を受け、財政健全化への熱意は薄れた印象だ。年内の補正予算編成に前向きの発言をしたり、法人税減税の検討を本格化させるなど、人気配慮の政策に傾斜し過ぎていないか。

財政再建に代わって前面に出てきたのが「雇用」だ。規制緩和や産業構造の転換などを通じ、本気で雇用創出に努めるというのなら歓迎できる。しかし、雇用を隠れみのにし、不人気な政策や困難な決断から逃げるようではいけない。そもそも小沢氏に「官僚主導の予算」と批判されるのは、政策に優先順位をつけ、低いものは切るという決断を避けたからだ。

両氏とも、積極的に支持したくなる政策に乏しい。マイナスの少ない方を選ぶ選挙かもしれない。それでも、2人の路線を進めた先にある日本は違った姿に見えてこよう。

読売新聞 2010年09月12日

米景気対策 速やかな実施で二番底を防げ

11月の中間選挙を前にオバマ米大統領が追加景気対策を打ち出した。

総額では3500億ドル(約29兆円)に上るが、財政悪化に配慮し、規模が小粒になった印象もある。

景気をテコ入れして、雇用を拡大する狙いは妥当だが、どの程度の効果があるのか不透明だ。不十分であれば、対策の一層の上積みが求められよう。

追加策は、道路や鉄道などのインフラ整備に、6年間で500億ドル(約4・2兆円)を投じるほか、企業の設備投資や研究開発を促す法人税減税が柱だ。年末に期限が切れる中間所得層向けの所得税減税も継続する。

雇用対策などが争点の中間選挙が迫る中、大統領の支持率は急落し、与党・民主党が苦戦している。劣勢を挽回(ばんかい)したい危機感が、大統領に追加策を決断させた。

今後の焦点は、政府と野党・共和党の調整だ。共和党は追加策に反対しており、関連法案を巡る議会の審議は難航しそうだ。

政治的な駆け引きで、追加策がさらに圧縮されたり、実施が大幅に遅れたりすれば、景気浮揚効果が減殺されかねない。追加策を速やかに実施できるよう、大統領は指導力を発揮してほしい。

米国経済は試練に直面している。大統領が昨年初めに決めた8000億ドル(約68兆円)の景気対策などで金融危機を克服し、米国経済はプラス成長に転じたが、最近は急減速しているからだ。

今年4~6月期の国内総生産(GDP)の実質成長率は、年率換算で前期比1・6%増にとどまった。成長のエンジン役である個人消費の低迷が主因だ。

失業率は9%台後半に高止まりし、雇用悪化が消費を冷やす悪循環に陥っている。景気の二番底も懸念される。

米国経済の立て直しは、日本など世界経済の動向にとっても大きな課題である。

難局を乗り切るには、追加金融緩和策に踏み切った連邦準備制度理事会(FRB)と政府の連携強化がますます重要になろう。

米国経済の先行き不透明感から、為替市場ではドル売り圧力が根強い。1ドル=83円台に上昇した円相場が、一段と急騰する展開も警戒しなければならない。

米当局は輸出増で景気を下支えする狙いから、輸出産業の競争力にプラスに働くドル安傾向を容認する姿勢もうかがえる。

日本政府と日銀は、過度な円高の阻止へ、為替介入を含めた機動的な対応を取る必要がある。

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