名護市議選 より困難になった辺野古移設

朝日新聞 2010年09月14日

名護市議選 重い民意が加わった

またひとつ、重い民意が示された。

米海兵隊普天間飛行場の移設先として日米が合意した沖縄県名護市。12日投開票された市議選で、受け入れに反対する稲嶺進市長を支持する勢力が大幅に議席を伸ばし、過半数を得た。

最も身近な地域の代表を決める選挙である。移設への賛否だけで、有権者が判断したわけではあるまい。

しかし、明確に移設反対を主張し続ける市長が、議会で安定した基盤を確保した。菅直人首相は選挙結果を重く受け止めるべきだ。

昨年夏の総選挙の際、沖縄県の4小選挙区すべてで、名護市辺野古への移設に反対する候補者が当選した。

今年1月の名護市長選では、移設容認の現職を破り、初めて反対派の稲嶺市長が誕生した。

基地受け入れの見返りとしての公共事業や地域振興策より、普天間の国外・県外移設を求める――。政権交代を機に火がついた沖縄の民意は、もはや後戻りすることはなさそうだ。

辺野古での滑走路建設には、県知事の公有水面埋め立て免許が必要だ。地元の市長と市議会が反対で足並みをそろえた以上、11月の知事選で誰が当選しようと、免許を出すのは簡単ではない。客観的に見て、日米合意の実現はさらに厳しくなった。

普天間の危険除去のためにも、日本の抑止力維持のためにも、どうしても辺野古移設が必要だというなら、菅政権はそのことを正面から沖縄に問いかけ、少しでも理解を広げる努力をしなければいけない。

現状では、そうした汗をかいているようには見えない。ただ知事選の結果待ちというのでは、無責任にすぎる。

民主党代表選では、小沢一郎前幹事長が、沖縄県、米国政府との再協議を提起した。日米合意の実現が難しいという現状認識はその通りだが、具体的なアイデアは示されていない。代表選の行方にかかわらず、政府与党あげて知恵を絞り、取り組む必要がある。

政府と沖縄県の公式の対話の場である沖縄政策協議会が先週ようやく再開された。政府にとっては沖縄との信頼関係を築き直す重要な舞台だ。

ただ、沖縄振興を決して普天間移設と結びつけてはいけない。沖縄振興の基本は、太平洋戦争で本土の盾として地上戦を戦ったうえ、戦後も長く米軍に支配されたことで、今も残る本土との格差を埋めることだろう。

2011年度末に期限が切れる沖縄振興特別措置法に代わる新法も協議の対象となる。基地の負担軽減はもちろんだが、基地に依存しない自立した経済をどうつくるか、沖縄の将来ビジョンをともに描いてほしい。

信頼回復は言葉だけではできない。ひとつひとつ共同作業を積み重ねるしかない。

毎日新聞 2010年09月16日

普天間問題 首相は本気で取り組め

菅直人首相の続投が決まり、米軍普天間飛行場を日米合意に基づいて沖縄県名護市辺野古に移設する政府方針が維持されることになった。しかし、普天間問題はこの間、さらに混迷の度を深めている。菅首相はどう解決の道筋を描くのか。これまで以上に関心を持って真剣に取り組まなければ、政権の足をすくう問題に発展しかねない。

民主党代表選のさなか、普天間問題で二つの出来事があった。一つは12日の名護市議選だ。選挙前、辺野古移設反対派と容認派が拮抗(きっこう)していた勢力図は、移設反対の市長派圧勝で一変した。市長と市議会が「反対」でスクラムを組むことになり、辺野古移設は一層、難しくなった。

菅政権は、11月末の沖縄県知事選に望みを託している。知事は代替施設建設に必要な公有水面埋め立ての免許権を持つ。かつて辺野古移設を容認していた仲井真弘多知事が再選されれば辺野古移設の展望が開けるのでは、という期待である。

だが、そうだろうか。誰が知事になろうと、移設先の民意を無視してゴーサインを出すことはできない。名護市長と市議会の足並みがそろったことで、日米合意の履行そのものが画餅(がべい)に帰す可能性が高まった。知事選で仲井真知事を推す陣営には、県内移設反対の県民世論を考慮し、「県内移設は困難」という今の表現から踏み込んで反対を打ち出すべきだという意見も出ている。県内移設反対を掲げる伊波洋一宜野湾市長が当選した場合はもちろん、仲井真知事が「反対」を明言することになっても、政府の思惑は頓挫する。

普天間をめぐるもう一つの新たな事態は、米軍の垂直離着陸機MV22オスプレイの配備問題である。岡田克也外相は9日の国会答弁で、代替施設に同機が配備される可能性を初めて認め、米側も配備計画を日本に伝達していることを明言した。

しかし、沖縄には危険性と騒音増大を理由に配備反対の声が強い。仲井真知事も「勘弁してくれという感じだ。県民が『分かりました』と言える種類のものではない」と述べた。オスプレイ配備が普天間問題に影を落とす可能性は高い。

私たちは、問題解決に向けて、普天間問題をテーマにした沖縄との協議開始と、普天間の離着陸回数を減らすなど現実に周辺住民の危険性を減じることを含めた負担軽減策を、移設に先行して実施するよう求めてきた。

菅首相は今月下旬の国連総会出席時と、11月中旬のアジア太平洋経済協力会議(APEC)の際にオバマ米大統領との会談を予定している。日米合意の履行を繰り返すだけでは現実的な見通しを付けたとは言えない。首相の「本気」が問われる。

読売新聞 2010年09月14日

名護市議選 より困難になった辺野古移設

米軍普天間飛行場の沖縄県名護市辺野古への移設が一層困難になったのは間違いない。だが、他に現実的な移設先がない以上、政府は現行計画の実現に粘り強く努めるべきだ。

定数27の名護市議選で、辺野古移設に反対する稲嶺進市長派の候補が16議席を獲得し、過半数を占めた。移設を容認する島袋吉和前市長派は11議席にとどまった。

改選前は、市長派と前市長派が各12議席で拮抗(きっこう)し、中立が3議席だった。政府内には、移設容認派が多数を占めれば、膠着(こうちゃく)状態を打開する端緒になるとの期待もあったが、画餅(がべい)に終わった。

昨年末の時点では、米国は辺野古移設の微修正を容認しており、沖縄県も名護市も賛成する案がまとめられる環境にあった。

ところが、鳩山前首相が決断を先送りした。その結果、1月の市長選における反対派の稲嶺市長の当選、そして今回の市議選と、状況はどんどん悪化している。

地元には、米国との交渉を先行させる政府に対する不満も強いという。民主党政権の判断ミスと無為無策が今の窮状を招いた、と言わざるを得ない。

米軍基地など日本全体の安全保障にかかわる問題は本来、地元の民意に委ねず、政府の責任で判断すべきだ。一方で、その問題を円満に解決するには地元の理解と協力が欠かせない。民主党政権は、その努力を尽くしてきたのか。

民主党代表選で、菅首相は日米が合意した辺野古移設を尊重する立場だが、小沢一郎前幹事長は在沖縄海兵隊無用論を展開した。これは事実上、普天間飛行場の国外移設論を意味する。

政権の基本方針がぐらついているようでは、外務・防衛官僚も本気で動かない。この点も含めて、民主党の責任は重大だ。

今回の市議選によって、普天間飛行場の辺野古移設が不可能になったわけではない。

移設を容認する勢力が一定程度いることが改めて確認されたとも言える。市長選も接戦だった。

米軍キャンプ・シュワブに隣接し、代替施設による騒音や安全面の被害を最も受ける辺野古地区の自治組織が、移設を容認している事実も軽視すべきではない。白紙で他の移設先を探すより、辺野古移設の方が実現可能性は高い。

政府は、もう一度、沖縄県や名護市との信頼関係の修復に地道に努力すべきだ。先週、5年ぶりに再開した沖縄政策協議会などを活用し、地元とのパイプ作りに積極的に取り組む必要がある。

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