自民党新体制 政権奪回へ受け皿作りを

読売新聞 2010年09月10日

自民党新三役 政策論で責任政党の存在感を

世代交代と清新さを印象づける狙いだろう。

しかし、自民党が政権を奪還するには、人事だけでは不十分だ。新執行部は、派閥均衡など党の古い体質を改善し、野党として迫力ある政策論戦を展開することが求められる。

自民党の谷垣総裁が、新しい党執行部人事を決定した。

大島理森幹事長の後任に石原伸晃・元国土交通相、総務会長に小池百合子・元防衛相を起用した。石破茂政調会長は留任させた。新三役はいずれも50歳代で、女性の起用は初めてだ。

石原氏は臨時総務会で、「政権を奪還することが、国民生活、国家の隆盛に役立つ」などと決意を表明した。

中堅・若手議員は、派閥やベテラン議員に配慮した党運営や、旧態依然の国会戦術に対する不満から、大島氏の交代を念頭に、執行部の刷新を要求していた。

谷垣総裁は、先の参院選での勝利に貢献したとして大島氏を副総裁に昇格させると同時に、若手らの刷新要求にも応えた形だ。

しかし、知名度の高い石原氏らを党三役に据えることで、国民の信頼を回復できると考えているとすれば、認識が甘過ぎる。

今年4月には、与謝野馨・元財務相や舛添要一・前厚生労働相が「政権奪還の気迫に欠ける」と批判して、相次ぎ離党した。

自民党は参院選で勝利したが、民主党の敵失に乗じたものに過ぎず、いまだ政権復帰への手がかりをつかんだとは言えない。

今後、本格的に党勢を回復するには、民主党に政策論争を積極的に挑み、「政権担当能力では自民党が勝る」との評価を勝ち得ることが欠かせない。

石原氏は、1998年の金融国会で当時の野党・民主党と金融再生法案の修正協議を進め、「政策新人類」として頭角を現した。安全保障に通じた石破政調会長とともに、政策論戦の先頭に立ってもらいたい。

自民党は通常国会で、鳩山前首相と小沢一郎・民主党前幹事長の「政治とカネ」の問題を追及しきれず、単独で審議拒否戦術を行って批判を浴びるなど、拙劣な国会戦術が目立った。

参院選で与党が過半数を失った結果、衆参両院の多数派が異なる「ねじれ」国会となった。

自民党は、野党時代の民主党のような、政局至上主義に基づく乱暴な国会戦術を取ることは許されない。責任政党としての自覚をもって対応してほしい。

産経新聞 2010年09月10日

自民党新体制 政権奪回へ受け皿作りを

自民党の谷垣禎一総裁が党三役人事を行い、新幹事長に石原伸晃元国交相を起用した。総務会長には、初の女性三役として小池百合子元防衛相をあてた。

石原氏は副総裁になる大島理森氏よりも11歳若い53歳だ。新執行部に50代が並んだ。派閥の大小にとらわれず世代交代を印象づける人事と評価したい。

先の参院議員会長選では、主要派閥が推す候補に対抗して立候補した中曽根弘文氏が「派閥談合」を批判し、劣勢をはね返して当選した。自民党の「古い」体質を正そうという努力を国民は注視している。

新体制の課題は、暴走する民主党政権にブレーキをかけ、政権復帰への道筋をつけることにある。自民党は参院選で改選第一党となり、与党を過半数割れさせたが、8月の臨時国会では千葉景子法相らへの問責決議案も提出できないままに終わった。

民主党政治への厳しい批判が参院選で示され、衆参がねじれになったことを自民党は生かせなかった。今回の人事が民主党政権を衆院解散に追い込む態勢作りにつながるかどうかが問われている。

同時に、自民党は政権交代の受け皿となることを示さなければならない。昨夏の総選挙で自民党は民主党とばらまき政策を競い合った。米軍普天間飛行場問題でも、自民党は県外移設を容認した。

これでは、自民党も国の劣化や日米同盟の空洞化に手を貸しているといわざるを得ない。国家の平和と繁栄を守るための骨太の政策を打ち出さなければ、自民党の存在価値はない。

谷垣総裁の責任は極めて重い。現在の日本の惨状をもたらしているのが民主党政権である以上、一日も早く国民の信を問う環境を整備することが必要である。谷垣氏の決断と受け皿作りの構想力が試されている。

金融・経済分野を得意とする政策通と目されてきた石原氏は、党務の責任者として指導力を発揮すべきだ。また、留任した石破茂政調会長は、菅直人首相の安全保障の認識を厳しくただすなど、国会審議やテレビ出演で民主党政権の問題点を突いてきた。

自民党は今後、消費税増税にどう取り組むかなど、国民の利益を守る政策を率先して打ち出すことに加え、健全な保守勢力を再結集する責務がある。

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