世代交代と清新さを印象づける狙いだろう。
しかし、自民党が政権を奪還するには、人事だけでは不十分だ。新執行部は、派閥均衡など党の古い体質を改善し、野党として迫力ある政策論戦を展開することが求められる。
自民党の谷垣総裁が、新しい党執行部人事を決定した。
大島理森幹事長の後任に石原伸晃・元国土交通相、総務会長に小池百合子・元防衛相を起用した。石破茂政調会長は留任させた。新三役はいずれも50歳代で、女性の起用は初めてだ。
石原氏は臨時総務会で、「政権を奪還することが、国民生活、国家の隆盛に役立つ」などと決意を表明した。
中堅・若手議員は、派閥やベテラン議員に配慮した党運営や、旧態依然の国会戦術に対する不満から、大島氏の交代を念頭に、執行部の刷新を要求していた。
谷垣総裁は、先の参院選での勝利に貢献したとして大島氏を副総裁に昇格させると同時に、若手らの刷新要求にも応えた形だ。
しかし、知名度の高い石原氏らを党三役に据えることで、国民の信頼を回復できると考えているとすれば、認識が甘過ぎる。
今年4月には、与謝野馨・元財務相や舛添要一・前厚生労働相が「政権奪還の気迫に欠ける」と批判して、相次ぎ離党した。
自民党は参院選で勝利したが、民主党の敵失に乗じたものに過ぎず、いまだ政権復帰への手がかりをつかんだとは言えない。
今後、本格的に党勢を回復するには、民主党に政策論争を積極的に挑み、「政権担当能力では自民党が勝る」との評価を勝ち得ることが欠かせない。
石原氏は、1998年の金融国会で当時の野党・民主党と金融再生法案の修正協議を進め、「政策新人類」として頭角を現した。安全保障に通じた石破政調会長とともに、政策論戦の先頭に立ってもらいたい。
自民党は通常国会で、鳩山前首相と小沢一郎・民主党前幹事長の「政治とカネ」の問題を追及しきれず、単独で審議拒否戦術を行って批判を浴びるなど、拙劣な国会戦術が目立った。
参院選で与党が過半数を失った結果、衆参両院の多数派が異なる「ねじれ」国会となった。
自民党は、野党時代の民主党のような、政局至上主義に基づく乱暴な国会戦術を取ることは許されない。責任政党としての自覚をもって対応してほしい。
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