日本経済の成長を取り戻すため、民間の知恵を大いに活用すべきだ。
政府の「新成長戦略実現会議」が9日、初会合を開き議論を始めた。
菅首相はさっそく、国際的に高い法人税の実効税率の引き下げや、雇用確保に役立つ減税措置の検討などを指示した。
実現会議は、菅首相を議長に主な経済閣僚、日銀総裁、有識者、経済団体のトップがメンバーとなっており、6月に決めた新成長戦略を具体化する司令塔となる。
せっかく多彩な人材が集結するのに、成長戦略だけをテーマとするのではもったいない。
自公政権時代に政策決定を主導した経済財政諮問会議などを参考に、当面の円高対策から、中長期をにらんだ財政・社会保障改革まで、財政・金融政策を幅広く議論する会議とする必要があろう。
政府の成長戦略は、早期にデフレを克服し、今後10年の平均成長率を名目で3%、実質では2%にする高い目標を掲げている。環境や健康など成長分野や、アジア向け投資などにテコ入れし、120兆円を超す新規需要と、500万人の雇用を創出するという。
これを達成するハードルはかなり高い。実現会議は、府省ごとにバラバラの政策を調整し、具体策を指示する役回りだ。
有効な政策の障害となる官僚の権限争いや縦割り行政を排除してほしい。国家戦略室との役割分担も整理しておく必要があろう。
重要なのは、府省や業界ごとに対立する主張を整理し、どう意見集約していくかだ。
首相が指示した法人税率の引き下げでも、積極的な経済産業省と、税収減を懸念する財務省との温度差は大きい。早期実現に向け、政治の指導力が問われよう。
今後、実現会議は経済界の主張を政策に反映していく場として、重要な存在になりそうだ。
鳩山内閣時代は、政治と経済界が疎遠になり、景気の足を引っ張るような政策が次々に打ち出された。いまだその後遺症が残る。
製造業への派遣労働禁止や温室効果ガスの大幅削減など、異論の多い政策は、専門家の意見も聞きつつ、経済界の声に耳を傾けて見直さねばなるまい。
市場では急速に円高・株安が進んでいる。鳩山内閣が経済財政諮問会議を廃止してしまったことで、首相と日銀総裁が同席する会議は途絶えていた。
実現会議の発足で、政府・日銀の政策協調が、より円滑になるよう期待したい。
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