大相撲中継再開 今は「改革の鬼」になる時

毎日新聞 2010年09月10日

大相撲秋場所 角界再出発の第一歩だ

12日から大相撲秋場所が始まる。7月の名古屋場所は野球賭博事件と維持員席問題の直撃を受け、開催はしたものの、恒例だったNHKテレビの生中継はなく、天皇賜杯の授与も見送られるなど異例ずくめだった。秋場所はテレビ中継が再開され、スポンサーの懸賞も復活。東京・両国国技館はいつものにぎわいを取り戻しそうだ。

相撲ファンが関心を寄せたのはテレビ中継が再開されるかどうかだった。名古屋場所でNHKが実施した幕内取組終了後のダイジェスト放送は、コンパクトに勝敗を伝えるだけで物足りなさを覚えたファンは少なくないだろう。大相撲中継の魅力を改めて思い知らされた。

日本相撲協会は8月に就任した放駒新理事長のもと、外部役員を委員長とする暴力団等排除対策委員会を設置し、賭博常習者や暴力団との交際を禁じる罰則付きの規定を新たに作った。NHKはそれらの改革を評価し、中継の再開を決めた。

維持員席の問題では、NHKの中継映像が暴力団関係者に悪用されたようだ。NHKが協会の暴力団対策を重視したのは当然だろう。

だが、テレビ中継の復活で、嵐は通り過ぎたと協会が胸をなで下ろし、警戒を解くのはまだ早い。暴力団排除は規約を作り、宣言したからといって解決するほど簡単な話ではない。今後も協会側のきめ細かく、息長い対応が欠かせない。

暴力団絡みの問題だけではない。時津風部屋の若い力士の死亡事件や外国人力士を中心にした大麻汚染、引退した横綱・朝青龍関の度重なる「品格」問題などここ数年、不祥事・騒動が相次いだ。共通しているのは、現在の力士養成システムは機能しているのだろうかという問題だ。野球賭博では、若い力士を指導すべき親方にまで汚染が広がった。日本が誇るべき伝統文化としての大相撲が危機にひんしている。

「協会のことは力士出身者で決める」という伝統がもはや通用しないのはこれまでも指摘してきた。協会は今こそ守るべき伝統を堅持しつつも、社会の変化に敏感に対応できる骨太で筋肉質な組織に生まれ変わらなければならない。

放駒理事長は就任後、公益財団法人への移行を目指す方針を改めて表明した。それは今以上に外部役員への門戸開放など協会の体質改善につとめるという宣言でもある。改革には相撲ファンの後押しも欠かせない。

横綱・白鵬関が現在の47連勝をどこまで伸ばすか。秋場所への関心は高い。お年寄りから子どもまで安心して楽しめる国民娯楽として大相撲が再出発できるか。秋場所を改革の第一歩にしなければならない。

読売新聞 2010年09月07日

大相撲改革 秋場所で再出発の意欲を示せ

日本相撲協会は、放駒新理事長の下、改革への道を歩み始めた。その姿勢を評価して、名古屋場所の中継を取りやめたNHKは、秋場所で生中継を再開することを決めた。

だが、野球賭博問題で失墜した信頼を取り戻すことができるのかどうか、相撲協会が改革の真価を問われるのは、これからだ。

野球賭博、さらに、土俵近くの特別席に暴力団員が座っていた問題は、角界と暴力団のつながりを改めて印象付けた。

これを受け、角界の再生を担って就任した放駒理事長は先に、改革の第一歩として、「暴力団等排除宣言」を行った。ファンの角界を見る目が一層厳しくなったことを考えれば、当然の対応だ。

暴力団など反社会的勢力とは一切、交際せず、金品や便宜の供与も受けない。違反者は、解雇を含め、厳しく処分する――。

こうした内容の宣言は、選手が暴力団と交際することを禁じる規定を野球協約に盛り込むなどしたプロ野球界の取り組みを参考にしたという。

大相撲では、地方巡業などの興行面で暴力団が深くかかわってきたとされる。

親方や力士に便宜を与えて親密な関係となり、それを自らの力の誇示に利用する暴力団員もいるだろう。与えられるものは拒まない角界の「ごっつぁん」体質に、つけ込んできたともいえる。

暴力団と関係が深いとされる知人から宿舎を借りていた松ヶ根親方(元大関若嶋津)は、2階級の降格処分となる見通しだ。

暴力団との絶縁なしに、大相撲の信頼回復はあり得ない。角界に身を置く全員が暴力団排除の意識を徹底しなければならない。

放駒理事長を補佐する新設の副理事長には、名古屋場所で理事長代行を務めた村山弘義・元東京高検検事長が就いた。

これまでの度重なる不祥事で自浄能力を発揮できなかった相撲協会は、外部の意見に耳を傾け、機構改革など中長期的課題にも取り組んでもらいたい。

12日には東京・両国の国技館で秋場所が初日を迎える。NHKの中継再開を喜んでいるファンは多いことだろう。そうした期待を裏切らないために、存亡の危機にある相撲協会は、変革のスピードを決して緩めてはならない。

土俵の充実が求められるのは、言うまでもない。連勝記録の更新がかかる横綱白鵬をはじめ、力士たちは、大相撲の再出発にふさわしい熱戦を繰り広げてほしい。

産経新聞 2010年09月04日

大相撲中継再開 今は「改革の鬼」になる時

大相撲秋場所が12日に開幕する。日本相撲協会は「暴力団等排除宣言」を行い、これを受けてNHKは生中継の再開を決めた。仕切りの間のないダイジェスト放送は味気なく、生中継再開は多くの相撲ファンにとり喜ばしい。ただし、改革の本丸はこれからである。

NHKの福地茂雄会長は「排除宣言」を「改革の道筋を示した」と評価したが、相撲協会の副理事長に就任した村山弘義氏は「宣言しただけでいいという問題ではない」とも語っている。「宣言」は守られなくては意味はなく、そのための具体策や体質改善を伴わなくてはならない。

排除宣言は暴力団などを本場所や部屋後援会、祝勝会に入れないことや、飲食やゴルフなどの交際禁止を挙げ、違反者に対して解雇を含む厳正な措置を取るとしている。1日には協会が設置した暴力団等排除対策委員会が警察庁などからオブザーバーを招いて第1回会議を行った。

秋場所の新番付では、野球賭博関与による謹慎で名古屋場所が全休扱いになった幕内6人、十両4人がそれぞれ十両、幕下に陥落した。厳しい対処を印象づける一方で、まだまだ甘さものぞく。

横綱、白鵬を会長とする力士会は協会に対し、野球賭博に関与したとして解雇された元大関、琴光喜の引退相撲の国技館での開催を要望した。これを聞いた放駒理事長は「私の一存では決められない」と答えたという。自らの置かれた立場をあまりに理解していない、といわざるを得ない。理事長もなぜ、自らの一存で「無理だ」と答えられなかったのか。

引退相撲は、後援者の祝儀を集めて第二の人生への資金調達の意味合いも持つ。そうした「ごっつぁん体質」が暴力団につけ込まれる契機となった反省こそ求められているはずだ。改革の本丸は、資金調達の多くをタニマチに求めてきた部屋制度と年寄名跡(親方株)の問題となるだろう。親方衆からは伝統を盾とする強い反発が予想されるが、伝統を守るための改革もある。

反社会的勢力との関係の遮断は、相撲界のみならず社会全体に突きつけられている課題だ。相撲界には、社会の範となるチャンスが与えられているといってもいい。いまは先人の気迫を受け継ぎ、協会を挙げて「改革の鬼」になるべき時だ。

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