高校授業料の無償化を巡り、文部科学省の専門家会議が、朝鮮学校を対象にするかどうかを判断するにあたっての基準案をまとめた。
この中で専門家会議は朝鮮学校を無償化の対象に加える場合には、学校側に支給される資金が生徒のために使われていると確認できることが必要だとの見解を示している。
朝鮮学校のうち、日本の高校にあたる「朝鮮高級学校」は、全国に10校あり、約1800人が学んでいる。
他の外国人学校と異なり、本国政府を通じて「日本の高校と同等の課程がある」という確認がとれないため、文科省は専門家会議を設け、検討を要請していた。
無償化の対象に決まると、授業料分として、少なくとも計約2億円の「就学支援金」が学校側に支給される。これを考えれば、財務内容の透明化は欠かせない。
朝鮮学校は、国際社会に背を向ける北朝鮮の指導下にある在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)と強い結びつきがある。
無償化の資金が万が一にも北朝鮮に不正送金されるような事態はあってはなるまい。
川端文科相はこれまで、専門家会議の報告を受けて8月中に結論を出すと明言してきたが、今後、民主党内の意見を聞いてまず判断基準を定め、その上で決定する、と方針を転換した。結論を先送りした格好だ。
政府内では、拉致問題を担当する中井国家公安委員長らが、北朝鮮に経済制裁を科している観点から、無償化に反対している。
これに対し、川端文科相は、国会などで「外交問題は判断材料にしない」との見解を示し、合意が得られていない。政府・与党として、さらに慎重な議論が必要と判断したものと見られる。
一方、専門家会議の報告書は「具体的な教育内容は判断基準にしない」としている。
ただ、朝鮮学校で使われる教材に、大韓航空機爆破事件は韓国のでっちあげであるといった、明らかに客観的事実と異なる記述があるとされるのは問題だ。
こうした内容をまったく問わないとするならば、無償化に国民の理解は得られないだろう。
文科省では、判断基準が正式決定されれば、各朝鮮学校がこれに適合するかどうかの審査を行うことになる。その際には書面審査だけではなく、学校に出向いて直接説明を受けるなど、厳格に審査する必要がある。
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