日韓併合100年 「ご用聞き」外交の罪深さ

読売新聞 2010年08月29日

日韓併合100年 協調と競争の未来へ向けて

異民族に支配された朝鮮半島の人々には、国を奪われ、誇りを踏みにじられた無念の思いがあるだろう。それが日本への強烈な対抗心や反発をうむ源泉となっている。

その気持ちを理解せずして、日本の善隣外交は成り立つまい。

日韓併合条約が発効したのは、今から100年前の1910年8月29日である。当時は帝国主義の時代であり、日本もその流れに乗って朝鮮半島を植民地にした。

敗戦まで35年間の植民地統治が今日の日韓関係に影を落としているのは、否定しえない事実だ。

菅首相が日韓併合100年の談話で、「痛切な反省と心からのおわびの気持ち」を表明したのも日韓関係を重視してのことだ。韓国とは、協調し競争しあう関係を築いていかなければならない。

1965年の日韓国交正常化の際、日韓併合条約を「もはや無効である」としたことによって、両国は新たな関係に入った。

韓国は、日本からの資金を使ってダムや製鉄所、高速道路を建設し、輸出に力を注いだ。いまや経済先進国に変貌(へんぼう)し、政治の民主化も果たした。社会も多様化し、豊かになった韓国は援助される国から援助する国になっている。

日韓両国は、それぞれが米国との同盟を安全保障の軸に、互いを主要な貿易相手国とする、また市場経済や民主主義などの価値観を共有する関係にある。

11月には、韓国が世界20か国・地域(G20)首脳会議を、日本がアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議を主宰する。

世界の安定と繁栄のために、日韓が担う役割と責任は大きくなっている。この機を逃さず、日韓協力を強化すべきだ。

経済・軍事大国となった中国とどう向き合い、安定した関係を作っていくかということも日韓共通の重い課題である。地域の不安定要因である北朝鮮には適切に対処していかなければならない。

過去にとらわれない「未来志向の日韓関係」を構築していく必然性は高まっている。

だが、難題もある。日韓は隣り合うだけに歴史的なかかわりは深く、感情ももつれがちだ。日本国民の韓国への親近感は年々強まっているが、韓国にはまだ日本への根強い不信感がある。

事実、竹島問題などの2国間の懸案は、解決しないまま衝突が繰り返されてきた。

その難しさを克服していくことが、新たな100年に向けての日韓両国の宿題だろう。

産経新聞 2010年08月29日

日韓併合100年 「ご用聞き」外交の罪深さ

日韓併合条約の発効から100年の節目の日を迎えた。韓国に過度に配慮した菅直人首相談話の効果もあって、現地の反日ムードは下火になっているというが、一時的にすぎない。謝罪すればするほど日韓関係は悪化してきた。国が違えば歴史認識は異なるという基本に立ち戻るしかない。

菅談話の検討を仙谷由人官房長官が明らかにしたのは、先月16日だ。その後、複数の民主党有力議員が訪韓し、青瓦台(大統領府)幹部らに「どのような首相談話を希望されるか」と尋ねる一方、韓国側もさまざまなルートで要望を提示してきた。

主な要望は、(1)併合は韓国人の「意に反して行われた」との言及がほしい(2)文化財返還も談話に入れてほしい−の2点だったとされる。菅内閣はこれを受け入れ、鳩山由紀夫前首相らの意見も盛り込んだという。

しかも、その中身を国民に知らせないばかりか、与党・民主党の政策調査会でも十分な議論を尽くさず、閣議決定を強行した。

韓国におもねった一方的首相談話が、日本政府の公式見解として後の内閣の行動を事実上、拘束するのだ。「ご用聞き」外交の罪深さを改めて思い知らされる。

菅談話にわずかながら認めるべき点があるとすれば、「条約は日本の不当な圧力によるもので、締結当初から無効だった」とする韓国側の主張までは受け入れなかったことだ。韓国紙は一斉にこのことへの不満を伝えた。

だが、韓国の主張は2001年の国際学術会議で欧米の国際法学者らに否定されている。岡田克也外相も25日、東京都内の講演で「日本政府としては、当時は合法に締結されたという考え方を持っている」と述べた。今後も、これを明確に主張すべきだ。

菅談話でも不満だとする韓国の国会議員らのグループは、慰安婦問題などでの追加補償を要求している。だが、日韓間の補償・請求権問題は、昭和40年の日韓基本条約で決着し、菅首相も談話発表後の会見でこの考えを示した。決着済みの補償問題を蒸し返すことは厳に慎むべきだ。

民主党内でも保守系議員らが最近、新たな勉強会を立ち上げた。菅談話の問題点に加え、手続き面の欠陥を指摘する声が相次いだという。与野党で、歴史認識の論議が深まることを期待したい。

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