鳩山政権の課題 予算の改造・編成 大胆にスピーディーに

毎日新聞 2009年09月18日

鳩山政権の課題 予算の改造・編成 大胆にスピーディーに

新政権の経済運営で最初の大きな仕事は、15兆円近くに及ぶ今年度補正予算の大幅な組み替えと、これに続く来年度の予算編成だ。自民党政権下で築かれた既得権と既成概念を切り崩し、世の中の変化をふまえた予算の実現を期待したい。

民主党は衆院選で、子ども手当など初年度だけで総額7・1兆円の新政策を約束した。この財源を生み出すため、予算を徹底的に洗い直す考えだ。5月に成立した今年度補正の中でムダな支出を中止し税金を回収する組み替え作業は、新政権の実行力が試される。

まず、自殺予防や介護施設整備などの対策を実施するための46基金、総額4・3兆円だ。当初は名称未定の基金もあり、規模水増しのための苦肉の対策が目立った。何よりも「基金」に支出された税金は官庁や天下り団体が数年間手元に置き、「取り崩し」という外部の監視が届かない手続きによって、勝手に使える問題があった。執行済みか、未執行かで仕分けせず、意味のある対策か、効果はあるのか、という本質的な視点で見直すべきだ。さらに補正には道路などの公共事業費も盛り込まれたが、数兆円規模の予算が手つかずとみられている。民主党は、ムダな公共事業の見直しを公約にしてきただけに、大胆に切り込んでほしい。

こうした激変のあおりを被るのは、官庁や補正予算をあてにしていた地方自治体という見方がある。実際、都道府県知事らから「相当な混乱が出る」との声を聞く。だが、広く長期に市民生活が混乱するならばともかく、役所内の調整や外郭団体、議会との関係などを念頭に面倒だと思ったり手間を惜しんでいるのなら問題だ。政権交代という潮流の変化を現実問題として受け止め、そもそも必要な予算だったのかを含め柔軟に対応すべきだ。景気の下支え効果が損なわれる心配も出ているが、今年度補正の景気刺激効果はもともと疑わしかった。経済対策が必要で、なおかつ有効な対策があれば、改めて予算化すればいい。

むしろ、地方自治体や景気への影響という観点で注文したいのは、一連の作業を迅速に進めることだ。7月に決まった来年度予算の概算要求基準も根本から見直し、「国家戦略局」が政治主導で予算の大枠を決めていくという。補正の組み替えに手間取り、新たな仕組みを動かすのに時間を費やし、来年度予算の編成が年内に間に合わないのでは話にならない。何をやるにも後手後手だった自民党政権の時代と同じだ。世界の動き、時代の流れに後れをとらないスピード感が欠かせない。

読売新聞 2009年09月19日

来年度予算 「トロイカ」で編成はどう進む

急ごしらえの「トロイカ体制」で、予算編成はうまくいくのか――。

菅国家戦略相、藤井財務相、仙谷行政刷新相による、予算作りの新たな仕組みのことだ。

予算の大枠を示す国家戦略局の暫定組織である国家戦略室と、無駄の排除を担当する行政刷新会議の設置が18日に閣議決定された。鳩山首相と3相らによる閣僚委員会の協議も始まった。

政治主導を掲げる鳩山内閣の来年度予算の編成作業が、事実上スタートしたが、3相がどのように予算編成にかかわるか、役割分担がはっきりしないのが実態だ。

藤井財務相が、財務省主導の編成を主張したことで、3相間の主導権争いを懸念する声もある。

政権交代で、予算編成のスケジュールは例年より大幅に遅れている。微妙な景気動向を見れば、組織作りなどに時間をかけている余裕はないはずだ。予算の年内編成に向け、鳩山内閣はスピードを意識して臨まねばならない。

予算編成の最初の関門が、2009年度補正予算(約13・9兆円)の抜本見直しである。

子ども手当など、公約した新政策を賄う財源を確保するため、補正予算に計上された事業の一部を停止し、来年度予算に資金を回すのが狙いだ。藤井財務相は約3兆円を捻出(ねんしゅつ)する考えとされる。

18日には、自治体向けを除く基金事業の執行停止などを決め、ほかにも広く洗い出す方針だ。

確かに不要不急の事業にメスを入れる必要はある。だが、補正予算が景気を下支えしているのも事実だ。景気を腰折れさせないよう見直しは慎重に進めるべきだ。

それ以上に重要なのが、来年度予算の新しい編成方針を早急に示すことである。

菅戦略相は、今年7月に決定した概算要求基準(シーリング)を廃止し、新たな指針を10月上旬にまとめる方針だ。この指針をもとに各省庁は、予算要求を作り直すことになる。そうなれば、再提出は10月下旬近くになろう。

本来なら、予算査定がヤマ場となる時期だ。日程がこのままなら、年内編成は極めて厳しい状況に陥る。国家戦略室は財務省の知恵も借り、指針提示の繰り上げなどを検討すべきではないか。

行政刷新会議が無駄減らしでどんな成果をあげるかは不透明だ。スタッフの選定はこれからである。予算査定を任されてきた財務省主計局とどう()み分けるか、という問題も残る。こうした点を早く詰める必要があろう。

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