今年の警察白書は「犯罪のグローバル化」に焦点をあて、外国人犯罪について「治安への重大な脅威になっている」と警鐘を鳴らしている。
白書も指摘するように、経済の国際化を背景に、政府は就労や観光目的の外国人の受け入れを積極的に進めつつある。
こうした流れの中で治安の悪化をどう防ぐかは、ますます重要な課題と言えるだろう。
白書が「世界的規模で活動する犯罪組織の浸透」の例として取り上げた「ピンクパンサー」は、欧州や中東で宝石店を専門に襲う旧ユーゴスラビア出身者を中心とした強盗団だ。
そのメンバーで、モンテネグロ国籍の男が13日、警視庁に逮捕された。2007年6月、東京・銀座の宝石店に仲間と押し入り、2億円相当のティアラ(王冠型髪飾り)などを奪った容疑である。
潜伏する住居の提供など犯行を助ける外国人の支援者が都内にいたため日本まで足を延ばすことができた、と警察はみている。
男はスペイン当局に拘束されていたが、警察庁が外交ルートを通じて身柄の引き渡しを要請していた。国境を越えて悪事を働く組織を追い込むには、各国の治安当局間の連携が不可欠だ。
貴金属などを狙う組織には、油圧ジャッキを使って外壁を壊す中国系の「爆窃団」もある。百貨店などの被害が相次いでおり、こうした犯罪には関係業界で対抗策を講じる必要もあるだろう。
白書は外国人犯罪の「深刻度が増している」というが、むしろ逆の見方も多いのではないか。
外国人犯罪の検挙件数は最悪だった2005年の4万7865件から4年連続で減少し、昨年は2万7836件だった。この間、検挙人員も2万1178人から1万3257人にまで減った。
大変な脅威となっていた、家人をロープや粘着テープで縛り上げて屋内を荒らす中国人の緊縛強盗団や、韓国人の武装スリ団の動きも、いまは沈静化している。
もちろん、警戒を緩めることは禁物だ。統計数字の改善も、不法就労の罰則強化、入国審査時の指紋採取、不法滞在の摘発強化といった様々な法整備や対策が相まって効果を発揮したからだろう。
今後も状況に応じ、法整備や取り締まり体制の見直しを迅速に進めていくべきだ。これこそ政府の役割である。国際犯罪組織につけいる余地を与えないよう、名実ともに、犯罪のやりにくい国としていかなければならない。
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