GDP伸び鈍化 経営者も草食系では

朝日新聞 2010年08月17日

デフレ悪化 二番底回避へ工夫を

世界同時不況から順調な回復を示してきた景気の先行きに、疑問符を投げかける数字が出た。

内閣府がきのう発表した4~6月期の国内総生産(GDP)統計によると、実質成長率は前期比0.1%だった。年率換算では0.4%で、直前の2四半期が年率約4%だったのに比べ、急な減速ぶりである。

さらに懸念すべきは、生活実感に近い名目GDPが前期比0.9%減、年率は3.7%減で、デフレの悪化が明らかになったことだ。

アジア新興国向けなどの輸出は好調だが、問題は内需だ。設備投資は足取りがおぼつかないうえ、個人消費の伸びが止まってしまった。とくに薄型テレビや自動車など耐久消費財の販売が振るわなかった。

エコポイント対象商品が4月から絞り込まれたことが一因となった。政府による需要喚起策は息切れのサインが点滅し始めたといえよう。

内閣府は、景気が回復基調にあるとの判断を変えていない。しかし、エコカー補助金は9月末、家電エコポイントは年内いっぱいが期限だ。比較的豊かな人々の消費を刺激して一定の効果を上げたとはいえ、自動車や高級家電の需要を先食いするこれらの施策にはもともと限界があった。

また、今後は米国の景気の先行きに対する懸念に加えて、円高の影響も無視できない。需要と雇用の創出による「第3の道」路線を掲げる菅政権は、既存の景気対策とは別の発想に立つ個人消費喚起策などをきちんと考えるべき段階を迎えつつある。

大事なのは「雇用を増やすことが所得を増やし、消費を増やす」といった好循環が生まれるような施策を急ぎ工夫することだろう。

菅直人首相が参院選で言及した医療・介護分野の雇用創出に限らず、もっと幅広く考えてほしい。たとえば企業の新規採用の意欲は冷え込んでいる。そこをテコ入れできないだろうか。

企業が新興国向け輸出で稼いだ資金を国内投資などで生かせるよう、政策的に誘導する道も検討してみてはどうだろう。

新成長戦略の焦点とされた環境・エネルギー、観光などの分野については来年度予算を待たずに規制改革などの取り組みを強めるべきである。

4~6月期は企業の四半期決算で業績の回復ぶりが著しかった。企業の景況判断を聞き取り調査した7月発表の日銀短観でも、製造業を中心に景気回復の足取りはしっかりしている、という認識が確かめられていた。

今回の発表で予想外のデフレ悪化が示され、不透明感が強まったことは否めない。政府・日銀は景気が二番底に陥らないよう、足元の動向や先行きのシナリオを総点検する必要がある。

毎日新聞 2010年08月17日

GDP伸び鈍化 経営者も草食系では

経済成長率の伸びが4~6月期に鈍化した。内閣府が発表した国内総生産(GDP)の速報値によると、物価変動の影響を除いた実質GDPの対前期伸び率は、3四半期連続のプラスとなったが、1~3月期に比べ、市場の予想以上に縮小した。

四半期の数値はブレやすいうえ、今回は家電のエコポイント対象商品の絞り込みを見越した3月の駆け込み購入の反動が影響している。短期的な変動に動揺して追加の景気対策に走るのは賢明ではない。

問題は目先の数値より、根源的なところにありそうだ。多くの企業が極端にリスクを敬遠し、守りの経営を続けていることである。経営者の草食系化と呼んでもよさそうだ。成長への貪欲(どんよく)さ、“アニマル・スピリッツ”で中国や韓国の企業に負けていないだろうか。

エコ需要刺激策など政府による景気の後押しは、一定の役目を果たしたら打ち切るのが筋だ。回復のけん引役は民間にバトンタッチされなければいけない。そこで期待されるのが企業の設備投資である。設備投資が盛んになれば機械や工場の建設資材などへの注文が増え、雇用にも貢献する。雇用や賃金が改善しない限り、持続的な消費の回復は難しい。

ところが、改善の連鎖の原動力となるべき設備投資がなかなか勢いづかない。確かに、世界経済の先行きが不透明になってきたことや、円高など不安な要素が経営者を慎重にさせている面はあろう。とはいえ、不確実な時こそ、率先してリスクをとり新しい需要を掘り起こした者が大きな報いの切符を手にする。守り一辺倒では事態を好転させられまい。

投資に回す資金が足りないわけではない。日銀の統計によると、企業の手元資金は3月末で202兆円と過去最大に膨らんだ。米欧でも似た現象が見られるが、借金返済のための資金確保や金融不安への備えが必要な米欧企業に対し、多くの日本企業の財務体質はすでに改善済みで、差し迫った金融不安もない。

新たな投資や人材に振り向けられる余裕資金を大量に抱えながら、それを成長のために活用しないでいる。円高にも海外企業を買収しやすくする利点があるが、悲鳴が聞こえるばかりで、攻めの追い風にしようという積極性は見えてこない。

そんな中、4~6月期のGDPがドル換算で中国に抜かれた。「世界2位」のタイトルを渡すのは時間の問題だっただけに、驚きはない。むしろ、人口が日本の約10倍もある国が隣で安定成長を遂げることは、日本にとってメリットといえよう。

そのメリットを実現するうえでも、企業にはリスクに挑む経営と創意が必要だ。頑張りどころである。

読売新聞 2010年08月17日

GDP急減速 景気腰折れへ警戒を強めよ

外需と政策効果を支えに回復してきた景気が急減速した。成長を腰折れさせぬよう、警戒を怠ってはならない。

4~6月期の実質国内総生産(GDP)は、前期比0・1%増と、3四半期連続でプラスだった。だが、成長率は年換算で0・4%と、極めて低い。

内需はマイナスに転じ、輸出などの外需で、やっとプラス成長を維持した。円高や、海外経済の減速懸念で、外需の先行きも不透明である。政府・日銀は景気最優先で政策運営すべきだ。

内需低迷の主因は、これまで堅調だった個人消費が、4~6月期はほぼ横ばいまで減速したことにある。省エネ家電のエコポイントやエコカー補助金もさすがに効果が薄れてきたようだ。

とはいえ、数少ない下支え役である。政府は9月末でエコカー補助金を打ち切るという。自動車の販売店や部品工場などは、「10月からは受注の大幅減が避けられない」などと、販売や生産の落ち込みを心配している。

夏の猛暑でエアコンなどは売れている。だが、“猛暑特需”の後に厳しい反動減がこないか、恐れる家電量販店も少なくない。

政府は、給付の始まった子ども手当などが、いずれ景気を刺激するというが、定額給付金など過去のばらまき政策の例から見て、大きな効果は期待できまい。

今年度予算の予備費を使って、エコカー補助金の一部を継続するなど、景気の減速を避ける手を打つべきだ。

公共事業削減の影響も鮮明だ。4~6月期の公共投資は、前期比3・4%減と大きく落ち込んだ。有力な地場産業のない地方などでは、特に打撃となろう。

予備費とは別に、将来の景気対策に備えた、1兆円の予算枠もある。うまく活用できないか。

一方、外需はプラスを維持したが、伸びが鈍った。足もとでは円高の影響が大きい。円高が1円進めば、トヨタ自動車で年300億円、ホンダも170億円の利益が減るという。回復してきた設備投資にも、水をさしかねない。

今回の円高は、アメリカの追加金融緩和がきっかけだ。その影響を和らげるには、日銀も金融緩和の姿勢を強める必要があろう。

円高は輸入物価を下げて、デフレにも拍車をかける。急激な進行は避けねばならない。

円相場が80円に向けて急騰するようなら、政府は円高阻止に向けて、為替介入も辞さない強い姿勢を見せるべきだ。

産経新聞 2010年08月19日

追加経済対策 「アリバイ作り」では困る

政府・日銀が追加経済対策の検討を始めた。4~6月期の国内総生産(GDP)が予想以上の減速を見せたのに加え、輸出の足を引っ張る円高が急ピッチで進んでいることが背景にある。

経済の現状に対する危機感が乏しいと指摘されてきた菅直人政権も、ここにきてようやく重い腰を上げた格好だ。回復軌道をたどってきた景気の底割れ防止には万全な対応が求められている。来月の民主党代表選に気を取られ、追加対策の策定や実施に影響が出ることは許されない。

政府は、20日にも関係閣僚会議を開くと決めたほか、来週には菅首相が白川方明(まさあき)日銀総裁と会談する予定だ。菅政権には「アリバイ作り」ではなく、実効性ある追加対策を早期に実施する姿勢が問われている。

一連の協議では、現在の景気情勢や円高について意見を交わし、追加対策の骨格づくりを進める見通しだ。大学・高校の既卒未就職者向けの雇用対策や年内で終了する家電エコポイント制の再延長などが検討課題にあがっている。

ただ、財政事情が厳しい中で、バラマキにつながる新規国債の増発は避けねばならない。6月にまとめた財政運営戦略では、国と地方の基礎的財政収支の赤字について、平成27年度までに半減させると決めたばかりだ。今年度予算に計上した経済危機対応・地域活性化予備費の未使用分(約9千億円)などを活用し、高い投資効果が見込める事業に絞るべきだ。

15年ぶりに1ドル=84円台を記録した円高への対応は日本経済にとって喫緊の課題だ。米金利が低下し、日米間の金利差縮小が最近の円高の一つの要因であり、追加対策の取りまとめに先んじて菅・白川会談では一段の金融緩和も検討する必要が出てこよう。

さらなる円高には、日本単独で円売りの市場介入に踏み切ることも選択肢に含めるべきだ。米欧諸国は輸出促進につながる自国の通貨安を容認する姿勢を示している。効果は限定的だとしても、日本として、これ以上の円高は断固阻止するというメッセージを発信することが重要だ。

政府は10日の月例経済報告で、景気の基調判断を「持ち直しつつある」と据え置いたが、認識が甘かったと言わざるを得ない。菅政権は危機意識を持って経済運営に当たらねばならない。

産経新聞 2010年08月17日

GDP急減速 「バラマキ」の限界みせた

今年4~6月期の国内総生産(GDP)成長率が実質年率換算で0・4%増と急減速した。それなのに政府・日銀には危機感がみられない。回復傾向をみせてきた日本経済の変調と受け止め、菅直人政権は「景気の下振れ」を防ぐ実効ある対策を講じる必要がある。

一昨年秋のリーマン・ショックを受けた日本経済は昨年1~3月期を底に回復してきた。輸出の伸びに加え、GDPの6割を占める個人消費は自民党政権で導入した家電エコポイント制やエコカー補助金などの政策支援が下支えしてきたといえる。

荒井聡経済財政担当相は「景気は着実な持ち直しが続いている」と強調し、追加経済対策を早急に検討する必要はないとの見方を示した。しかし、政府内にも「景気は踊り場を迎えた」との慎重論がある。経財相の見通しは甘いと言わざるを得ない。

4~6月期の個人消費はほぼゼロ%成長に低下した。薄型テレビ販売の伸びが頭打ちとなるなど、政策効果に息切れがみられる。企業が採用を控える中で完全失業率は3月以降、再び5%台に悪化した。これも消費意欲の低迷に拍車をかけたとみるべきだ。

民主党が目玉政策としてきた子ども手当は、6月から中学生以下の子供1人あたり月額1万3千円の支給が始まったが、景気浮揚効果はみられなかった。バラマキ政策の限界を示したといえる。

また、8月に入ってからは15年ぶりに1ドル=84円台を記録するなど円高が進んでいる。輸出企業の採算を悪化させる円高が今後も続けば、日本経済を牽引(けんいん)してきた輸出への悪影響も避けられない。個人消費に続いて輸出も停滞すれば、経済が再びマイナス成長に転落する恐れすらある。

昨年の政権交代で産業界と与党との距離が遠くなったと指摘される。菅政権はようやく日本経団連との政策対話を再開したものの、政府は温室効果ガスの削減目標など産業界が反対する政策を進め、企業の生産拠点の海外移転が加速しかねない。

産業界との対話を通じて、雇用創出につながる投資を誘発する政策誘導も求められている。

政府・日銀は円高の阻止とデフレ脱却に向けて一層緊密な連携を図り、状況に応じて一段の金融緩和など機動的な政策をとらなければならない。

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