理事長の交代を大相撲再生の契機としなければならない。
日本相撲協会の武蔵川理事長(元横綱三重ノ海)が辞任し、その後任の第11代理事長に放駒親方(元大関魁傑)が選出された。
野球賭博問題で角界への信頼が失墜する中、新理事長には相撲協会の抜本改革を断行する強いリーダーシップが求められる。
武蔵川理事長は2年前、大麻問題の責任をとって退任した北の湖理事長(当時)の後を継いだ。改革に意欲をみせたものの、角界を立て直すには至らなかった。
名古屋場所では、自らの部屋の力士が野球賭博にかかわっていたため謹慎処分を受け、場所運営で指導力を発揮できなかった。
体調不良を辞任の理由に挙げているが、事実上の引責辞任といえるだろう。
新理事長について、相撲協会を監督する文部科学省は、力士出身者ではなく、外部の人材が望ましいとの意向を示していた。
度重なる不祥事で、閉鎖体質に染まった親方たちが自浄能力を発揮できなかった実態を踏まえての判断だったのだろう。
だが、理事会は“身内”の理事長を選んだ。協会トップの理事長は、角界の内情を知る力士出身者にしか務まらないという理事会の意思の表れといえる。
放駒新理事長は現役時代、真摯な土俵態度で人気があった。親方としては、横綱大乃国らを育て、実直な人柄でも知られる。相撲協会は、そのクリーンなイメージに再生の舵取りを託したわけだ。
放駒新理事長は、「引き受けた以上は最大の努力を払いたい」と語った。山積する課題に対処するために、外部役員の増員を検討する考えも示した。
「角界の常識は世間の非常識」と言われる内向きの論理を排除し、外部の意見を積極的に取り入れ、開かれた相撲協会へと変えていってもらいたい。
最優先で取り組まねばならないのは、野球賭博問題などで浮き彫りになった暴力団との関係を断ち切ることだ。暴力団排除対策を速やかに実施し、徹底することが、信頼回復の第一歩となる。
相撲協会の組織改革など、中長期的な課題も避けて通れまい。
秋場所の初日は9月12日だ。新理事長が先頭に立ち、あと1か月足らずの間に、ファンが納得する改革の道筋を示す必要がある。
そうでなければ、NHKの中継中止などで揺れた名古屋場所の騒動を繰り返すことになる。
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