中曽根議員会長 参院自民党を変える契機に

読売新聞 2010年08月12日

中曽根議員会長 参院自民党を変える契機に

衆参ねじれ国会の下、参院自民党が、重みを増した野党としての役割をきちんと果たすための一歩とすべきだ。

自民党参院議員会長選で、中曽根弘文・前外相が谷川秀善参院幹事長を破り、初当選した。党所属参院議員82人による投票の結果、得票は同数で、くじ引きで勝敗を決した。

当初は、町村派所属の谷川氏が優勢と見られていた。前参院議員会長の尾辻秀久副議長らの調整で党参院議員の約3分の2を占める町村、額賀、古賀の主要3派閥の支持を取り付けていたからだ。

中曽根氏は、こうした派閥主導の人選に反発する中堅・若手や無派閥の議員に推されて出馬した。伊吹派を離脱し、「密室的派閥談合でリーダーを決めてはならない」などと訴えて支持を広げた。

参院議員会長選が、初めて複数候補による投票に持ち込まれたうえ、予想外の結果となったことは、自民党の派閥の機能が大きく低下したことを物語る。

先の参院選を前に、参院自民党を仕切ってきた青木幹雄・元議員会長が引退し、「古い調整型政治」が(しゅう)(えん)を迎えたとも言える。

青木氏とパイプが太かった民主党の輿石東参院議員会長が無投票で再選されたのとは好対照だ。

中曽根氏は今後、参院自民党をどう立て直すかが問われる。

先の参院選で自民党が改選第1党となったのは、民主党の失政に負う部分が大きい。自民党に対する国民の信頼が本格的に回復したとは言い難い。

参院で他の野党と共闘すれば、政府提出の全法案を否決できる。だが、野党時代の小沢民主党のような「政局至上主義」に走るようでは、政治の停滞を招くだけだ。

民主党のバラマキ政策にノーを突きつけるのは当然としても、建設的な対案を示し、国民本位の国会対応をしてこそ、「新たな自民党」の姿を示せるだろう。

「政局の府」と呼ばれて久しい参院の改革にも、積極的に取り組んでもらいたい。

参院自民党はかつて、「参院の独自性」という名目で、メンツを守ることに固執した。法案の審議内容よりも審議時間の確保を優先させる形式主義がその典型だ。

予算審議で優越権を持つ衆院に対し、参院は、決算審査機能を一層充実させ、参院先議の法案を増やしてはどうか。1票の格差を是正するための選挙制度の見直しも待ったなしだ。

これらに取り組んでこそ、参院の存在意義が認められよう。

産経新聞 2010年08月13日

中曽根議員会長 党再生へ清新さをみせよ

参院自民党の議員会長選で、劣勢とみられた中曽根弘文元外相が、町村、額賀、古賀3派の推す谷川秀善参院幹事長を破って当選した。くじ引きによる異例の決着も注目を集めた。

中曽根氏にはこれまでの自民党の派閥談合政治の悪弊を断ち切ることを期待したい。大きな転機とすべきである。

具体的には、参院側人事で中堅・若手を含めて有為で清新な人材を起用し、党再生への姿勢を鮮明に打ち出す必要がある。派閥間のバランスを考慮するようなら、当選した意味を失う。

選挙戦では谷川氏の背後に長老たちの影がちらついていた。谷川氏の就任を前提に、幹事長や国対委員長などの主要ポストを派閥間で分け合う算段も行われていたという。はなはだしい時代錯誤であり、これに反発した中堅・若手らが中曽根氏を押し立てたのは当然の成り行きだった。

自民党は7月の参院選で改選第一党となり、民主党を過半数割れに追い込んだ。だが、臨時国会では野党をまとめて参院議長を選出することができず、閣僚への問責決議案も出せずに終わった。

民主党政権の暴走にストップをかけさせようと、民意が与えた衆参の「ねじれ」を生かし切れていない。これでは自民党への期待はしぼむだけだろう。

中曽根氏が当選後の記者会見で述べた「自民党は議席を増やしたが、依然として環境は厳しい」との認識はその通りである。根本には、政権復帰を目指す自民党が、具体的にどういう政権を作ろうとしているのか、この国をどうしようとしているのかをきちんと示していない問題がある。

民主党政権の問題点が明らかになる中で、それに代わる選択肢を自民党が提示できなければ、支持を拡大することは困難だ。

自民党の派閥談合体質や長老支配は国民の信を失い、政権与党の座から滑り落ちる大きな要因となった。与党の中で権力やポストを守ることに汲々(きゅうきゅう)とする姿から、国民の利益は二の次との印象を持たれたのだろう。

党の体質改善は昨年の総裁選の争点にもなったが、谷垣禎一総裁が敷いた布陣は党の再生を強く打ち出すものとは言い難かった。参院人事と併せて執行部人事を見直し、政権復帰への決意と国益を守る姿勢を鮮明にすべきだ。

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