衆参ねじれ国会の下、参院自民党が、重みを増した野党としての役割をきちんと果たすための一歩とすべきだ。
自民党参院議員会長選で、中曽根弘文・前外相が谷川秀善参院幹事長を破り、初当選した。党所属参院議員82人による投票の結果、得票は同数で、くじ引きで勝敗を決した。
当初は、町村派所属の谷川氏が優勢と見られていた。前参院議員会長の尾辻秀久副議長らの調整で党参院議員の約3分の2を占める町村、額賀、古賀の主要3派閥の支持を取り付けていたからだ。
中曽根氏は、こうした派閥主導の人選に反発する中堅・若手や無派閥の議員に推されて出馬した。伊吹派を離脱し、「密室的派閥談合でリーダーを決めてはならない」などと訴えて支持を広げた。
参院議員会長選が、初めて複数候補による投票に持ち込まれたうえ、予想外の結果となったことは、自民党の派閥の機能が大きく低下したことを物語る。
先の参院選を前に、参院自民党を仕切ってきた青木幹雄・元議員会長が引退し、「古い調整型政治」が終焉を迎えたとも言える。
青木氏とパイプが太かった民主党の輿石東参院議員会長が無投票で再選されたのとは好対照だ。
中曽根氏は今後、参院自民党をどう立て直すかが問われる。
先の参院選で自民党が改選第1党となったのは、民主党の失政に負う部分が大きい。自民党に対する国民の信頼が本格的に回復したとは言い難い。
参院で他の野党と共闘すれば、政府提出の全法案を否決できる。だが、野党時代の小沢民主党のような「政局至上主義」に走るようでは、政治の停滞を招くだけだ。
民主党のバラマキ政策にノーを突きつけるのは当然としても、建設的な対案を示し、国民本位の国会対応をしてこそ、「新たな自民党」の姿を示せるだろう。
「政局の府」と呼ばれて久しい参院の改革にも、積極的に取り組んでもらいたい。
参院自民党はかつて、「参院の独自性」という名目で、メンツを守ることに固執した。法案の審議内容よりも審議時間の確保を優先させる形式主義がその典型だ。
予算審議で優越権を持つ衆院に対し、参院は、決算審査機能を一層充実させ、参院先議の法案を増やしてはどうか。1票の格差を是正するための選挙制度の見直しも待ったなしだ。
これらに取り組んでこそ、参院の存在意義が認められよう。
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