朝日新聞 2009年09月20日
次期総裁選び 新自民党の立脚点は何か
総選挙でかつてない大敗北を喫した自民党の、次期総裁選びが始まった。
2大政党が政権を争う緊張感のある政治を実現するには、野党が踏ん張らねばならない。政権から滑り落ちた自民党をどう作り直すか。これが次期総裁に課される最大の任務である。
名乗りを上げたのは谷垣禎一(64)、河野太郎(46)、西村康稔(46)の3氏だ。石破茂前農水相や石原伸晃元党政調会長ら昨年の総裁選で麻生氏と争った4氏が出馬しなかったのは、さびしい限りだ。
それでも、きのう日本記者クラブで開かれた候補者討論会では、河野氏を中心にこれまでの総裁選では聞かれなかった大胆な発言が相次ぎ、論戦が盛り上がった。
閣僚や党の要職を経験し、ベテラン議員らの支持が多い谷垣氏は「衆院議員が100人ちょっとしかいないのだから、全員野球でやるしかない」と、党の結束重視を訴える。
中堅や若手に支持される河野氏は「反対だ。自民党のあしき体質を引きずっている人はベンチに入れるべきではない」と語り、森喜朗氏らの名前を挙げて重鎮の退場を迫った。
また、河野氏は同年代の西村氏に、もし決選投票となったら、自分と2、3位連合を組んで谷垣氏に挑もうと公然と呼びかけた。
歯にきぬ着せぬ発言で異端児扱いされる河野氏だが、総裁選初挑戦で論争を活性化させていることは間違いない。今回、国会議員票を上回る票を持つ地方の党員が、こうした論争をどう受け止めるのかも見どころだ。
今と似た状況での総裁選びは、93年7月にもあった。小沢一郎氏、鳩山由紀夫氏らが党を飛び出した後の総選挙で過半数割れし、非自民勢力が連立政権づくりを進めていたころの話だ。
総選挙敗北の直後、両院議員総会では激しい発言が相次いだ。
「総裁選では、総裁経験者、派閥の領袖(りょうしゅう)は辞退していただきたい」「企業・団体献金の禁止ぐらい考えなければ、国民の信頼は得られない」
自民党のあり方を抜本的に変革しなければ有権者から見放される、との危機感が満ちていた。ところが、1年もたたずに自社さ連立で政権に復帰すると危機感は薄れ、結局は今回の大敗北へとつながる。そしてまた、再生策の論議である。
十年一日の取り組みで乗り切れるほど、今回の敗北は軽いものではない。政権党でなくなった自民党の存在理由は何なのか。そこを徹底的に議論しなければ、いくら派閥解消や世代交代、政策の転換を言ったところで、再生はおぼつかない。
2大政党の一翼として自民党は生まれ変われるのかどうか。活発で思い切った論戦を期待する。
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毎日新聞 2009年09月19日
自民党総裁選 「裏番組」でも重要だ
再生の足がかりを得られるだろうか。衆院選大敗で野党に転落し、がけっぷちに立たされた自民党の総裁選が告示された。西村康稔、河野太郎、谷垣禎一の3氏が名乗りをあげ、三つどもえの戦いがスタートした。
元財務相で64歳の谷垣氏といずれも46歳の西村、河野両氏の対決という、世代間対決の構図が強まった。新総裁選びは党立て直しに向けたラストチャンスにも等しい重要な場だ。大敗を徹底総括し、民主党に立ち向かう対立軸の構築に努めなければならない。
さきの惨敗以来、自民党は首相指名選挙をめぐる議論など、不毛な混乱を国民の前にさらしてきた。解せないのは昨年の総裁選で麻生太郎氏と戦った候補をはじめ、中堅議員がそろって出馬しなかったことだ。
国会議員の推薦人枠(20人)がハードルになった面もあろう。だが、新総裁といっても野党党首であり、来夏の参院選も状況は厳しいとそろばんをはじいたとすれば、気概に欠けると言わざるを得ない。
それでも谷垣氏に加え、閣僚経験のない前外務政務官の西村氏、元副法相の河野氏の3氏が出馬した。谷垣氏はベテランや中堅議員の支持を集めるのに対し、特に河野氏は世代交代を前面に掲げる。党存続の危機に、指導層の刷新をめぐる攻防が起きるのは当然だろう。
28日の投票日に向け、最も問われるのはさきの衆院選惨敗をどう総括し、野党に転落して揺らぐ党の存在意義をどう説明するかである。
まず重要なのは、小泉構造改革の総括だ。出馬した3氏は記者会見でいずれも改革自体には理解を示した。だが、谷垣氏が「小さな政府」見直しに向け消費税論議を指摘したのに対し、河野氏は「小さな政府」路線の明確化や行政のムダ排除に力点を置いた。西村氏も含め、論議を深めてほしい。
派閥など党改革も焦点だ。谷垣氏は「仲間同士で食事をする機能は残る」と説明したが西村氏は「解消する途中」、さらに河野氏は「役割は何もない」と踏み込んだ。谷垣氏の擁立には派閥トップや長老議員の後押しも指摘される。ただでさえ崩壊寸前の派閥主導と決別する覚悟を示すことが必要だろう。
約200票の国会議員票以上に結果を左右するのは、300票を持つ党員投票による地方票だ。党再生の道筋をどこまで説得力を持って語れるかが勝敗を決める。
鳩山新政権が脚光を浴びる中の「裏番組」となった印象は否めないが、その分、落ち着いて掘り下げた議論をすればよい。2大政党政治の定着に向け、野党・自民党の再建は極めて重要である。
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読売新聞 2009年09月19日
自民総裁選告示 政権奪還が目指せる党首を
総選挙惨敗を受けた自民党の出直し総裁選が告示された。
谷垣禎一・元財務相、河野太郎・元法務副大臣、西村康稔・前外務政務官の3氏が立候補した。
28日の投開票日まで、党の抜本改革の具体的な工程表と、改革に伴う“痛み”の大きさを率直に説明し、結党以来の危機を乗り越える指導力を持っていることを示してもらいたい。
麻生前首相の後継に本命視された舛添要一・前厚生労働相や、昨秋の総裁選に出馬した石原伸晃・元国土交通相らは、早々と不出馬を宣言した。
政権への早期復帰のめどが立たず、「首相になれない総裁」で終わる可能性が高いとみて、今回は見送ったとの見方もある。
自民党は今、「次がある」などと楽観できる状況ではない。
1993年の細川政権誕生で野党に転落した時は、約10か月で政権復帰を果たしたが、当時は衆参両院とも第1党の座にあった。今回とは状況がまったく異なる。
新潟など6県は衆院議員が1人もいなくなり、岩手など3県は国会議員がゼロだ。業界団体や地方議員が徐々に民主党になびいて、自民党から離反していく事態も十分予想される。
地方票の割合を増やし、各地で公開討論会を催すのも、国会議員、地方議員、一般党員が一丸となって再建に取り組まなければ、「次」はないとの認識からだろう。
3氏は、派閥が影響力を持つ党運営や人事、現職優先の候補者選考などを見直すとしている。いずれも選挙で敗北するたびに、改革の必要性が指摘されてきた。今度こそ実行しなければなるまい。
それ以上に大事なのは、野党時代が長引くことを覚悟することだ。その上で、地道で粘り強い政治活動を全国で展開できる力を養うことである。
政党交付金は、選挙前の約157億円から約104億円に激減する見込みだ。党職員や秘書の大幅なリストラは避けられない。来年夏の参院選に勝利するには、大胆な候補者差し替えもためらうべきではないだろう。
激しい反発を招き、対応を誤ると分裂する恐れも出てこよう。それでも、党内を説得し、抵抗を突破できる指導者が、今の自民党には必要だ。
地方議員や一般党員の支持を得ようと、派閥解消や世代交代を唱えてお茶を濁すようなら、国民からは「自己変革できない政党」の烙印を押されるだろう。
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産経新聞 2009年09月19日
自民総裁選告示 保守再生のシナリオ示せ
自民党の総裁選が告示され、西村康稔前外務政務官、河野太郎元法務副大臣、谷垣禎一元財務相の3氏が立候補した。衆院選での歴史的大敗から立ち上がる第一歩ととらえ、28日の投開票に向け再生の道を国民に示してほしい。
野党としての総裁選は、河野洋平前衆院議長が選出された平成5年以来、2度目である。次期総裁には、政権奪還に向けた強力な指導力と発信力が求められる。すべての自民党関係者は「再生に失敗すれば、党自体が消えてなくなってしまう」という危機感をもって臨まねばなるまい。
必要なのは、民主党との違いを明確にし、有権者にもう一つの選択肢を示すことだ。産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)の世論調査でも、いぜん国民の半数は自民党の「将来の与党復帰」に期待をかけている。
衆院選では、民主党に追随する形でばらまき的政策を競ったことが大敗につながった。3候補には、保守政党としての原点に立ち戻り、日本をどういう方向に導き、どの政策を優先すべきかを、しっかり訴えてほしい。
自民党には、世代交代も求められている。派閥の領袖やベテラン議員たちがいつまでも影響力を残しているなら、国民から見捨てられるだろう。
その意味で、閣僚経験のない西村、河野両氏が20人の推薦人を集めて出馬したことは、好ましい変化といえる。今回をきっかけに、能力のある若手・中堅議員が存分に活躍できる組織へと生まれ変わることも期待したい。
次期総裁は来年夏に行われる参院選の「顔」となる。そこで民主党に雪辱することが、当面の最大の課題である。これまで通りの候補者選びでいいのか、大胆な差し替えを含めどう対応するかも総裁選で明確にすべきだろう。
安倍晋三元首相以降の最近3人の総裁が、いずれも総裁選では他候補を圧倒する支持を集めたものの、1年ほどの短命政権に終わった反省も忘れてはならない。今回、目先の利害や一時的なムードに流されることがあれば、有権者の信頼は取り戻せまい。
鳩山政権は高い支持率で船出したとはいえ、安全保障や財源問題などに大きな不安を抱えている。野党第一党としてしっかり政権を監視し、「戦う集団」となれる強力な総裁の誕生が必要だ。
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