100歳以上の高齢者が所在不明になっているとの報告が、全国の自治体から相次いでいる。
戸籍上は生きているのに、自治体も家族も本人の「生」を確認できない。これが世界に誇る日本の長寿社会の実態だとすれば、言いようのない寒々しさを覚える。
東京都足立区で、111歳とされていた男性がミイラ化した遺体で見つかった事件を機に、各自治体が調査を始めた。
113歳といわれた都内最高齢女性が、杉並区の住民登録先に住んでおらず、行方不明になっていることがわかった。名古屋市では、106歳の男性の住民登録先が駐車場になっており、家族に聞いても所在はわからなかった。
同様に所在不明であることが判明した100歳以上の高齢者は、読売新聞の調べで、4日までに50人近くにのぼっている。
いくつかのケースに共通するのは、今回の調査以前に、自治体職員や民生委員が高齢者本人に直接、接触していないことだ。
100歳以上の高齢者は、全国に約4万人いる。この10年間で一気に3・5倍に増えた。
高齢者の所在や安否を確認する方法は自治体によって異なるが、多くの場合、個別の面会などはせず、介護保険や医療保険の使用状況などから判断している。
人手や予算の制約もあろうが、長期間、医療施設の利用がないような場合、実際に高齢者と面会して安否確認することが必要だ。
ただ、居住地などで面会を求めても、家族から「会いたくないと言っている」「他県の施設に入った」などと言われると、それ以上の調査は難しくなるという。
強く面会を求めたり、追跡調査したりすることで、プライバシー侵害を指摘されるのが怖いのだろうが、個人情報保護法を意識した過剰反応ではないか。
年金や祝い金など公金支出が絡む場合、出来る限りの調査をすることは自治体職員の責務だ。必要なら法律や制度の改正も検討すべきだろう。
気がかりなのは、超高齢化社会の裏側にある地縁血縁の弱体化だ。核家族化とともに、親も子も高齢になって互いに会わない、連絡もしない。そんな事例が今回の調査でも明らかになっている。
近所付き合いの中で高齢者の安否を確認し合う地域の機能も、すっかり衰えてしまったのか。
家族や地域が「長寿」を温かく見守る社会を取り戻すために、知恵を出し合いたい。
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