民主党議員総会 首相の「旗印」が見えぬ

朝日新聞 2010年07月30日

民主選挙総括 「甘い約束」に戻るのか

「苦い現実」から、もう目をそらすのか。そんな懸念を感じる。

民主党が参院選の敗北を総括する両院議員総会を開き、菅直人首相は自身の消費増税発言について平謝りした。

有権者から「初志を貫徹せよ」との批判を招いたとし、昨年の総選挙の政権公約について「できる限り誠実な実施を追求する」と語った。

総会に諮られた総括文書も同様だ。参院選では総選挙公約の実現に取り組む姿勢を改めて示すことが求められたのに、「約束を放棄したとの誤解すら生ずることとなった」と分析した。

出席した議員らからは「勝手にマニフェストを変えた」といった批判や、菅氏に対する辞任要求が相次いだ。

菅氏ら党執行部側が低姿勢に徹し、鳩山由紀夫前首相、小沢一郎前幹事長時代に掲げた総選挙公約に立ち戻る考えを強調したのは、党内融和を図り、9月の党代表選をなんとか無難に乗り切りたいという狙いに違いない。

選挙に負けたのだからしかたない面もある。それでも菅首相らの「総括」ぶりには賛成できない。

「政権選択」をかけた総選挙の公約が何より原点だという認識は、一般論としてはその通りだが、あの内容をそのまま実現させるのが無理なことは、もはや誰の目にも明らかではないか。

あれもこれも予算をつけます、4年間は消費増税の必要はありません――。民主党は総選挙で「甘い約束」を繰り返した。その修正を試みたのが参院選公約だ。子ども手当の満額支給断念はその象徴である。

約束を果たせないのだから批判を受けるのはしかたない。だが、批判される本当の原因は、財源の裏付けのない公約を掲げたことか、地に足のついた内容に改めようとしたことか。それは前者に違いない。

厳しい現実を見据えているのは、政治家よりむしろ有権者だろう。

選挙前の朝日新聞の世論調査では、子ども手当満額支給断念に72%が賛成した。公約をそのまま実現せよとは、有権者も求めていない。そもそも総選挙の勝因が公約だったと単純には言えない。有権者は当時から子ども手当にも高速道路無料化にも懐疑的だった。

公約をかたくなに見直さない姿勢は時に有害である。有権者に現状の厳しさを説明しながら進む方向をともに考える。大切なのは、その積み重ねだ。

せっかく提起した消費税論議をどう進めるのか。総選挙、参院選二つの公約に盛った政策をどう「仕分け」し、優先順位をつけ直すのか。

さらなる党内論議も必要だろうが、菅首相は国会審議や記者会見を通じ、国民に向けてもっと語るべきである。

苦い現実から逃げない。その揺るぎない決意を改めて示すことが、国民の支持を取り戻すことにつながる。

毎日新聞 2010年07月30日

民主党議員総会 首相の「旗印」が見えぬ

立て直しの厳しさをあらわにした印象である。民主党はさきの参院選敗北を総括する両院議員総会を開いた。菅直人首相は自らの消費増税論議を敗因と認めたうえで謝罪した。これに対し、出席議員からは首相に引責を求める声が続出した。

「ねじれ国会」下での論戦となる臨時国会が30日召集され、9月には代表選という大きな節目を民主党は迎える。首相は続投に向け代表選出馬も表明したが、消費税ばかりを選挙の敗因として強調し、党内融和に腐心する姿勢に疑問を抱かざるを得ない。今後の政権の旗印と目標こそ、早急に国民に提示すべきである。

これではガス抜きというよりも、たまる一方ではないか。質疑では出席議員の多くが首相の責任論を容赦なく提起したが応じたのは枝野幸男幹事長で、首相が正面から受け止め党の結束を自らの言葉で促す気迫は感じられなかった。一方で、質疑で議員から指摘される敗因は消費税をめぐる対応やマニフェストの修正に集中し、なぜ民意が離反したかを考える幅広い議論とはならなかった。

総括案が指摘した通り、首相の提起した消費税論議の唐突さや税制をめぐる構想の生煮え感が敗因のひとつであることは否定できない。だが、党内融和に配慮したためか、鳩山内閣を退陣に追い込んだ米軍普天間飛行場移設問題の迷走や、鳩山由紀夫前首相や小沢一郎前幹事長をめぐる「政治とカネ」の問題にはあまり踏み込まなかった。10カ月にわたる民主党の政権運営の未熟さ、天下り規制問題にみられる改革マインドの後退などを直視しなければ真の総括とは言えまい。

首相の選挙後の発信が乏しく、しかも精彩を欠いている現状も深刻だ。巻き返しどころか、政権の看板である政治主導実現への司令塔とするはずだった国家戦略局構想を唐突にあきらめる愚行を演じた。厳しい財政状況の中で来年度予算編成に着手したにもかかわらず、行革に取り組むメッセージは不足している。

「しばらく静かにしていた方がいい」と言っていたはずの小沢氏にも今は面会を求めている。続投を優先するばかりに、政権が目的を見失い、漂流しつつあるのではないかという疑念を抱いてしまう。

9月の代表選は、民主党が参院選敗北を踏まえ政権運営の再構築を迫られる場面となる。私たちは首相が参院選敗北でただちに引責辞任することには反対したが、代表選はこうした方向性について大いに議論する場としなければならない。

宙に浮いた格好の税制改革にどう取り組み、限られた財源の中、どの政策を優先するのか。首相は速やかに、具体的に説明すべきである。

読売新聞 2010年07月30日

民主参院選総括 代表選に持ち越した最終決着

民主党の菅執行部は、当面のハードルを一応乗り越えた。だが、今後の政権運営は依然厳しいことを自覚し、態勢を立て直す必要があろう。

参院選敗北を総括する民主党両院議員総会が開かれ、菅首相は消費税率引き上げをめぐり、「不用意な発言で皆さんに重い選挙を強いた」と陳謝した。

出席者からは「最高司令官が責任を取るのが当たり前だ」「首相は勝手に政権公約を変えた」などと首相や枝野幹事長の辞任を求める声が相次いだ。だが、最後は、9月の党代表選まで現執行部体制を継続することが了承された。

執行部が作成した参院選の総括文書は、消費税をめぐる首相発言が「国民に唐突感を与えた」ことを第一の敗因に挙げた。

指摘はもっともだが、税率引き上げへの国民の理解は広がっている。民主党は消費税に関する立場を後退させることなく、税制と社会保障に関する党内論議と超党派の協議を急ぐべきだ。

総括文書は、民主党の参院選公約が不明確で、衆院選の政権公約の約束を放棄したとの誤解を生じたことも敗因と分析した。だが、この解釈には疑問が残る。

子ども手当、高速道路の無料化など政権公約のバラマキ政策は、財源不足が明確になり、事実上破綻(はたん)している。多くの国民が問題視しており、政権公約見直しが不十分だったことこそが敗因だ。

民主党が目指すべきは、政権公約の原点に立ち返ることではない。逆に、公約の過ちを率直に認め、現実的な内容になるよう大胆に見直して出直すことだ。

さらに問題なのは、鳩山前首相と小沢一郎前幹事長の「政治とカネ」や米軍普天間飛行場移設の問題の迷走に、総括文書がほとんど言及していないことだ。

これらの問題では、民主党の自浄能力と政権担当能力の欠如が露呈した。これを克服せずに、民主党の再建はあり得まい。

菅内閣の支持率が低迷する中、衆参ねじれの臨時国会がきょう召集される。代表選では、小沢氏支持グループが対立候補の擁立を模索しており、菅政権は、守りの姿勢ばかりが目立っている。

だが、「首相のたらい回しは避けるべきだ」という党内外の“世論”を頼みとして、ひたすら低姿勢を貫くだけでは、政治は停滞し、政権の求心力も回復しない。

景気回復と財政健全化の両立、日米関係の修復など、山積する政策課題に積極的に取り組み、着実に実績を上げることが肝要だ。

産経新聞 2010年07月30日

民主党選挙総括 信失った根本原因が欠落

民主党執行部が参院選大敗を総括する文書をまとめ、両院議員総会で発表した。

菅直人首相の消費税増税をめぐる発言の唐突さや説明不足が有権者の強い反発を受け、大きな敗因になったと位置付けている。

だが、国民の信を失った根本原因の総括がすっかり抜け落ちている。小沢一郎前幹事長や鳩山由紀夫前首相の政治資金問題が、クリーンを掲げる民主党のイメージをどれだけおとしめたかに言及していないのだ。

参院選で有権者の信頼を失ったことへの自覚と反省が不十分なままでは、総括に大きな意味を見いだすことは困難だろう。

総括文書は、菅内閣発足直後に内閣支持率が回復した理由に関連し、政治とカネや米軍普天間飛行場移設問題をめぐる責任について「けじめをつけた」と、鳩山、小沢両氏の辞任を評価するような分析を加えているのは目を疑う。

普天間問題は辺野古移設案を日米合意で確認したが、沖縄側の強い反発から、首相が交代しても実現のメドは立っていない。

政治とカネをめぐり、鳩山、小沢両氏はその後も説明責任を果たしておらず、小沢氏は検察審査会との関係でなお東京地検特捜部の事情聴取を求められる立場だ。

菅首相は両院議員総会で「消費税をめぐる不用意な発言で、大変厳しい選挙を強いることになった」と陳謝し、続投する考えを示した。だが、このような総括案を提示すること自体、臭いものにフタをして開き直る党の体質を引きずったまま政権運営を行うことを意味している。続投する資格があるのか、厳しく問われよう。

両院議員総会で、出席者からは枝野幸男幹事長ら党執行部の引責や首相自身のけじめを求める厳しい意見が相次いだ。大敗を喫しても続投するという具体的な理由を、首相が明確に語らないことへの批判も出たのは当然だ。

党内からの批判は、首相の消費税発言が衆院選マニフェストの信頼性を損なうとの観点からのものが多かった。だが、マニフェストは鳩山前政権から菅政権にかけて、民主党政権がばらまき政策を多用してきた根幹であり、その見直し論が出ないことにも問題がある。政治とカネをめぐり政党としての自浄作用を求める議論が広がらないのも、党の体質が変わらないことを示している。

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