概算要求基準 予算編成を人気取りに使うな

毎日新聞 2010年07月28日

概算要求基準 これが政治主導なのか

来年度予算の概算要求基準がようやく閣議決定された。各省庁の要求額を今年度予算比で1割以上減らすことと、政権カラーを出す目的の「特別枠」設置が主な柱だ。

省庁ごとの縦割り予算ではなく、政権の優先政策を実現するため大胆に配分を変える、というのが本来、民主党の目指す予算だった。しかし、実際はどうだろう。概算要求基準を見る限り、新しいキャッチフレーズが散見されるだけで、本質的には従来の手法と大きく変わっていないようだ。

菅直人政権は、しきりに「政治主導」をアピールしている。官僚依存でないと訴えたいのだろうが、これでは結局、役所主導の縦割り予算になりかねない。どんな政策に予算を優先配分するのか、どの分野を大胆に削るのかといった大きな方針を、国民に選ばれた政治家が示すことこそ政治主導であるはずだ。それが「1割削減」と決めただけで、削り方に関する政権の明確な指針はなく、各省庁に丸投げしている。

さらに問題があるのが特別枠だ。これも省庁ごとの要求がベースになる。「元気な日本復活特別枠」が名称で「1兆円を相当程度超える規模」にするという。趣旨が抽象的なのでほとんど何でも要求できそうだ。「1割削減」で削った予算の復活特別枠と化す恐れがある。

特別枠の中身は「政策コンテスト」なるものを公開で行い、国民の意見も反映させながら決めるそうだ。事業仕分け方式である。確かに、有識者や国民の声を聴き、公開の場で取捨選択することに意義のある場合もあるが、予算編成はどうだろう。

選挙で最大の支持を得、予算を作る仕事を託されたのが政権与党だ。公約の理念に従い、自らの責任で選択し、政府の予算案を仕上げるのが筋である。各役所から上がってきた要求に○×をつける前に、特別枠で何をしたいのか具体的に示すべきだろう。通常枠の要求削減が「1割」を超えた省庁は、特別枠分が余計もらえるという理屈も理解できない。

「これまで密室で決められてきた予算を国民の前にさらす」と言われれば立派な感じもするが、政策コンテストの対象は予算全体のほんの一部に過ぎない。そもそも国民の前で説明し議論する場ならすでにある。他ならぬ国会だ。何でもかんでも体育館で議論しインターネットで中継するのが政治主導だとはき違えてもらっては困る。

小手先の政治主導演出に腐心するのではなく、政権として何を実現したいのか、そのためには、今のような歳出削減だけで十分なのか、といった本質的な議論を早く始めてもらいたい。

読売新聞 2010年07月28日

概算要求基準 予算編成を人気取りに使うな

2011年度予算の大枠を示す概算要求基準が閣議決定された。

昨年は、鳩山内閣によって基準が廃止され、10年度予算の規模が大きく膨らむ原因となった。

それを反省して今回、基準を復活させたのは妥当である。だが、農家の戸別所得補償や高速道路の一部無料化など、昨年の民主党の政権公約(マニフェスト)に基づく予算が削減の例外になるなど、バラマキ体質は残ったままだ。

医療・介護や環境など、成長分野に予算を重点配分するための特別枠を設けるが、公開の席で優劣を競う「政策コンテスト」で配分先を決めるという。

政治的なパフォーマンスが目立った「事業仕分け」に似た手法といえる。菅内閣の支持率低下を挽回(ばんかい)する狙いもあるのだろうが、そうした場で冷静な議論ができるとは思えない。予算編成を人気取りの手段にしてはなるまい。

年末の11年度予算案決定に向け菅首相は今後、マニフェスト予算の改廃や財源の確保に、真摯(しんし)に取り組むべきである。

要求基準の骨格は、6月にまとまった財政運営戦略に準拠した。国債費を除く歳出と国債新規発行額は、10年度予算とそれぞれ同じ71兆円と44兆円以下にする。

これを前提にまず、社会保障費について、1・3兆円の自然増をそのまま認めることにした。少子高齢化で膨らむ分はやむを得ないが、子ども手当については抜本的に見直す必要がある。

焦点は特別枠の扱いである。民主党側は当初、2兆円を提案したが、政府側との調整で、「1兆円を相当上回る額」とのあいまいな表現で決着した。

特別枠に社会保障費の自然増を加えると、3兆円前後の原資が必要になる計算だ。その分は、教育費や防衛費、公共事業費など一般的な歳出を各府省が一律に1割削減して捻出(ねんしゅつ)する、としている。

だが、ただでさえ各府省が1割削減に抵抗しているうえ、マニフェスト関連が例外では、目標の達成は容易ではあるまい。

10年度予算では、埋蔵金を含む税外収入を10兆円余り計上した。だが、埋蔵金は枯渇しつつある。税外収入が大幅に減る場合、国債の発行額は44兆円以下どころか、増える可能性もある。

それでは、財政健全化の国際公約に逆行する。赤字減らしには歳入の確保が肝要だ。消費税率の引き上げを含む税制改革に早急に取り組む必要があることを、11年度予算の編成作業は教えている。

この記事へのコメントはありません。

この社説へのコメントをどうぞ。
お名前
URL
コメント

この記事へのトラックバックはありません。

トラックバックはこちら
http://shasetsu.ps.land.to/trackback.cgi/event/429/