欧州金融審査 踏み込みが足りない

朝日新聞 2010年07月27日

欧州銀行検査 難題だが、金融も財政も

欧州の金融システムを取り巻く疑心暗鬼をぬぐうため実施された銀行の特別検査の結果が出た。対象となった91銀行の9割以上が合格し、自己資本が足りずに「不合格」とされたのは7行だけだった。

銀行経営について情報を開示した点は評価できる。だが、検査手法などに甘さが指摘され、今回の結果が金融不安の沈静化につながるかどうかは楽観できない。

欧州の銀行の安全性は、各行が保有する欧州諸国の国債に対する市場の評価に左右される。詰まるところは、各国の財政の持続性にかかるという構図が鮮明になったといえる。

金融と財政を一体的に、しかも実体経済を損なわずに再生する。複雑な連立方程式を解くような、厳しい課題が浮かび上がってきた。

検査は統一基準こそ欧州連合(EU)の銀行監督委員会が作ったが、実施は各国の監督当局に委ねられた。結果発表前から「我が国の銀行は大丈夫」といった政府筋の発言が相次ぎ、「お手盛り」の疑いが出ていた。南欧などのバブル崩壊地域では不動産価格の下落リスクなどが小さく見積もられた、との疑念も尽きない。

銀行が保有する欧州各国の国債の扱いも甘かった。ギリシャなど債務不履行が心配される国々の国債についても、償還まで保有すれば損失の危険はないと見なされた。

EUはギリシャなどを支援するため、国際通貨基金(IMF)と組んだ資金供給枠を用意するなど、加盟国の債務不履行を絶対に阻止する立場だ。このため、貸し倒れの危険はないとの建前を検査でも崩さなかった。

一方、EU当局は各銀行が伏せてきた保有国債の内訳を開示させ、市場関係者の要望にある程度は応えた。

銀行の特別検査は米国で昨春に行われた際には成功したとも言われるが、政府と銀行の信用不安が絡み合う欧州では限界がある。

欧州の信用不安は、株安などを通じて世界の景気回復の足を引っ張りかねない。米連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長は、米国経済の先行きを「異例なほど不確実」と語った。中国も、欧州への輸出が減れば景気にマイナスだ。むろん日本にとってもひとごとではない。

世界経済の失速を避けるために、EU当局の断固たる対応が求められている。検査結果を基に、再編や資本注入を通じた銀行の不良債権処理を加速させ、不透明と言われる情報開示をもっと徹底させるべきだ。

さらにギリシャ、スペインなど危機の震源や温床となっている国々で財政健全化や経済の構造改革が着実に進む姿を世界に示し、国債と共通通貨ユーロの信用を守り抜かねばならない。

毎日新聞 2010年07月27日

欧州金融審査 踏み込みが足りない

いったい何のためのテストだったのかと問わずにはいられない。欧州の金融監督当局が欧州連合(EU)内の金融機関91行を対象に実施した健全性審査のことである。「ストレステスト」と呼ばれ、金融機関が、想定される最悪の経営環境にも耐えられるか一斉に調べたものだ。

体力のある銀行、足りない銀行を明らかにし、足りない銀行の資本増強につなげることで、金融業界全体に対する市場の不安を払しょくするのが目的である。結果は「不合格」が7行のみで、資本不足も合計35億ユーロと市場の予測をはるかに下回った。胸をなで下ろしてよさそうなものだが、テストそのものが「甘過ぎ」との批判を受けており、不安一掃は難しそうだ。

金融危機を受け昨年春に米国で実施されたストレステストが手本になっている。米国と違うのは、金融不安の背景だ。欧州の場合、ギリシャに代表されるような国家の財政危機が域内の国債を大量に保有する金融機関の経営不安につながった。今後、財政危機がいっそう深刻化した場合、各金融機関がどの程度、持ちこたえられるかという点に市場の関心が集中した。

ところが、テストはその関心に正面から応えなかった。当局は、米国以上に厳しい環境悪化を想定したと胸を張っている。なのに、ギリシャやスペインが債務不履行に陥るシナリオは除外した。銀行が満期保有を前提に購入している国債が債務不履行によって被る損失を、計算に入れなかったのだ。これが、市場関係者の失望を買った。

債務不履行を想定すれば、EUが打ち出した7500億ユーロの域内財政支援策がうまく機能しないことを自ら予想したと受け取られかねない。ストレステストを実施した当局は、それを嫌ったのかもしれない。

しかし、当局者の発言と違い、市場参加者の多くは南欧諸国の債務不履行を現実味のある可能性として懸念している。核心を避けたテストは信頼されず、そうしたテストに合格しても、金融機関の信用が高まることにはならないだろう。むしろ、経営体力が不安視されながら合格した金融機関に市場からの圧力が増す恐れがある。

日本の不良債権問題をめぐっても、当初、当局による評価が甘かったため、情報開示をしても信用不安の解消につながらなかった。問題が長期化し、事態はさらに悪化、貸し渋りなどを通じて実体経済も冷え込んだ。欧州で同様の悪循環が起きれば、影響は日本を含む世界の景気や株式市場に及ぶだろう。

欧州の当局も金融機関も、後手の対応で問題をより深刻化させる愚を犯してはならない。

読売新聞 2010年07月25日

欧州銀行検査 金融不安解消にさらに努力を

欧州の主要銀行の財務状況を調べたストレステスト(特別検査)の結果が公表された。

これまで不透明だった欧州の個別行ごとの潜在的な資本不足額が、ようやく開示された意義は大きい。

ギリシャの財政危機に端を発した欧州の金融不安に歯止めをかけるには、銀行の経営安定が不可欠である。今後も引き続き、各行の資本増強が急務と言えよう。

特別検査は、想定以上に景気が失速したり、銀行が保有するギリシャなどの国債の価格が急落したりした場合でも、銀行経営が耐えられるかどうかを査定した。

欧州連合(EU)が対象にした91行のうち、ドイツ、ギリシャの各1行、スペインの5行の計7行が自己資本不足に陥ると判定された。不足額は合計で35億ユーロ(約3900億円)に上る。

問題行の7行は資本増強に取り組むが、スペイン政府は、公的資金を追加投入するとみられる。速やかな対応が求められる。

今回の検査で「資本不足」と認定された銀行数は、事前予想より少なく、いずれも中堅以下の銀行だった。経営悪化が懸念されたドイツの州立銀行を含め、大手行はすべて「問題なし」とされた。

しかし、この結果だけで、欧州の金融不安を払拭(ふっしょく)できるかと言えば、まだまだ楽観できまい。

市場では、そもそも資産査定の基準が甘かったという懸念がくすぶっているからだ。

不動産バブルが崩壊したスペインなどでは、銀行が抱える不良債権が拡大している模様だが、不動産価格の下落リスクを検査がどう見積もったかは不明だ。

巨額の財政赤字を抱えたギリシャの国債などの損失評価についても、あいまいな部分が残る。

2000もの金融機関がひしめくドイツなどの金融再編の加速も課題といえる。金融不安の解消にはさらなる努力が必要だ。

EUは、自力では資本増強を図れない銀行に対し、各国が公的資金を投入できる仕組みを整えた。さらに、EUの基金を活用した緊急融資制度を「最後の安全網」として検討している。

こうした手段を総動員し、欧州の金融システムを早期に安定させることが肝要である。

ギリシャ、スペインなどの財政赤字国は、財政再建を着実に実行することも求められよう。

欧州危機が拡大すれば、景気回復の途上にある世界経済に打撃を与える。EU各国は、連携を一段と強化しなければならない。

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