泥沼アフガン 現政権任せにしない

朝日新聞 2010年07月22日

泥沼アフガン 現政権任せにしない

国際テロと戦いながら、破綻(はたん)国家の再建も進める。

泥沼化しつつあるアフガニスタンの現状は、この課題の難しさを国際社会に突きつけている。軍事力を前面に出し、その遂行を主導した米国にとってはベトナムをしのぐ史上最長の戦争となってしまった。

その狭い出口をさぐる国際会議が20日、カブールであった。70あまりの国や機関が参加し、2014年までに治安権限を国際治安支援部隊(ISAF)からアフガン政府に移すというカルザイ大統領の方針を承認。国際テロ組織アルカイダとの関係がない反政府勢力タリバーンの穏健派と和解を進めるアフガン政府の計画なども認められた。

アフガンの自立を促し、11年7月に予定する米軍の撤退開始につなげたいというオバマ米大統領の描く戦略が、その根底にはある。

だが、これを実現する道は困難に満ちているといわざるをえない。

まず、オバマ氏の決定で就任時の約3倍にまで米軍が増強されたのに、タリバーンの掃討作戦は思うように進んでいない。タリバーンを押さえ込むどころか、米軍もISAFも戦闘での死者が6月に過去最高を記録。治安はむしろ悪化している。

作戦をめぐって米政権を批判したアフガン駐留米軍の司令官が解任される事態まで起き、最近の米国での世論調査では、アフガン戦争に「戦う価値がある」とした回答が43%。オバマ政権発足後の最低だった。

最も大きな懸念材料はカルザイ政権そのものである。

カルザイ大統領は、01年の米国同時多発テロ後にタリバーン政権が崩壊してから一貫して国家再建のかじを取ってきた。だが、国民和解、統治能力の向上、汚職・腐敗対策という重要な課題でほとんど成果を上げていない。その結果、ここ数年でタリバーンの復権が顕著となり、攻勢も激化した。

カブールの国際会議では、元タリバーン兵士の社会復帰をはじめ、農村開発やインフラ整備による雇用創出などのアフガン政府の計画にも支持は表明された。とはいえ、これもカルザイ政権の体質が抜本的に変わらなければ、成功はおぼつかない。

突破口を開くには、思い切った手段が必要だ。たとえば、現政権がタリバーン穏健派と交渉する力に欠けるのであれば、国連事務総長ら国際機関の代表が仲介役となって間を取り持ってはどうか。

泥沼化したアフガンが国際テロ組織の拠点になってしまえば、米国をはじめ各国の将兵が撤退しても、問題の根本的な解決にはならない。泥沼自体をきれいにしなければ、国際社会にとっての脅威は増すばかりだ。

毎日新聞 2010年07月25日

アフガニスタン 「14年権限移譲」に全力を

泥沼というより「イスラムの大海」にのみ込まれるような感覚ではないか。アフガニスタン情勢は険悪である。米軍が先進兵器を駆使して空陸から攻撃しても、タリバンなどのイスラム勢力は後から後から押し寄せる。勢いは一向に衰えない。この9年間の戦いで米軍の死者は1000人を超えたが、米国が軍事的に勝利する展望は開けていない。

そんなアフガンの安定化策や復興支援を話し合う国際会議が開かれたのは今月20日。開催地は首都カブールだった。カルザイ大統領と潘基文(バンキムン)国連事務総長が議長を務め、岡田克也外相やクリントン米国務長官ら約70カ国・機関の代表が参加した。

カブールもタリバンの攻勢にさらされている。会議がつつがなく終了したことは喜ばしい。今のアフガンでは駐留外国軍が治安権限を担っているが、会議の席上、カルザイ大統領は治安権限を2014年までにアフガン政府に移管する意向を示して了承を得た。これも明るい材料だ。

だが、その実現が難しいことも分かっている。米オバマ政権は兵員増派でタリバン抑え込みを図ったが、目立った成果は上がらない。他方、6月の外国軍兵士の死者は100人を超えて過去最悪となった。駐留米軍司令官が政府批判をして解任された一件もまだ尾を引いている。

米政府としても、米軍のベトナム撤退や旧ソ連軍のアフガン撤退が思いだされる局面だろう。治安支援部隊(ISAF)を構成する北大西洋条約機構(NATO)の加盟国内にも、えん戦機運が高まっていることは否定できない。

ここは戦略の再点検が必要だ。米軍は来年7月の撤退開始をめざしている。カルザイ政権が「14年権限移譲」を表明したのは、11月の中間選挙に向けて米軍撤退に現実味を与えたいオバマ大統領への援護射撃だろう。政治的な思惑はともかく、どのように米軍撤退や治安権限移譲の目標を達成するのか、もっと現実に即した説明を聞きたい。

また、カルザイ政権は「タリバン穏健派との和解」をめざしているが、和解のプロセスは進んでいない。米軍が守勢を余儀なくされている状況で、思惑通りにタリバン勢力を取り込むのは難しい。この点でも作戦の見直しが必要だろう。

カルザイ政権の汚職や腐敗体質にも厳しい目を向けるべきだ。日本は5年間で最大50億ドルの支援のうち年内に約11億ドルの拠出を約束したが、各国の支援が本来の趣旨で生かされているのか、はなはだ怪しい。カルザイ政権は「汚職根絶」という各国の切実な要望に応えつつ、4年後の権限移譲が可能になるよう全力を尽くしてほしい。

読売新聞 2010年07月24日

アフガン会議 支援とともに監視が必要だ

アフガニスタンをテロの巣に戻さぬために、国際社会は9年に及ぶ復興支援を続けてきた。その忍耐強い支持に、アフガンのカルザイ政権は行動で応えなければならない。

カルザイ大統領はカブールで開かれたアフガン支援国際会議で、駐留外国軍に頼っている治安維持を、2014年末までに全土でアフガン政府が担うと宣言した。会議参加国もそれを歓迎した。

アフガンに派兵する欧米諸国では、駐留継続反対論が高まっている。カルザイ大統領の宣言は、撤兵を視野に入れた出口戦略を早く描きたいという各国指導者の思惑とも合致したのだろう。

だが、現状をみれば、実現は難しいと言わざるをえまい。

米軍の3万人増派は来月には完了する。アフガン駐留外国軍の規模は15万人に達するが、国際テロ組織アル・カーイダを(かくま)ったイスラム原理主義勢力タリバンの掃討は進展するどころか、反転攻勢に苦しめられている。駐留軍の犠牲者は増え続けるばかりだ。

米政府のアフガン政策を批判した駐留米軍司令官の更迭劇も、アフガン情勢の行き詰まりと無縁ではなかろう。

治安維持任務の移管には、アフガン人治安部隊の育成が欠かせない。アフガン政府は来年10月までに、軍と警察を合わせた要員を30万人超に増やす計画だが、問題はその質だ。装備の貧弱さだけでなく、識字率や規律意識も低い。

治安改善のためには、生活基盤整備や雇用創出事業も同時に進めなければならない。アフガン政府に治安維持を任せるまでに、克服すべき課題はあまりにも多い。

アフガンには02年以来、350億ドル(約3兆円)を超える援助資金が注がれてきた。その大半は、復興事業を担う国際的な非政府組織(NGO)などに対する直接支援だった。

会議では、今後2年間で援助資金の半分までを、アフガン政府経由に切り替えることで合意した。「政府の裁量でより有効に資金を使いたい」とのカルザイ大統領の要望を受け入れたのだ。

しかし、アフガン政府幹部らの不正、腐敗への批判は絶えない。援助資金の横領などあってはならない。大統領は、特別法廷の設置など汚職対策強化を表明したが、早急に成果を示してほしい。

日本も09年から5年間で50億ドルの支援を約束した。日本を含めた支援国は、援助資金が適切に使われるよう、厳しく監視していく必要がある。

産経新聞 2010年07月26日

アフガン支援 文民の安全に知らん顔か

復興への苦闘が続くアフガニスタンの首都カブールでの国際支援会議で、岡田克也外相は日本が昨年約束した支援(5年間で最大50億ドル)のうち年内に約11億ドル分を実行すると表明した。

支援分野ごとに具体的数字を挙げて説明した外相の姿勢は評価したい。しかし、アフガン復興のカギを握る日本の中核プロジェクトについてもっと力説してもよかったのではないか。国際協力機構(JICA)が着手した「カブール首都圏開発計画」だ。

カブールには帰還難民や仕事を求める人々が大量に流入し、現在400万の人口は2025年には900万にも膨れあがると予想される。給水やゴミ処理の能力は限界に近づき、インフラ整備が喫緊の課題である。

25年までの首都圏開発計画はダム建設などの水源確保や基幹道路の増設から産業振興、工業地域の整備までを含む。アフガン側が自立的に行えるよう都市計画専門家を育成するのが主眼だが、もう一つ大きな狙いがある。雇用創出効果だ。当面のインフラ整備で年間25万人、産業振興で134万人と試算している。

アフガンでは貧困と仕事がないことが人々をテロや麻薬の密売へと走らせた。タリバン元兵士の社会復帰を促す意味でも首都圏開発計画には大きな意義がある。

ただ、事業の円滑な実施には治安の安定が欠かせない。治安分野で日本は警察官の研修や給与負担などを続けているが、武器使用問題がネックとなり、文民警護には直接関与していない。

首都圏開発計画には常時最大40人の専門家が派遣される。これらの文民は武装した警備員に付き添われ、防弾車で移動する。

アフガン駐留の外国軍部隊は米軍の増派により8月には15万人体制となり、タリバン掃討作戦の成功を目指す。来年夏には米軍撤退が開始される。カブール会議は14年末までに治安権限をアフガン国軍に移譲する目標を掲げたが、テロの根絶には相当な期間を要するだろう。

韓国はカブール北部の地域復興チーム(PRT)に派遣した民間要員を警護する目的で、最近2年半ぶりに軍部隊約230人を派兵した。日本も、アフガン復興に汗を流す文民の安全のため、何ができるのか。自衛隊が対応できるよう法整備を急ぐべきだ。

この記事へのコメントはありません。

この社説へのコメントをどうぞ。
お名前
URL
コメント

この記事へのトラックバックはありません。

トラックバックはこちら
http://shasetsu.ps.land.to/trackback.cgi/event/424/