東南アジア諸国連合(ASEAN)の外相会議が、東アジアサミット(EAS)への米国とロシアの参加を認める方針を出した。
この秋のASEAN首脳会議で正式に認められれば、すでに参加している中国、インドを含め、中南米をのぞくアジア・太平洋地域の大国が勢ぞろいすることになる。
世界金融危機のあと最も早く立ち直ったのが中国を中心とするアジアだ。いまやこの地域が世界の経済を先導しているといっても過言ではない。
中国は台湾とも経済協力枠組み協定を結び、地域の大国としての存在感をますます高めている。中華経済圏ができつつあるという見方もある。
米ロはこうした現実に突き動かされ、アジアに直接関与する道を選んだのだろう。米国には、アジアで影響力が低下しつつあるのではないかという危機感もある。テロとの戦いという点で、イスラム原理主義につながるネットワークがある東南アジアに地歩を固める意味もあったと見られる。
また、大中華圏にのみ込まれたくないASEANが、バランス感覚を発揮した結果でもあるだろう。
日本は、日米同盟は地域の安定のための公共財だとして、米国がEASに関与する必要性を説いていた。今回の方針は、日本には歓迎すべきことだ。
しかし、米国が直接EASに参加すれば、米国の考えを代弁する国は必要ない。日本の影が薄くなることも覚悟しなければならない。
だからこそ今、日本独自のアジア外交の構想力が問われる。
EASは元来、東アジア共同体の可能性を探ることが大きな目的だった。米ロの参加によってその性格が変わるのか、目を凝らさねばならない。参加国が増えれば議論の収斂(しゅうれん)は難しくなるし、大国の利害の衝突もあるだろう。
立ち上がりつつある中華経済圏には日本も分かちがたく結ばれている。その現実を踏まえ、東アジア共同体構想の道筋との折り合いをどうつけていくのか。それをどこで話すのか。
共同体はそのメンバーも決まっていないが、少なくともASEANと日中韓が中心になることは間違いない。
ASEANは2015年の統合を目指して経済の一体化を進め、憲章も制定した。そこには共同体づくりで一歩でも先んじ、より広い地域統合の核という地位を確保する意図もある。
日本は中韓との連携を強めねばならないが、歴史問題をはじめ乗り越えるべき複雑な課題がなおある。
一方、ASEANとはこれまでに積み重ねてきた協力関係の厚い蓄積がある。まずそれを強化し、重要なパートナーとして関係をさらに深めることも、アジアで日本が存在感を増すためには欠かせない。
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