山陽新幹線不通 JR西はタガを締め直せ

毎日新聞 2010年07月23日

新幹線大混乱 また信頼損ねたJR西

神戸市の山陽新幹線須磨トンネルで保守点検用の車両同士が衝突・脱線した事故は、始発から多くの列車が長時間にわたって運休するなど大混乱を招いた。JR西日本では、安全にかかわる装置から部品を抜き取った疑いで車掌が逮捕されたばかりで、連日の不祥事だ。規律の緩みはもとより、安全意識が徹底していないと言わざるをえまい。

山陽新幹線での保守作業用車両による衝突事故は今回が初めてではない。99年に神戸市内で停車中の車両に別の車両が追突し、3人が重軽傷を負う事故があった。その前年にも、岡山市内で事故があり、やはり重軽傷者を出した。このため同社は04年に衝突防止装置を導入した。

ただ、衝突防止装置があったとしても、保守作業の安全確認は目視が基本だろう。同一の区間に複数の保守車両を入れる以上、作業員同士の緊密な意思疎通が欠かせない。どのようなやりとりがあったのか。以前の事故の教訓は生かせていたのか。徹底した検証が必要だ。

一方、逮捕された車掌は、列車から防護無線の予備電源装置のヒューズを抜き取った偽計業務妨害などの疑いが持たれている。事故などの際に近くを走る列車に停止信号を送る安全上極めて重要な装置だ。「仕事が嫌になった」と動機を供述し、20件近く抜き取ったと認めているという。乗客の命を守る鉄道マンとしては驚くべき精神のすさみようだ。

JR西日本では5年前の福知山線脱線事故の責任を巡り、歴代4社長が業務上過失致死傷罪で起訴されるという異常事態に陥っている。営利優先の過密ダイヤなど、安全軽視の企業体質が問われているといえる。

同社は08年に「安全基本計画」を策定。安全性向上の課題として、コミュニケーションをはかり、風通しのよい組織を形成することなどを挙げ、現場重視の改革に乗り出していた。今年度は1000億円以上の安全投資でATS(自動列車停止装置)や踏切内の障害物検知センサーの設置などを進めているという。

だが、再生途上の今年3月にも山陽新幹線で走行中の車両の車軸ギアボックスが破損するトラブルが起きている。一つ間違えば脱線などの大惨事につながる恐れがあった。

佐々木隆之社長は今年の新入社員に「考動」を訴えた。指示されたことをやるだけでなく、社員一人一人が安全のため、自ら何ができるかを考え、行動するよう意識改革を求めたのである。しかし、肥大化した組織では職場間の連携不足や、勤務中の「ヒヤリ」体験の報告をためらうケースが多いと指摘される。信頼回復の道はほど遠い、とJR西日本は自覚しなければならない。

読売新聞 2010年07月23日

山陽新幹線不通 JR西はタガを締め直せ

JR西日本の安全対策に疑問を抱かせるようなお粗末な事故だ。

山陽新幹線のトンネル内で保守車両同士が追突事故を起こして脱線、新大阪―姫路間が始発から8時間以上も不通となった。

台風などの自然災害を除き、これほど長時間、新幹線がストップしたのは異例のことだ。ビジネス客や夏休みに入ったばかりの旅行客に混乱が広がった。

それでなくとも猛暑でうんざりなのに、計画を大幅に狂わされたとあっては、怒り心頭だろう。経済的な損失も計り知れない。

すべての保守車両には、車両が300メートル以内に接近すると警報が鳴り、自動的に非常ブレーキがかかる衝突防止装置が備え付けられていたという。

衝突防止装置が機能しなかったとすれば、何のための安全装置かわからない。装置の欠陥か、整備ミスなのか、徹底的に調査し、再発防止につなげるべきだ。

追突した車両の運転手は「トンネル内は土煙が舞い、視界が悪かった。手動ブレーキも間に合わなかった」と説明している。

視界が不良なら、もっと慎重に運転すべきではなかったのか。同じ場所、同じ時間帯に複数の保守車両を投入する作業計画に、問題はなかったのか。これは、明らかな人災だろう。

前日の21日には、JR西の車掌が、偽計業務妨害などの容疑で逮捕されたばかりだ。

乗務中に、列車に設置された防護無線の予備電源装置のカバーをドライバーではずし、中のヒューズを抜き取っていたというから悪質だ。犯行件数は20件に上る。

ヒューズがないと停電時に予備電源は作動せず、事故などの際に周囲を走行する電車に緊急停止信号を送ることができない。二重事故につながりかねなかった。

車掌は「仕事に疲れ、ストレスがたまっていた」と供述し、会社に不満があったともいうが、言い訳にならない。安全運行を担う立場の者が安全運行を脅かす行為をしたのだから、あきれる。

JR西は福知山線の脱線事故で利益優先、安全軽視の企業風土が厳しく批判された。その後、「企業風土の変革」を表明し、社員教育の見直しなどにも取り組んできたはずではなかったのか。

今回のような事故や不祥事が続くと、まだ安全最優先の意識が各現場に浸透していないと見られても仕方あるまい。信頼される公共交通機関となるためには、改めて組織の総点検が必要である。

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