毎日新聞 2010年07月22日
米韓2プラス2 「北」は警告を受け止めよ
最大のポイントは、強い警告のメッセージを北朝鮮が理解し、今後の行動を抑制するかどうかだ。ソウルで開かれた米国と韓国による初めての外務・国防担当閣僚会議(2プラス2)のことである。
米国のクリントン国務長官とゲーツ国防長官、韓国の柳明桓(ユミョンファン)外交通商相と金泰栄(キムテヨン)国防相の4人は、会議前に南北軍事境界線沿いの非武装地帯(DMZ)を視察した。米側2長官のDMZ共同視察は前代未聞だ。
会議後の共同声明は、多国籍調査団が北朝鮮の魚雷攻撃と結論付けた韓国哨戒艦の沈没事件について「責任をとれ」「さらなる攻撃や敵対行為をやめよ」と北朝鮮に求めた。
要求には重みがある。同じ日、釜山港に米海軍第7艦隊の原子力空母ジョージ・ワシントンが入港した。25日から日本海で実施される米韓合同軍事演習に参加する。
この演習は両国の潜水艦を含む艦艇20隻以上と、米軍嘉手納基地に一時配備中の最新鋭ステルス戦闘機F22をはじめ航空機200機以上が投入される大規模なものだ。もちろん北朝鮮への警告の意味がある。
北朝鮮は哨戒艦沈没事件に関する国連安全保障理事会の議長声明で、事実上非難されたものの名指しは免れた。これを「外交的勝利」と誇り、米韓や日本への高飛車な批判を続けている。新たな軍事挑発への懸念もあり、それを回避するために「圧力」を用いるのもやむをえまい。
米韓は目前に迫った演習だけでなく、今後数カ月にわたり日本海と黄海で一連の合同軍事演習を行うことにも合意している。こうした演習は実質的に北朝鮮への制裁の意味を持つ。米韓側はあくまで演習のつもりでも、北朝鮮は警戒して臨戦態勢をとり、軍用燃料も消費する。長引けば重い負担になるだろう。
しかも北朝鮮は9月初めに労働党の代表者会を開き「最高指導機関」を選出すると予告している。金正日(キムジョンイル)総書記の健康状態悪化も取りざたされる状況で、独善的な姿勢を続け、自らまいた種子による「圧力」を受け続けるのは得策ではあるまい。
クリントン長官は会議後の記者会見で、安保理による既存の対北朝鮮制裁決議の厳格な履行に加え、北朝鮮指導層を対象とする資産凍結など新たな制裁を実施すると述べた。
また、北朝鮮が苦境脱出を狙ってか、6カ国協議参加に言及していることについて、核放棄の意思を明確に示すことが先決だと指摘し、安易な協議再開を退けた。
こうした方針を不当なものとは言えない。北朝鮮の態度変化こそが重要である。中国が米韓合同軍事演習を嫌うなら、北朝鮮が行動を改めるよう説得すべきである。
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読売新聞 2010年07月22日
米韓軍事演習 北朝鮮への抑止力を期待する
北朝鮮がいかなる攻撃を仕掛けても「抑止し撃退する」という米韓両国の強い決意の表明だ。
米国のクリントン国務長官とゲーツ国防長官がそろってソウルを訪問、韓国側と初の外務・国防閣僚会議(2プラス2)を行い、同盟強化をうたう共同声明を発表した。
米韓国防相会談では、25日から4日間、日本海での大規模な合同軍事演習の実施を決めた。
演習には、米空母「ジョージ・ワシントン」など約20隻の艦船、米最新型ステルス戦闘機F22など航空機約200機、兵力8000人が参加する。今後数か月間、一連の演習を続行し、黄海でも実施するという。
ちょうど4か月前に黄海で起きた韓国海軍の哨戒艦沈没事件の教訓も新たに、北朝鮮への警戒を緩めないということだろう。
北朝鮮は、核兵器と弾道ミサイルの開発をやめようとしていない。金正日総書記の健康不安や経済が破綻する中で、権力継承を進める不安定な過渡期にある。
米国の次期国家情報長官に指名されたクラッパー国防次官も、上院公聴会で、「北朝鮮は政治的な目的を達成するため、再び韓国を攻撃する危険な時期に入った」と厳しい認識を示した。
北朝鮮が暴発しないよう、しっかりと抑止する必要がある。
中国政府は、黄海など中国近海での米韓軍事演習の実施には「断固反対する」と反発してきた。中国軍は、東シナ海や黄海で実弾射撃訓練や海上輸送訓練を相次いで実施し、米国を牽制している。
米韓両国が、米空母が参加する演習の実施海域を、当初予定した黄海ではなく日本海に変更したのは、中国への配慮に違いない。北朝鮮の脅威に対処していく上で、北朝鮮と深い関係にある中国との協調は欠かせないからだ。
問題は、北朝鮮への対処をめぐって、周辺各国の認識が異なっているところにある。
中国は哨戒艦沈没事件で、隣国の北朝鮮を問責、非難することに反対を貫いた。韓国とその同盟国の米国が朝鮮半島での影響力を強めることになれば、中国の安全保障への脅威が増すと受け止めているのだろう。
米韓両国は、軍事演習は北朝鮮からの攻撃に備えた防衛目的としている。中国側の警戒心を解くよう努めてもらいたい。
北朝鮮を取り巻く日米韓や、中国、ロシアは、不測の事態への備えを怠ることなく、忌憚のない意見交換を急ぐ必要がある。
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産経新聞 2010年07月25日
対北合同演習 日米韓の結束固める時だ
韓国哨戒艦撃沈事件を受けた米韓合同軍事演習が25日から日本海で始まる。北朝鮮が演習に反発する声明を出すなど緊張も高まっている。
北の新たな挑発や攻撃を抑止する狙いを持つ演習に、日本政府は初めて海上自衛官をオブザーバー派遣する。日米韓の緊密な結束と連携をアピールすべき時だ。当然かつ適切な行動として派遣を評価したい。
北は自らの行動がこの事態を招いたことを反省しようとせず、挑発的対応に終始しているのは極めて残念だ。日米韓は演習中の不測の事態に万全の備えで臨みつつ、制裁など国際社会の対北包囲網をさらに強化する必要がある。
北の無責任な対応をめぐっては23日、ハノイで開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラム(ARF)閣僚会議でも論議が集中した。
日米韓は岡田克也外相、クリントン国務長官、柳明桓外交通商相が結束して「挑発行動をやめて謝罪せよ」(柳氏)などと、北に態度を改めるよう求めた。しかし、北朝鮮外相は哨戒艦事件の責任を一切認めようとしなかった。
中国や一部のASEAN諸国が北に配慮したため、会議で厳しい総括ができなかったのは遺憾だ。それでも北の国際的孤立が一層深まった現実は否定できない。
にもかかわらず、北の国防委員会は24日、「核抑止力に基づく報復聖戦をいつでも開始する」と合同演習に対抗する内容の声明を発表した。核による威嚇は断じて受け入れられない。
今回の海自派遣は、米韓の招請を受けたものだ。韓国側には過去の経緯から対日防衛協力をめぐる慎重論もあるが、対北包囲網の構築を重視する李明博政権と米政府の意向が働いたとみられる。
哨戒艦事件自体が日本にとって自らの平和と安全に重要な影響を与える「周辺事態」とみてもおかしくなかった。それを考えれば、日米韓の抑止と連携を高める日本の参加は当たり前というべきだ。これを機に日米、米韓と並ぶ日韓の協力体制をさらに深めたい。
アジアの緊張が高まっている時期だからこそ、日米同盟の緊密な協力が欠かせない。ARFの場では日米外相会談も開かれ、懸案の米軍普天間基地移設をめぐる日米合意の順守に努力する方向で一致した。同盟の信頼と抑止の実効性を高めるためにも、普天間問題の解決を遅らせてはならない。
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