概算要求基準 分野ごとに歳出切り込め

毎日新聞 2010年07月21日

概算要求基準 歳出抑制の道筋見えぬ

多難な前途を暗示する予算編成のスタートである。政府は11年度予算について、国債の元本返済と利払い費を除いた歳出の上限を10年度並みの約71兆円とする方針を決めている。ところが、予算でどのように具体化するかの道筋を全く描けないでいるのだ。

「71兆円枠」は先月、閣議決定した「中期財政フレーム」の柱である。11年度から3年間、国債費を除く歳出を10年度の水準以下にする、という最低限の約束だ。

高齢化による社会保障費の自然増(約1・3兆円)や新成長戦略実施のための経費を含めた総額の抑制であるため、達成には、追加分に見合った財源の捻出(ねんしゅつ)が不可欠だ。そこで「省庁一律の約1割削減」が浮上したようだが、20日に財務相らが各閣僚に示した「概算要求基準骨子」には盛り込めなかった。閣僚から強い反発が出たためだ。今からこれでは先が思いやられる。

「コンクリートから人へ」のスローガンのもと、10年度予算ですでに公共事業費が大幅に削減された国土交通省の抵抗が伝えられている。だが、同省に限らず、「うちは特別」と言わんばかりの閣僚発言が相次いでいる。「成長戦略に必要な支出」を口実とした要求が今後さらに強まる可能性がある。

本来は概算要求段階の一律削減ではなく、政策の優先順位に沿ったメリハリのある予算が望ましいだろう。だが、政権交代後に手がけた10年度予算編成では、無駄の削減を各省に委ねた結果、要求額が大幅に膨らんだ。メリハリのある予算を練る役目が期待された国家戦略局は不発に終わった。

そこで「一律削減」が検討されたのだろうが、それもできないとなると、71兆円枠の達成が危ぶまれる。各閣僚が自主的に予算の組み替えに取り組み、省をまたぐものは菅直人首相が「大胆に組み替える」というが、楽観的過ぎはしないか。

中期財政フレームは閣議で決めた政府の方針だ。閣僚全員が実行に責任を負う。それなのに、そのスタート段階でつまずいているようでは、財政再建に対する真剣度が疑われてもおかしくない。「政治主導、官邸主導」と言うのなら、菅首相は最初から具体的な指示を出し、閣僚らに徹底させる必要がある。

リーダーシップ不在のまま、政府や与党の幹部がバラバラの発言を繰り返し迷走したのがこの10カ月だった。この先は参院の多数を野党が占めたこともあり、状況はますます厳しくなる。予算編成の司令系統を明確にし、政府・与党が結束してあたらなければ、「財政再建」も「成長戦略」も絵に描いた餅に終わる。

産経新聞 2010年07月21日

概算要求基準 分野ごとに歳出切り込め

政府が平成23年度予算の編成に向けて概算要求基準の骨子をまとめた。一般会計のうち国債費を除いた歳出額を今年度予算並みの約71兆円に抑制する方針だ。

しかし、バラマキ政策と批判されている子ども手当や農家への戸別所得補償などを盛り込んだ今年度予算と同じ歳出規模を認めたのでは、極めて不十分といわざるを得ない。

今回の骨子は、6月に政府がまとめた、向こう3年間の予算の大枠を示す「中期財政フレーム」に沿ったものだ。国債費を除いた一般会計の歳出を71兆円に抑えることに加え、無駄を徹底的に見直して、大胆な予算の組み替えを可能にする仕組みを新たに設けることなどが柱だ。

政府・与党は、昨年の衆院選で民主党が打ち出した政権公約のバラマキ政策を政策効果を示さないままに実施した。自民党政権による概算要求基準も撤廃し、今年度の歳出は92兆円規模に膨らんだ。一方で税収は37兆円にとどまり、埋蔵金などの税外収入を合わせても44兆円の国債発行に依存せざるを得なかった。国債発行が税収を上回る異常事態だ。

概算要求基準の骨子はこの反省を踏まえたものだが、71兆円という歳出規模をそのままにして歳出削減努力を果たしたとはいえまい。来年度予算の要求にあたっては、全体の歳出上限だけでなく、社会保障や公共事業など主要な分野ごとに厳しく上限を設ける仕組みが必要だ。

来年度からの本格実施で1兆円規模の予算が必要となる農家の戸別所得補償なども見直しの対象とすべきだ。政府・与党は、今月末に概算要求基準を正式に決定するが、政策的経費の予算要求には一律削減を求めるなどの厳格な基準が欠かせない。

政府は平成27年度までに基礎的財政収支の赤字を半減させる「財政運営戦略」もまとめている。来年度予算の編成は、この財政健全化に向けた取り組みのスタートの年となるが、各省庁が成長戦略に必要との理由で、概算要求の枠外となる「特別枠」を通じてさまざまな歳出要求を打ち出すなど、71兆円で収まらない歳出増圧力も懸念されている。

このため、菅直人政権は1兆3千億円の社会保障費の自然増分を含め、聖域を設けぬ歳出の削減に取り組み、財政健全化に向けた覚悟を示す必要がある。

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