「脱ダム」提言 流域一体で治水対策を

朝日新聞 2010年07月20日

ダム検証 見直しは市民参加で

ダム以外の治水方法と比較して、このままダム事業を続けるべきかどうか、検証し直す。国土交通省の有識者会議がそんな提言を発表した。

できるだけダムに頼らない治水をめざすと宣言。集落を堤で輪のように囲む輪中堤(わじゅうてい)の復活や、川沿いの土地利用規制、堤防の強化など、25もの代替案を例示している。県営ダムを含め、84の事業を対象にする。

ダムは一時期まで脚光を浴びた。しかし、環境に大きな負荷がかかることが問題視されるようになり、適地も減った。地元の説得に長い時間がかかり、事業費も膨れ上がった。惰性を排して見直す意義は大きい。

だが、この検証が期待通りの成果を出せるかどうか、懸念がある。

提言によると、検証は事業主体が行う。国交省の出先機関の地方整備局または水資源機構の支社、県営ダムは県が主体になり、関係自治体などと検討の場を持つ、という。

八ツ場(やんば)ダムなら、事業を進めてきた関東地方整備局が、前原誠司国交相を事業推進の立場から突き上げてきた関係6都県などと行うことになる。このメンバーで、どこまで詰めた代替案が出てくるか。

不十分なら国交相が再検証を指示できる、というが、地域での検証結果を突き返せるものだろうか。前原氏が昨年9月、就任直後に八ツ場ダム中止を発表し、地元から強い抗議を受けて混乱したことは記憶に新しい。

しかも、治水の目標となる流量を従来と同じ水準としているが、この水準自体が高すぎると批判されてきた。これでは、代替案として堤防を考えても、都市部に巨大なものを建設しなければならなくなる。結局、安上がりだからと、ダム擁護になりかねない。

国交省が検証を指示するのは9月になりそうだが、その前に十分な検証ができる体制を整えてほしい。

欠かせないのは、第三者の市民が議論にかかわる仕組みだ。公募の市民委員らが議論した淀川水系流域委員会は傍聴者にも発言を許し、社会の関心を高め、河川政策見直しのうねりを作った。賛否両論が激突し、緊張感ある検証をしてこそ結果は信用を得る。

前原国交相が約束したままになっている、ダム中止後の地元の生活再建策の具体化も急いでもらいたい。生活の展望が描けないため、水没地域の多くの住民がダム推進の先頭に立たざるをえない現状は、あまりに不合理だ。

事業中止を議論する以上、事業費の一部を負担してきた自治体への資金返還ルールも確立するべきだ。事業続行とどちらが得か、自治体が判断できるようにするためだ。

公共事業見直しは1990年代の長良川河口堰(かこうぜき)以来、議論が続く。中途半端な検証では、問題はさらに長引く。

毎日新聞 2010年07月19日

「脱ダム」提言 流域一体で治水対策を

梅雨前線の影響を受け、各地で水の被害が相次いだ。水害に強いと見られた都市部もゲリラ豪雨で被害が多発し、災害に強い街づくりが急務となっている。そんな中、国土交通省の「今後の治水対策のあり方に関する有識者会議」は、ダム中心のこれまでの治水行政を見直す提言をまとめた。コストと環境面を重視し、ダム頼みだった治水対策を見直す今回の案は大いに歓迎したい。

提言によれば今後、ダム本体を建設するにはダム以外の治水対策とコスト、安全度、環境への影響などを比較検討し、クリアしなくてはならない。国交相が最終的には判断するが、事業主体が提出する報告書が不十分な場合はやり直しを要請できる。検証の対象になるのは全国84カ所のダム。事業主体の国や水資源機構、さらには53の補助ダムを抱える30道府県は、こうした手続きを経て建設の是非を判断することになる。

「脱ダム」の治水対策は25の手法を提言では掲げている。住宅地域を囲む輪中堤や道路を兼ねた二線堤や遊水地、放水路の建設。さらに保水容量を増すため現在あるダムや堤防をかさ上げしたり、流下能力を向上させるための河道の掘削や、上流の森林を保全し、保水能力を高めることも手法の一つに加えた。都市部では雨水貯留施設の建設や透水性の舗装、浸水の恐れが高い地域の土地利用の規制なども有効だ。これらを組み合わせて脱ダム治水対策は立案されることになる。

ダム建設は、水没する地域の住民の反対で、完工時期が予定よりも大幅に遅れるケースも少なくない。建設か中止かで注目されている八ッ場(やんば)ダム(群馬県)も、着工は1970年だった。建設費用も見込みを大きく上回り、コスト意識が鈍すぎると批判されてきた。また、環境面からもダムは問題視されてきた。88年に着工した長良川河口堰(ぜき)の建設では反対運動が一気に全国に広がった。

ダム建設には大きく分けて四つの段階がある。(1)用地買収(2)住民の生活再建(3)迂回(うかい)水路の建設(4)本体工事--だ。対象となるダムの事業主体は次のステップに移行する前に、「ダムによらない治水対策」を立案し、比較対照した報告書をまとめなくてはならない。その作業は公開され、流域の住民や首長、学者などからも意見を聴取することになった。

しかし、有識者会議が提案する治水手法では、水路や遊水地の建設で立ち退きを求められる住民も出てくる。冠水地域と冠水しない地域との線引きは極めて難しい。土地利用の規制も所有者の反発を招きかねない。総論賛成、各論反対に終わらせない努力を事業主体だけでなく流域住民にも求めたい。

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