安保理議長声明 「北」の暴挙封じられるか

朝日新聞 2010年07月11日

安保理声明 北朝鮮への厳しい視線

確かに、北朝鮮の犯行だと断じてはいない。だが事実上、北朝鮮を非難したと読める。韓国軍哨戒艦の沈没事件で、国連の安全保障理事会がそんな内容の議長声明を採択した。

3月の発生から時間がたったとはいえ、安保理という場で一致したメッセージを出すことができた。

46人の韓国兵が犠牲になったこの事件について、韓国のほか米国やスウェーデンなども加わった調査団は、原因を北朝鮮製の魚雷と断定し、「北朝鮮による発射以外に説明がつかない」との結論を出している。

今回の議長声明は沈没原因に関して「攻撃」という表現を使って非難し、「調査団の結果にかんがみ、深刻な懸念を表明する」とした。

日米韓は当初、安保理決議の可能性を探ったが、格下の議長声明に落ち着いた。声明では、事件への関与を否定する北朝鮮の主張も記している。

北朝鮮との摩擦を嫌う中国やロシアと折衝を重ねた末の妥協の産物だ。また、声明を出したからといって、事態がただちに好転するというものでもない。そんなむなしさもあるが、国際社会の意思を示す必要はあった。

中ロも賛同して北朝鮮を実質的に牽制(けんせい)する議長声明をまとめたこと自体には意味があったといえる。

北朝鮮は軍事行動の可能性もにおわせて、日米韓の動きに激しく反発してきた。一方で、米国と韓国は北朝鮮に近い黄海で空母も動員する合同演習の計画を立てつつあり、それには今度、中国が反対を表明している。

沈没事件後、朝鮮半島で予断を許さない緊張が続いていることに変わりはないのだ。南北はもちろん関係国も、偶発的な衝突を避け、緊張を解いていく努力をしなければならない。

北朝鮮は、名指しで非難されなかったことで高をくくっているようだが、厳しく認識すべきは、自らに向けられた国際社会のきわめて冷たい視線だ。

安保理が、核実験を受けて北朝鮮に科している制裁はその象徴である。

今回、中国やロシアが直接的な非難に反対したのも、なにも北朝鮮をかばうためではない。緊張を高めては国益にそぐわないからだ。

北朝鮮の経済は相変わらず苦しいようだ。一般住民より厚遇されているはずの軍人も脱北しだしたという。

そんななか、北朝鮮は金正日総書記の後継体制の整備に本腰を入れ始めた。国家権力の中枢である国防委員会の要職に三男ジョンウン氏の後見役を据え、態勢固めを図ったとされる。9月には労働党の代表者会を44年ぶりに開き、指導部人事を断行するらしい。

ただ、体制を整えたところで、国際社会の支援や協力なしに苦境から脱することなどできまい。今のままでは、袋小路に入り込むだけである。

毎日新聞 2010年07月10日

安保理議長声明 「北」の暴挙封じられるか

割り切れない思いと不安が募る。韓国の哨戒艦沈没事件について、国連安全保障理事会は北朝鮮を事実上非難する議長声明を採択した。しかし北朝鮮の魚雷攻撃による撃沈だとは明示せず、名指しの非難や責任追及になっていない。この程度で北朝鮮の今後の暴挙を封じられるのか。はなはだ心もとない。

議長声明は、46人の生命を奪った哨戒艦への「攻撃」に遺憾の意を表明し、「北朝鮮は沈没に責任があった」という多国籍調査団の結論に言及した後、改めて「攻撃を非難」している。

これは北朝鮮の所業に対する非難と読める点で、先月の主要8カ国(G8)首脳会議の宣言と類似している。しかし事件とは無関係だという北朝鮮の主張に「留意する」といった記述もあり、G8のメンバーではない中国が安保理で粘り抜いた「成果」が歴然としている。

それでも米国や日本は議長声明を肯定的に評価している。安保理に対し北朝鮮への名指し非難などを強く求めた韓国は、不満ではあるが一定の成果を得たと見て受け入れる姿勢だ。このあたりが安保理外交の限界なのだろうか。

北朝鮮の金正日(キムジョンイル)総書記は5月初めに訪中した際、中国首脳との会談で哨戒艦沈没事件とは「無関係だ」と断言したという。そう言われた以上、これを前提に北朝鮮をかばうしかないのが中朝関係の現実だと、中国側の弁明のような話が外交筋の間で流れている。

その通りだとすれば、中国は北朝鮮の今後の行動について新たな責務を負ったと見るべきだ。魚雷攻撃に目をつむる形で北朝鮮を意図的に救ったなら、同種の暴挙が決して繰り返されないよう、強い影響力を行使するのが道理というものだろう。

北朝鮮は哨戒艦沈没をめぐり韓国や米国を強く非難してきた。さらにG8を「味方なら肩を持つという悪習に染まった一味」と切り捨て、サミットでの菅直人首相の発言に関して「我々の気分を損ねる行動を続ければ日本が災いを被る」と脅した。こんな北朝鮮を中国がかばうばかりでは、大国としての責任を果たせまい。

北朝鮮では昨年11月のデノミネーション(通貨呼称単位の変更)失敗以来、何かが成功し快調だという情報がほとんどない。そんな中で哨戒艦事件は起きた。

さらに北朝鮮は、9月に労働党の「最高指導機関」選出のための党代表者会を開催すると予告した。何が起きるのか判然としないが、体制の将来を左右する大きな転換点にさしかかっているとの見方が有力だ。

こういう時だけに不測の事態への十分な警戒が必要である。

読売新聞 2010年07月11日

安保理議長声明 北朝鮮への警戒を怠るな

韓国海軍の哨戒艦沈没事件について、国連安全保障理事会が、「沈没につながった攻撃」を非難する議長声明を全会一致で採択した。

韓国がこの問題を安保理に付託したのは先月初めのことだった。やや遅きに失した感はあるが、安保理が結束して、これ以上、事態を悪化させる攻撃や敵対行為を阻止する意思を表明したのは歓迎できる。

だが、声明の内容には不満がある。だれが攻撃したのかという肝心な点が、外交的な駆け引きの末にぼかされてしまったからだ。

議長声明は、北朝鮮に責任があるとした韓国の調査結果を受けて「深い懸念」を表明した。同時に「事件と無関係」とする北朝鮮などの主張にも「留意」した。

両論併記でなければ中国が支持しなかったという事情がある。

事件をめぐり、韓国の軍民合同調査団は、「沈没の原因は北朝鮮の魚雷攻撃」と断定した。それを踏まえ、日本と米国は、北朝鮮の責任を糾弾する韓国政府を全面的に支持してきた。

これに対し、北朝鮮とつながりが深い中国は、調査団の結論を受け入れず、安保理で扱うこと自体に慎重な姿勢だった。

安保理で中国は、北朝鮮を名指しして非難すれば暴発する恐れがある、と強く反対したという。北朝鮮に対抗して、米韓が黄海で合同訓練を予定していることへの拒否感もあったに違いない。

問題は今後の北朝鮮の出方だ。昨年、安保理が北朝鮮の弾道ミサイル発射を非難する議長声明を全会一致で採択するや、北朝鮮は激高し再度の核実験を強行した。

今回も、北朝鮮が地域の安全を脅かす挑発に出るようなら、日米韓はこれを断固阻止する決意で連携を一層強化する必要がある。中国とロシアも協調すべきだ。

北朝鮮が逆に核廃棄への道を選択するなら、経済再建へ国際社会も協力できる。無条件で6か国協議に復帰することが先決だ。

北朝鮮は金正日総書記の健康不安や経済破綻(はたん)で揺らいでいる。

最近も、前人民武力相が突然要職を解任された。異例の年内2度招集の最高人民会議では総書記の義弟が昇進した。9月には44年ぶりに労働党代表者会を開く。いずれも権力継承に絡む動きだ。

この危険な時期に哨戒艦事件は起きた。核兵器とミサイルを持つ北朝鮮だけに、この先も不測の事態へ警戒を怠ってはならない。まず日米韓の3か国が有事を想定した協議を始める時ではないか。

産経新聞 2010年07月11日

対北議長声明 実効なく極めて不十分だ

韓国哨戒艦撃沈事件について国連安全保障理事会が採択した議長声明は極めて不十分といわざるを得ない。全会一致とはいえ、北朝鮮の犯行と断定できず、具体的な責任追及や制裁措置も含まれていないからだ。

46人の犠牲を出した哨戒艦事件は北の不法な軍事攻撃であり、集団安全保障を通じて国際平和と安全の維持を担う安保理に対する重大な挑戦である。にもかかわらず、実効ある決議を実現できなかった中露など常任理事国の責任は厳しくとがめられるべきだ。これで一件落着としてはならない。

日米韓に問われるのは、粘り強く安保理の行動を促しつつ、独自制裁や共同行動を通じて北への圧力を高めていくことだ。そのための連携を深めてもらいたい。

韓国政府は事件後、安保理の断固たる対応を求めてきた。だが、中露などが拘束力のある制裁決議や非難決議に同調しないため、先月下旬以降、北の名指し非難と謝罪要求▽責任者の処罰▽犠牲者への補償−などの実質的内容が盛り込まれれば、「議長声明でも受け入れる」としてきた。

ところが、採択された声明は北の名指し非難を回避した。責任者の処罰や補償、謝罪も盛り込まれず、さらに「事件に無関係」とする北の主張に留意している。

先月、カナダで開かれた主要国(G8)首脳会議の首脳宣言と比べても大きく後退し、安保理の役割と権威を自ら貶(おとし)める声明と言わざるを得ない。

こうなった直接の責任は、北への厳しい対応に難色を示してきた中露にあるといえる。一方で「無謀な行動に報いを受けさせる」としながら、両国に決断を迫れなかったオバマ米政権も説得外交のあり方を深く反省すべきだろう。

米韓の「愚かな誤算」と呼び、「外交的勝利」(国連大使)とする北の対応をこのまま放置してはならない。当面の焦点は米国が検討中の金融制裁や月内にも黄海で行われる米韓合同軍事演習だ。

中国は演習に「断固反対」(外務省)としているが、北の暴発に備える共同訓練に反対するのは筋が通らない。北の犯罪的行動をかばうのでなく、国際ルールに従うよう説得し、圧力を加えることが責任ある大国のとるべき行動だ。そのことを中国には強く認識してもらいたい。

日本政府も独自制裁など可能なあらゆる手段で臨むべきだ。

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