高速の無料化 優先すべき税の使途か

朝日新聞 2010年07月08日

高速の無料化 優先すべき税の使途か

民主党が公約に掲げる高速道路の無料化。その「社会実験」が始まった。結果しだいで、将来も無料化される路線が見つかるかもしれない。だが、無料化すれば納税者の負担が増えることを忘れてはならない。

全国の37路線50区間を対象にした今回の実験では、開始直後に交通量が2、3倍にはね上がったところも少なくない。さまざまな経済効果が確認できる可能性はある。だが、この実験だけでも料金収入の穴埋めに1千億円もの税金が投入されている。

もし民主党がこれまで検討してきたように首都高速と阪神高速を除く全国の高速道路で原則無料化に踏み切った場合、年に1.8兆円もの料金収入を失い、その分が国民負担となる。

民主党は参院選の政権公約でも、全国の高速道路の「段階的な原則無料化」を掲げる。一方、自民党は「高速道路会社の民営化と受益者負担の原則を堅持し、高速道路料金は無料化しない」と公約しているが、納税者へのしわ寄せを招かないという点で、こちらのほうが妥当ではないか。

民主党は必要な財源を歳出の無駄削減などで生み出すとしてきたが、歳出削減だけで巨額の財源を確保できないことは、もはや明らかだろう。

菅政権は、歳出増を伴う新政策には、それに見合う恒久財源を確保しなければならないという「ペイ・アズ・ユー・ゴー原則」を導入した。これに照らせば、高速道路の無料化には増税が欠かせないはずだ。

菅直人首相は消費増税を検討する方針を掲げている。増税分は、雇用を生み出す分野に集中的に投じたり、基盤が崩れかかっている社会保障の立て直しの財源にしたりする構想である。これはぜひ実現してほしい。

首相の準備不足もあって、選挙遊説での世論の反応は厳しい。しかし、菅首相はこれからも増税についての基本的な考え方や使途を丁寧に説明し、国民の理解を得る努力をすべきである。ただ、その際に優先すべき税金の使途として高速道路の無料化を説いて、国民の支持を得られるだろうか。

巨額の財源を要する政権公約の見直しなしには、消費増税への国民の理解は得られない。そうした厳しい現実に、菅政権と民主党はもっと真剣に向き合ってもらいたい。

財源以外にも問題は多い。

無料化は自動車の利用を促進し、二酸化炭素(CO2)の発生量を増やしかねない。これはCO2大幅削減を図る民主党方針と矛盾する。

さらに、高速道路と並行して走る鉄道やフェリーなど公共交通機関の存続に影響が出て、交通弱者の足を奪う結果になりかねない。

実験では、こうしたプラスとマイナスの効果を総合的に判断すべきだ。

産経新聞 2010年07月09日

高速無料化 問われる政策理念の迷走

民主党の政権公約をめぐる迷走ぶりは「高速道路の原則無料化」も変わらない。わずか9カ月余りの政権運営でも、政策の基本線はブレ続けた。今回の選挙では、こうした政権党としての政策混乱の責任も厳しく判断されてしかるべきだ。

高速無料化は、もともと菅直人首相の持論であり、平成15年の総選挙以来、民主党が掲げてきた公約だ。昨年の衆院選では、首都高速と阪神高速を除く全国の高速道路については、24年度からの完全実施を目指すと宣言していた。

ところが、政権交代して初の今回公約には、期限らしきものは見当たらない。1・3兆円は下らないとされる無料化財源のめどが、いまだ立っていないからだ。今年度予算では1000億円を確保するのがやっとだった。

財源の手当てなしに大風呂敷を広げるのは同党の専売特許ともいえるが、なにより国民が戸惑うのは、料金制度自体が頻繁に見直されることだ。ことし4月には「土日休日1000円」など既存の各種割引制を廃止する代わり、車種別に一定の走行距離を超えれば料金を据え置く「上限制」の導入方針が打ち出された。

政府は先の国会で、このための法案を提出したが、これだと近距離中心の利用客には逆に割高となる。そればかりか、民主党側の要望で財源の一部を高速道路の建設に回すための方策だったことも分かり、国民の反発を買った。

法案は結局、継続審議となったものの、前原誠司国土交通相は選挙戦さなかの6日、一部について上限額を引き下げる方針を示した。見え透いた選挙対策だ。

先月28日には、社会実験という位置づけで無料化も一部区間ながらスタートした。しかし、対象は交通量が比較的少なく、区間も細切れの地方路線が大半だ。総延長も全体の2割以下にすぎない。

無料化で急増が懸念される渋滞やCO2排出量のほか、鉄道、フェリーといった関係する公共交通機関への影響、物流や観光業などへの経済波及効果を検証するという。だが、この限定区間で満足なデータが得られるかは疑問だ。

政府の説明で政策意図がさっぱり伝わってこないのは、バラマキ政策の典型といわれる「子ども手当」や「農家の戸別所得補償」も同じだ。こうした迷走する政策の本質を見抜く目も、今回選挙で国民は求められている。

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