教育公約 子供を甘やかしてないか

読売新聞 2010年07月06日

教育政策 信頼できる先生を育てるには

未来を担う子どもたちをどう育てるのか。参院選で教育政策は重要な論点だ。教育の中身に踏みこんだ、わかりやすい議論が必要である。

民主党は公約で、「社会全体で子どもを育てる国」づくりを掲げる。だが、具体策は極めて乏しい。義務教育段階では、「少人数学級の推進」や「学校現場での柔軟な学級編制、教職員配置」を記しただけだ。

「土曜授業の復活」や「理数教育の充実」など具体策を多く掲げた自民党とは対照的である。

民主党は昨夏の衆院選では、高校無償化をはじめ、教育委員会制度の見直しなどを列挙していた。今回の公約に盛り込まなかった政策も、「主張はそのまま生きている」としているが、有権者にはわかりにくい。

民主党政権が現在、最重要課題として取り組んでいるのが、「教員の質と数の改善」だ。

原則、大学4年間で教員免許を取得する教員養成課程を、大学院を含めた課程に延長すると同時に教員増も図るという構想だ。

これらは既に中央教育審議会で議論が進められている。教員養成課程の抜本改革を目指すものであり、論点は数多くある。

なぜ、教員を養成するのに4年間では足りないのか。養成課程の延長による経済的な負担増を嫌って、志望者が減りはしないか。教員増を教育内容の質の向上にどうつなげるのか――。

民主党は政権与党として、こうした疑問点にきちんとした回答を示すべきだろう。

公明党は公約で、いじめや不登校に対処する指導方法を学ぶ科目を、養成課程に加えるよう提言している。各党は、教員養成のあり方について論じ合ってほしい。

民主党は支持母体である日本教職員組合との関係も問われているが、公約では言及がない。

その加盟組織の北海道教職員組合を巡る政治資金規正法違反事件では、北教組や委員長代理の有罪が確定した。北教組が丸抱えで民主党の小林千代美・前衆院議員の選挙を支援した実態が判明し、小林氏は6月に辞職した。

自民党は、教員の政治的行為を制限する教育公務員特例法に罰則を設けることなどを公約に盛り込み、みんなの党も「教員の政治活動の全面禁止」を掲げている。

民主党の政策には日教組の主張と共通点が多い。教育の中立性をどう確保するのか、といった問題についても、与野党の議論が求められよう。

産経新聞 2010年07月03日

教育公約 子供を甘やかしてないか

参院選の公約で各党の教育の考え方はかなり異なる。子供たちの規範意識をどう育てるか、どんな教師を育成するか。学校や家庭教育の立て直しのため本当に必要な政策は何かを見極めたい。

先の国会後に北海道教職員組合(北教組)からの違法献金事件で民主党衆院議員が辞職した。教育の政治的中立をどう守るかは今回参院選の大きな争点である。

自民党はみんなの党との共同提案で、教員の政治活動に罰則規定を設ける教育公務員特例法改正案を提出したが、改正は見送りとなった。たちあがれ日本も、公約で「一部組合に左右されることのない、公正な学校運営」を強調している。事件を教訓に再発防止の施策を進めるのが当然だ。

同特例法改正について、鳩山由紀夫前首相はいったんは「真剣に検討したい」と明言していた。だが民主党の参院選の公約では、法改正や再発防止策などには触れられていない。

教員の立場を利用した選挙活動や特定団体の教育への介入はあってはならない。ところが、日教組出身の輿石東・民主党参院議員会長は「教育の政治的中立はありえない」と発言したことがある。今回参院選で民主党は、輿石氏のように教組や労働組合の組織内候補を10人以上抱える。支援団体に配慮して自浄能力が発揮できないとすれば党への信頼が揺らぐ。

民主党政権では、全国学力テストが縮小され、教員免許更新制見直しが検討されるなど支持団体の日教組に配慮した政策が進められている。これに対して自民党は学力テストでの全員参加の復活を求める。さらに、学力とともに「規範意識を兼ね備えた教育」を掲げ違いを明確にした。指導力不足の教員を教壇に立たせず、「がんばる教師を応援」するという。

民主党は高校無償化を推進するほか、大学生への奨学金など給付政策の拡充を公約している。しかし肝心な「どんな教師を育成し、学校教育を進めていくか」という理念が不明確だ。公約には子供たちへの施策を最優先する「チルドレン・ファースト」という表現があるが、子供を甘やかすばかりの教育ととられかねない。

主要政党のほかに、日本創新党が道徳教育の充実を挙げるなど教育政策は党の理念や特徴をよく表している。参院選を機会に各党の訴えを改めて吟味し、教育再生につながる議論を盛り上げたい。

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