未来を担う子どもたちをどう育てるのか。参院選で教育政策は重要な論点だ。教育の中身に踏みこんだ、わかりやすい議論が必要である。
民主党は公約で、「社会全体で子どもを育てる国」づくりを掲げる。だが、具体策は極めて乏しい。義務教育段階では、「少人数学級の推進」や「学校現場での柔軟な学級編制、教職員配置」を記しただけだ。
「土曜授業の復活」や「理数教育の充実」など具体策を多く掲げた自民党とは対照的である。
民主党は昨夏の衆院選では、高校無償化をはじめ、教育委員会制度の見直しなどを列挙していた。今回の公約に盛り込まなかった政策も、「主張はそのまま生きている」としているが、有権者にはわかりにくい。
民主党政権が現在、最重要課題として取り組んでいるのが、「教員の質と数の改善」だ。
原則、大学4年間で教員免許を取得する教員養成課程を、大学院を含めた課程に延長すると同時に教員増も図るという構想だ。
これらは既に中央教育審議会で議論が進められている。教員養成課程の抜本改革を目指すものであり、論点は数多くある。
なぜ、教員を養成するのに4年間では足りないのか。養成課程の延長による経済的な負担増を嫌って、志望者が減りはしないか。教員増を教育内容の質の向上にどうつなげるのか――。
民主党は政権与党として、こうした疑問点にきちんとした回答を示すべきだろう。
公明党は公約で、いじめや不登校に対処する指導方法を学ぶ科目を、養成課程に加えるよう提言している。各党は、教員養成のあり方について論じ合ってほしい。
民主党は支持母体である日本教職員組合との関係も問われているが、公約では言及がない。
その加盟組織の北海道教職員組合を巡る政治資金規正法違反事件では、北教組や委員長代理の有罪が確定した。北教組が丸抱えで民主党の小林千代美・前衆院議員の選挙を支援した実態が判明し、小林氏は6月に辞職した。
自民党は、教員の政治的行為を制限する教育公務員特例法に罰則を設けることなどを公約に盛り込み、みんなの党も「教員の政治活動の全面禁止」を掲げている。
民主党の政策には日教組の主張と共通点が多い。教育の中立性をどう確保するのか、といった問題についても、与野党の議論が求められよう。
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