参院選 議員定数削減 選挙制度を含め議論を

毎日新聞 2010年07月03日

参院選 議員定数削減 選挙制度を含め議論を

衆院定数など国会議員数の削減論議が争点のひとつとなっている。菅直人首相は実現に向けた関連法案を、早ければ選挙後の臨時国会に提出する意向を示した。

主要9党のうち6党が定数削減を公約に掲げるなど、削減数を競い合っている様相だ。議員自ら襟をただす姿勢のアピール合戦と言えるが2大政党化をどこまで徹底するかも含め、選挙制度のあり方と並行して議論する必要がある。

現在の定数は衆院480、参院242の計722だ。民主党は衆院で比例代表の定数80、参院は区分を示さず40程度の削減を掲げ、自民党は衆参定数を3年後に1割、6年後に3割削る案を公約に盛る。他党もみんなの党の場合、衆参合計で322の削減を主張している。

民主党は選挙後の税制抜本改革論議をにらんでいる。衆院議員1人あたり年間の歳費・期末手当や立法事務費、文書通信交通滞在費の総額は約4100万円だ。07年の政府答弁書などでは国会議員1人あたりに要する年間経費は約3億円との試算もある。自ら身を削ることで、国民の理解を得る狙いがあるのだろう。

だが、衆院定数の大幅削減を論じるならば、どんな選挙制度と政治の将来像を描いているかという要素は無視できない。

民主党の主張通り衆院比例定数を80削れば定数は小選挙区300、比例代表100となる。少数政党は従来以上に議席を得にくくなり、2大政党化に拍車がかかることが予想される。このため民主党の積極姿勢については、選挙後の連立組み替えなども視野に入れた少数政党への揺さぶりとの見方もある。

一方、少数政党からは自らの存立基盤を脅かす比例定数の削減に反対したり、小選挙区制の見直しを求める声が目立つ。実際に削減論議が動き出せばこうした利害関係が絡み合い、激しい対立を呼ぶことは確実だ。さらなる2大政党化か、それとも多党化を志向するか、各党は立場を明確にしたうえで議論にのぞまなければならない。

また、これとは別に衆参両院は「1票の格差」是正という課題に優先して取り組む必要がある。選挙前に各党が「削減」を大合唱したからといって、すんなりと議論が進む状況とは思えない。

日本の衆院について言えば、人口あたりの議員数が欧州諸国の下院などに比べ決して多いわけではない。歳費に見合う仕事をさせるなら、国会の閉会期間の大幅短縮なども課題だろう。単純な経費削減ではなく、議会の質を向上させる方策を多角的に論じるべきである。

産経新聞 2010年07月04日

定数削減公約 「わが身削る」姿をみせよ

政治家たちは率先して「身を削る」ことができるのか。それを端的に示す国会議員の定数削減をめぐり、多くの政党が競うように削減案を並べている。本気で実行することが問われている。

菅直人首相は消費税増税を争点化した。そうした以上、国民に負担を強いる政治の側が範を垂れなければ、国民がそっぽを向くのは間違いない。

問題は、各党とも定数削減の道筋を明確に示していないことだ。昨年の衆院選でも、公約に掲げながら選挙後は手付かずだ。その反省もみられない。国会議員が自らの身を切ることができるのか、国民は強い疑問を抱いていることを認識すべきである。

民主党は「参院40程度削減、衆院比例代表80削減」を掲げた。首相は「次期国会に衆院定数削減の関連法案を提出して成立を目指す」というが実現可能なのか。

与野党協議の場を設け、次期国政選挙からの新定数導入を確認するなどの段取りを踏み、削減への流れを確実にすべきだ。国民向けのポーズでは許されない。

自民党は両院の定数計722を3年後に650、6年後に500に減らすという。みんなの党は「衆院300、参院100」、たちあがれ日本は「衆院400、参院200」、新党改革は「両院半減」を掲げた。これら各党は比例代表の削減幅を詰めるべきだ。

公明党は衆院定数削減に言及せず、共産、社民両党は削減に反対だ。より多くの政党の合意が望ましいが、既成政党が自党に不利になることを理由に協議に加わらないなら残念だ。有権者は定数削減に積極的かどうかに厳しい視線を向けている。

参院は「一票の格差」をめぐる最高裁判決で選挙制度の見直しも求められている。当面の定数削減に加え、衆参両院のあり方や選挙制度を憲法改正と合わせて検討することが避けられない。この問題への対応も各党は示すべきだ。

選挙戦のさなか、建設費など総事業費約1800億円に上る新しい衆参議員会館3棟の完成が話題となった。個室は従来の2・5倍の面積で、現行の定数分だけ用意された。定数削減が本当に行われるのか疑わしい。

当選月の議員歳費の日割り支給など、ようやく一部を見直す動きもあるが、まだ諸手当などの特権は多い。国会議員は自らムダの仕分けに取り組むべきである。

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