基本であり原則であるとしても、あまりに具体論を欠いている。
政府の「新年金制度に関する検討会」が、創設を目指す新たな制度について打ち出した、7項目の「基本原則」のことだ。
制度設計面では「全国民の年金の一元化」「最低限の年金額の保障」「負担と給付の明確化」「持続可能な制度」を掲げた。さらに「年金記録の確実な管理」「保険料の確実な徴収」「国民的議論での制度設計」を謳っている。
会社員は厚生年金、公務員は共済年金、自営業者などは国民年金と、職業で違う仕組みを分かりやすくし、制度の信頼を回復するには、もっともな7原則である。
だが踏み込み不足だ。何より、新年金の主たる財源は税金か保険料か、という基本的論点にさえ、方向性を示していない。
民主党の参院選公約には、月7万円の最低保障年金の創設が掲げられている。そして、昨年の衆院選の政権公約(マニフェスト)には「消費税を財源とする」と明記されていた。
にもかかわらず、基本原則は最低保障の金額など新制度の具体像を明示せず、必要財源も「安定的に確保する」という当たり前の表現にとどめた。
政府は「与野党協議を呼びかけるため、入り口で賛否が割れそうな論点は避けた」と説明する。
しかし、参院選のさなかに消費税率の引き上げ幅などに直結する中身を示すのは得策でない、との計算も働いたのではないか。
確かに、年金改革は政争の具とせず、与野党が協力しなければならないものだ。
ただし、内容に乏しい基本原則を示して改革に取り組んでいるとの姿勢をアピールしつつ、「後は超党派協議の場で」と野党に呼びかけるだけでは年金制度の論議は深まるまい。
長妻厚生労働相は、民主党が掲げてきた「消費税を財源とする月7万円の最低保障年金の創設」という改革案は引き続き主張し続ける、と強調している。
だが、政権について10か月近くたつというのに、民主党からはマニフェストより詳しい制度設計は示されないままだ。
選挙戦ではまず、与党ができるだけ具体的な年金改革案を示し、どれだけの消費税が必要になるかなど、実現するためのハードルについても有権者に誠実に説かなくてはならない。
そこから始まる論戦こそ、与野党協議の下地となるだろう。
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