岡田ジャパン 魂に刻んだ「青」の感動

朝日新聞 2010年07月01日

W杯日本惜敗 人々の心に決めたゴール

2010年に自分は何をしていただろうか。ずっと後になって思い出そうとするとき、多くの人がサッカーのワールドカップ(W杯)決勝トーナメントの、29日のゲームを手がかりにするかも知れない。

「あれは、日本がパラグアイと死闘を演じた年だった」というふうに。

南アフリカ・プレトリアのスタジアムで、日本中で、いったいどれほどの人々が、延長戦にまでもつれ込んだ120分の攻防に見入っただろう。

日本代表はパラグアイにPK戦の末敗れた。初の8強の夢はついえた。しかし、南米の試合巧者とぎりぎりまで競り合い、堅守を維持しつつも攻めの姿勢を貫いた。激しくひたむきに、選手たちは持てる力を振り絞った。

ままならぬ就職活動、リストラの嵐がおさまらない企業社会……。出口が見えない状況に社会が迷い込んでいる今、死力を尽くす選手の姿は、深く人々の心に刻み込まれたのではないか。

あと一歩だった。選手や岡田監督らには無念の思いがあるだろう。だが、敗戦なのに、すがすがしささえ残る闘いぶりだった。

1次リーグ初戦でアフリカの強豪、カメルーンに競り勝った。本田選手が挙げた1点を、献身的な守備で守りきった。世界ランキング4位のオランダに屈しはしたが、0―1の惜敗。デンマーク戦では本田、遠藤両選手の芸術的なフリーキックなどで、3―1と完勝した。英国のBBC放送は「感動的な日本」と称賛した。

快進撃に日本中が熱狂していった。W杯直前の強化試合で4連敗し、日本代表は土壇場に追い込まれていたから、なおさらだった。

選手に声援を送る人々の胸の中にあったのは、劣勢の中でも自らを信じ、闘い続けてきた選手たちへの深い共感だろう。年齢や性別を超えて、ここまで日本中が一体感を感じるような出来事は、久しくなかった。

岡田監督は昨年、日本外国特派員協会での記者会見でこう話した。

「南アでの結果によっては、おそらくいろいろな影響が出る。成功すれば日本も自信を持つだろうし、失敗すれば景気が悪くなるかも知れない」

監督は「4強」を掲げ、「世界を驚かす」と言った。途方もない目標だと誰もが思った。選手でさえ、現実の目標として4強を思い描こうとした者は当初、数人だったという。

だが、設定したハードルが高かったからこそ、選手は自らを極限まで追い込めたのだ。パラグアイ戦後の、大久保選手の言葉が象徴的だ。「限界はないんだって思った」

息苦しい時代がスポーツに求めるものを、選手たちは確かに届けた。人々の心のゴールに、みごとなシュートを決めた。

毎日新聞 2010年07月01日

岡田ジャパン 魂に刻んだ「青」の感動

延長を含む120分の攻防では決着せず、PK戦の末、「侍ブルー」の戦いが幕を閉じた。南アフリカで開かれているサッカー・ワールドカップ(W杯)決勝トーナメント1回戦。日本は南米代表のパラグアイ相手に互角の戦いを演じたが、惜しくもベスト8進出の夢を断たれた。

日本時間29日午後11時開始という深夜の時間帯だったにもかかわらず、中継したTBSテレビの平均視聴率は57・3%(関東地区、ビデオリサーチ調べ)と驚異的な数字を記録し、関心の高さを物語った。

今回の日本代表は、大会前の期待値が低かった分、日本のファンの驚きと感動は大きかったようだ。

開幕前の強化試合で4連敗。その間には岡田武史監督が進退を口にする一幕もあった。だが本番のW杯に入ると岡田監督の思いきった選手起用がズバリ的中した。FWに起用した本田圭佑選手が世界レベルの技を披露。若いGK・川島永嗣選手も再三の好守でチームの危機を救い、海外でのW杯では初めての決勝トーナメント進出を果たした。

日本代表の戦いぶりで特徴的だったのは、ひたむきにボールを追いかける選手の姿だった。控えメンバーも含め「全員で戦う」姿勢も見て取れた。そのことが見る者の魂を揺さぶり、「ベスト16」の結果以上に多くの感動を心に刻み込んだ。

何よりうれしいのは、日本中を明るくしてくれたことだ。とりわけ同世代の多くの若者が就職難や派遣切りなどで苦しむ中、選手たちは体格のハンディを克服し、世界の強豪と互角に戦う姿を見せてくれた。年上の世代には「日本の若者もやるじゃないか」と頼もしく映った。

だが、冷静にベスト8に勝ち残ったチームの顔ぶれを見ると、ここに日本代表が加わるのは、まだ「家賃が高い」という印象をぬぐえない。日本がW杯に初出場したのは98年のフランス大会。わずか12年前だ。80年前に始まった全19回のW杯の歴史で、日本が参加したのは最近の4大会に過ぎない。

大会前、岡田監督は「世界を驚かす」と宣言し、「4強」の目標を掲げた。決勝トーナメント進出を果たしたことで「世界を驚かす」ことには成功したかもしれないが、イタリアやフランスの場合、1次リーグで「負けた」ことに世界は驚いた。格の違いは歴然としている。

しかし、悲観することはない。日本サッカーの「伸びしろ」は十分に残されていると考えたい。4年後のW杯に向け、どう成長していくか。新たな楽しみが生まれた。

最後に岡田監督と選手をはじめチーム全員の健闘を心からねぎらい、感謝の言葉を贈りたい。

読売新聞 2010年07月01日

W杯日本敗退 選手の奮闘に元気をもらった

日本のサッカー史上、初めてとなるベスト8には、またしても手が届かなかった。しかし、日本代表の選手たちは、最高峰の舞台で、力を存分に発揮した。健闘をたたえたい。

サッカーのワールドカップ(W杯)南アフリカ大会の決勝トーナメント1回戦で、日本はPK戦の末、パラグアイに敗れた。2002年の日韓大会と同じ成績で、日本のW杯挑戦は終わった。

堅守速攻が身上のパラグアイに対し、日本は、中沢佑二選手、駒野友一選手ら守備陣の体を張った守りでわたりあった。

延長戦を含め120分を戦った末の紙一重の敗戦だ。PKを外した駒野選手は悔しいだろうが、胸を張って帰国してほしい。

W杯の計4戦、日本代表は1戦ごとに自信を得て、強くなった。チーム一丸となって強豪国に挑む姿には、頼もしさを感じた。選手の持ち味を引き出した岡田武史監督の采配(さいはい)も奏功した。

日本の存在感を、世界に向かって十分に示したといえる。

だが、世界の壁は、やはり高かった。岡田監督は、「まだまだ、そんな簡単じゃないよと言われているんだと思う」と語った。

日本の守備力は、W杯でも通用したが、明らかに足りないのは得点力だ。少ないチャンスをものにすることができなかった。4年後の次回大会までの宿題である。

日本代表の試合の度に、列島は大いに盛り上がった。パラグアイ戦のテレビ中継の瞬間最高視聴率は64・9%に達した。

みんなで日本代表を応援する一体感を味わい、選手たちから元気をもらった人も多いのでないか。スポーツが持つ力の大きさを改めて実感する。

前回のドイツ大会で惨敗して以降、日本代表の戦績は上がらず、スター不在の代表チームへの関心も薄れがちだった。海外チームとの親善試合でも、スタンドには空席が目立った。

しかし、代表チームが強ければ、注目度も高くなる。本田圭佑選手らの名は、W杯を通して一気に知れ渡ったはずだ。

日本は22年のW杯招致に名乗りを上げているが、今回のW杯は、機運を高めるきっかけになるかもしれない。

選手たちは、この経験を糧に、Jリーグや海外のチームでさらに技を磨き、日本サッカーのレベルアップにつなげてほしい。

W杯でのベスト8、さらに、今回の目標だったベスト4の夢は、4年後までとっておこう。

産経新聞 2010年07月01日

8強ならず 世界に示した日本の誇り

勝たせてやりたい。いや、勝ち抜きたい。そう思って120分余、テレビ観戦した人が大半だったのではないか。

サッカーのワールドカップ(W杯)南アフリカ大会の決勝トーナメント1回戦で日本はパラグアイと対戦し、延長戦でも0−0と勝負がつかず、PK戦の末に惜しくも敗れた。W杯初となる8強入りは果たせなかった。

しかし、日本代表選手たちのチームワーク最優先の熱い戦いぶりに拍手をおくりたい。

テレビ中継の平均視聴率は57・3%(関東地区)だった。国技の大相撲が賭博問題で存亡の危機に瀕(ひん)しているときだけに、日本サッカー陣の奮闘が光る。

日本は持ち前の運動量と組織的な守備力を武器に、身の丈に合った日本流のサッカーを貫いた。パラグアイ戦では再三ゴール前で猛攻を浴びるピンチに見舞われたが、そのつど必死の守備でしのいだ。文字通り、体を張った守りを見せた中沢佑二選手のコメントが印象深い。

「世界とここまで対等に戦えたことはなかった。胸を張って帰りたい」

オリンピックの金メダル獲得数をみると、2008年北京五輪では1位中国、2位米国などと、経済・軍事大国が上位を占める傾向が強い。しかし、サッカーでは様相が大きく異なる。

例えばW杯の米国は、決勝トーナメント1回戦でガーナに敗れた。中国となると、早々と地域予選で敗退している。今回の8強にはアルゼンチン、ブラジル、ウルグアイ、パラグアイの南米勢4カ国が入ったが、主要8カ国で進出したのはドイツだけだ。

「サッカー国力」で日本はまだ新興国を脱出したところかもしれないが、発展の余地は十分だ。14年ブラジル大会では、さらに日本流サッカーを進化させ、世界をあっといわせてほしい。

W杯が始まって約3週間、私たちは不思議な高揚感に包まれていた。顔に日の丸を描いて応援する若者、「君が代」を声を張り上げて歌うサポーターなど、素直に日本の国を誇る気持ちが伝わってくるからだろう。

すでに韓国と共同で02年W杯を開催した経験がある日本は、22年大会の単独招致を目指している。今年12月の開催地決定に向け、日本人の心を一つにするサッカー熱の高まりに期待したい。

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