中国と台湾が、「経済協力枠組み協定(ECFA)」に調印した。事実上の自由貿易協定(FTA)といえる。
半世紀以上、政治的に対立して来た中台が、経済面では、一段の連携強化に踏み出した。中台の経済緊密化は、日本や韓国の対中経済戦略にも大きな影響を与えよう。
韓国は、すでに中国とのFTA締結に動き出し、先のカナダでの中韓首脳会談で、締結に向けた協議を始めることで合意した。
中国と東南アジア諸国とのFTAは年初に発効済みだ。経済関係強化をアジア全体に広げることが域内の繁栄と安定にも役立つ。
日中韓3か国では、FTAの産官学共同研究が始まった。FTAで出遅れる日本は、アジア諸国・地域との連携を深める通商戦略を描かねばならない。
ECFAでは、中国が台湾産の農産品や機械、自動車部品など539品目を、台湾が中国産の石油化学原料など267品目をそれぞれ関税撤廃の対象とした。段階的に関税率を削減し、2013年1月から完全にゼロとする。
サービス分野でも、銀行の相互開設などが決まり、知的財産権保護協力協定にも調印した。
今後、双方は関税撤廃の対象品目を拡大し、投資保護協定の調印も目指し協議を続ける。
ECFAの調印は、中台双方の歩み寄りの産物といえる。
台湾側には、金融危機後の不況からいち早く脱却した中国市場への輸出拡大などで、経済を活性化させる狙いがあった。
人気が陰り気味の馬英九政権には、景気浮揚を図り、11月の5大市長選や12年の次期総統選を有利に運びたいとの計算もあろう。
一方の中国は、台湾との統一という大きな課題を抱えている。そのためには、経済での連携が先決ということだろう。市場開放で大きく譲歩したのも、そうした戦略に基づくものと見られる。
台湾は今後、日米や欧州諸国などともFTA交渉に入る方針だ。しかし、「台湾は中国の一部」とする中国は、主権国家のように台湾が振る舞うことを認めない考えで、今後、中台関係がぎくしゃくする可能性がある。
一方、中国が台湾に向けて多数のミサイルを配備するなど、海峡を挟んで中台が軍事的に対峙する状況に変わりはない。
不測の事態を避けるためには、信頼を醸成する措置が必要だが、今回のECFAが緊張緩和に役立つことを期待したい。
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