大相撲を揺るがす野球賭博問題が、刑事事件に発展した。
大関琴光喜から野球賭博に関する口止め料を脅し取ったとして、警視庁が元幕下力士を恐喝容疑で逮捕した。
この元力士に350万円を支払ったとされる琴光喜は、恐喝の被害者の立場だ。だが、自身も野球賭博という犯罪に手を染めていたことを認めている。
警視庁は、元力士への取り調べを通して、琴光喜ら力士の関与についても捜査を進めるとみられる。全容解明を望みたい。
琴光喜に端を発した角界の野球賭博汚染は底なしの様相である。雅山、豊ノ島、琴奨菊、豪栄道、普天王――。人気力士の関与が次々と明らかになっている。
日本人力士は、肝心の土俵では外国人力士の陰で精彩を欠いている。ところが、土俵外の不祥事で注目されるという事態を嘆くファンは多いだろう。
現役力士だけではない。大嶽親方(元関脇貴闘力)、時津風親方(元幕内時津海)も野球賭博にかかわっていたことが判明した。
弟子を教育し、日本相撲協会の運営を担うべき親方までが関与していたとは、あきれるばかりである。賭博汚染の根は、それだけ深いということだ。
相撲協会は、弁護士など外部の10人で構成する特別調査委員会を設置した。現在、野球賭博への関与を申告した31人の力士らへの聴取を進めている。
ただ、31人は、あくまでも自己申告してきた人数に過ぎない。それ以外にもかかわった力士や親方はいないのかどうか、徹底した調査を実施してほしい。
名古屋場所の初日が7月11日に迫る中、不祥事続きの相撲界を見るファンの目は厳しい。
琴光喜が賭博への関与を認めたことが報じられた14日以降、相撲中継を行っているNHKには約3400件の電話やメールなどが寄せられている。そのうち、「中継すべきではない」との意見が6割以上を占めているという。
NHKは、「中継をやめることも選択肢の一つ」としている。
名古屋場所を開催するかどうかについて、相撲協会は近く開く臨時理事会で判断する方針だ。
開催するには、協会としてファンが納得するけじめをつけることが前提となろう。賭博汚染の全容を公表し、関与した力士や親方に厳正な処分を下す必要がある。
相撲協会は、存亡の危機にあることを忘れてはならない。
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