日航の外資導入 自力再建の努力も怠るな

毎日新聞 2009年09月16日

日航と外資交渉 抜本策として十分か

再建中の日本航空が15日、米大手のデルタ航空、アメリカン航空とそれぞれ進めている資本参加を前提にした提携交渉について、「10月半ばまでに結論を出す」と表明した。

運航トラブルによる旅客離れや燃料費上昇にあえいだ日航は07年初め、4300人削減や低採算路線廃止、子会社売却などを柱にした新経営計画をまとめた。ところが効果は1年あまりしか続かなかった。

08年3月期(連結)で169億円の最終利益をあげて3年ぶりの黒字になったが、リーマン・ショックなどで09年3月期は630億円の損失、さらに10年3月期も630億円の損失見通しだ。このため、日本政策投資銀行とメガバンク3行から1000億円の政府保証付き融資を受けたが、追加融資を受ける条件として、学者らによる「有識者会議」をお目付け役にした抜本的な再建策づくりを求められていた。

外資との交渉は、こうした窮地に立つ中で浮上した。共同運航拡大で路線網を可能な限り維持しながらコストを削減する一方、財務基盤の強化で追加融資に向けた信用補完を狙っている。しかし、伝えられる500億円程度の資本増強と共同運航拡大では、抜本策とは言えない。

このため、日航の西松遥社長は15日、11年度までに6800人の削減や国際線25路線程度の廃止・減便の方針を示した。さらに「手厚すぎる」との批判がある企業年金給付の引き下げ、路線を廃止した営業拠点の撤退などにも踏み込む。いずれも労働組合や地方自治体、OBなどの強い抵抗が予想されるが、今月末までに最終計画をまとめる考えだ。

日航経営陣には、外資導入によって経営に厳しい目が入り、長年のタブーとも言える部分に切り込めるとの読みがあるのかもしれない。だが、それは経営力の限界を認め、自力再建をあきらめたに等しい。今後、羽田、成田両空港の発着枠の拡大で、航空業界の競争は激しくなるだけに、外圧頼みの対応は日航の今後をますます危うくし、国益を損なう恐れもある。

完全民営化からまもなく22年。日航には「親方日の丸」の言葉がついてまわる。しかし、日航自らの努力不足だけが原因ではない。

国、地方の政治家は実績ほしさに地方空港をどんどん建設して、採算軽視の運航を日航に押しつけた。有力者の口利きによる情実採用が横行し、そうした風土が社内の求心力と統治力を低下させた。日航の経営問題は、「フラッグキャリア」(国を代表する航空会社)の名のもとに、よってたかって都合のいいように利用し、もてあそんできたツケでもあることを忘れてはならない。

読売新聞 2009年09月13日

日航再建 外資導入で活路は開けるか

経営再建中の日本航空が、米欧の大手航空会社2社と資本・業務提携交渉に入った。

世界最大の航空会社である米デルタ航空と、欧州最大手のエールフランス―KLMから出資を受け、国際線の共同運航でも協力する方向だ。

交渉がまとまれば、日本を代表する航空会社が初めて外国の航空会社の支援を仰ぐことになる。

日航は、昨年秋以降の景気低迷や新型インフルエンザ流行に伴う旅客減で業績が悪化し、今年4~6月期の最終赤字は990億円になった。2010年3月期も630億円の赤字となる見通しだ。

6月には日本政策投資銀行など主要取引銀行から1000億円の融資を受け、資金不足を解消したが、追加融資は大胆なリストラが条件とされた。

日航は、国土交通省の監視下で9月末までに新たな再建策の提示を迫られている。2社との提携は、その柱として浮上した。

外資を受け入れることで、財務基盤を強化し、追加融資を引き出しやすくする。

同時に、米欧に路線網を持つ2社と共同運航で手を組み、利用者の利便の向上を図る。自前の不採算路線も廃止し、コストを削減する狙いがある。

外資と提携することにより、日航特有の「親方日の丸」の体質を改める契機としたい、との判断もあろう。

だが、航空法の規定で、外資は日航に3分の1未満しか出資できない。2社の出資額も不明で、財務基盤の強化にどこまでつながるかの見通しも立っていない。

2社以外の提携相手を模索する動きもある。提携交渉の行方には曲折も予想される。

取引先金融機関の協力も欠かせない。そのためには、日航の一層のリストラが求められる。

日航は10月以降、国内外の16路線を廃止・減便し、不採算の航空貨物事業を日本郵船と統合する方針を打ち出したが、いずれも収益改善効果は限られている。

最大の課題は、企業年金給付の引き下げが不透明になっていることだ。実現しなければ880億円を見込むコストの削減が不可能になる。反対するOBらの説得を急ぐべきだ。

日航への融資の一部は国が返済を保証しており、再建に失敗すればそのツケは国民に回る。今週発足する民主党新政権は、この問題への対応を明確にしていないが、国益を守る観点から日航再建に取り組む必要がある。

産経新聞 2009年09月13日

日航の外資導入 自力再建の努力も怠るな

経営再建中の日本航空が、世界最大の航空会社である米デルタ航空と資本参加を前提とする提携交渉に入った。

デルタ側は経営参加で厳しい条件を付けてくる可能性があるが、合意が成立すれば今月中の取りまとめを迫られている同社の経営改善計画には、とりあえずのめどが立つことになる。

日本を代表する航空会社への外資参入には、安全保障上の懸念を指摘する声もある。とはいえ世界的な航空再編が進む中で、外資導入は避けて通れない選択ともいえる。国土交通省も今回の提携には前向きという。

日航は昭和62年の民営化を経て、長く業界トップの座に君臨してきた。しかし、相次ぐ運航トラブルや不況、テロなどによる世界的な航空需要の落ち込みで業績が急速に悪化し、平成21年4~6月期決算では、税引き後利益が990億円の赤字を計上するまでに追い込まれている。

日本政策投資銀行や民間銀行団が6月に計1000億円を融資、国も債務保証を付けるなど異例の支援体制が取られている。

日航は今月末をめどに、さらなる人員の大幅削減や不採算路線の廃止・減便、企業年金のカットを含めた抜本的リストラ案をまとめる方針だ。しかし、これらの策には労組などの抵抗も強く、思惑通りに進むか予断を許さないのが実情である。今回の外資導入は、自力の再建策だけでは不十分と判断した結果だともいえる。

デルタへの出資要請は数百億円規模とされ、実現した場合、日航の筆頭株主になる。厳しい経営方針で知られる外資の経営参画で人員削減、給与引き下げなどのリストラが急ピッチで進む可能性がある。日航はエールフランス−KLMにも出資を要請しており、共同運航の拡大で機材や人材の効率的運用も期待できそうだ。

ただ、デルタ自身も経営状態は決して盤石とはいいがたい。日本の航空会社には、外資が株の3分の1未満しか持てない規制があることも今後の交渉で足かせになる事態が予想される。

いずれにせよ、外資頼みの再建には限界がある。安全への配慮も忘れてはならない。経営危機の根本には民営化後も「親方日の丸」意識を払拭(ふっしょく)できないでいる日航自身の企業体質がある。自らがここに抜本的メスを入れない限り、再建の道は甘くないだろう。

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