国の屋台骨が傾きかけている。そう感じる人は少なくないだろう。
昨秋、政権交代を果たした民主党政権は、政治を変えるどころか大混乱を招いてきた。
日本経済もデフレに足をとられ、なかなか明るい展望を見いだすことができない。
24日、参院選が公示された。
各政党は有権者の不安を払拭するためにも、景気を着実に回復させる経済政策や、日米同盟再構築に向けた外交・安保政策で明確な処方箋を示してもらいたい。
◆公約の真贋を見極めて◆
選挙は、9政党が名乗りを上げ、混戦模様だ。有権者は、各党が掲げた公約や擁立した候補者が本物なのか、その真贋を、しっかり見極めてほしい。
鳩山前首相は、「政治とカネ」の問題で国民の信頼を失い、米軍普天間飛行場移設問題では対米関係を大きく傷つけた。その結果、首相に就任してから8か月余りで退陣に追い込まれ、代わって菅首相が登場した。
今回の選挙でまず俎上にのせるべきは、民主党内閣の実績や政権運営のあり方だろう。
昨年の衆院選の政権公約(マニフェスト)でうたわれた子ども手当などは、財源不足から、早速見直しを迫られている。とはいえ、これらバラマキ政策については、何の総括もなされていない。
鳩山前首相と民主党の小沢前幹事長の「政治とカネ」の問題も、解明には程遠い状態だ。
菅政権は一体、前政権と何がどう違うのか。
バラマキ政策や事業仕分けの手法にみられるポピュリズム(大衆迎合主義)、政治主導という名の官僚たたき、巨額の資金が動く金権政治、「小沢独裁」に沈黙した非民主的な党の体質、「親中国・米国離れ」志向、「数の力」を背景にした強引な国会運営――。
菅首相は前内閣の副総理・財務相だった。前政権を特徴づけるこうした問題と決別したのか。
本来なら民主党は、衆院解散・総選挙で信を問うべきだった。それを避けた以上、これらについて説明を尽くさなければ、有権者は判断のしようがあるまい。
消費税率引き上げ問題は、菅新政権の実行力の試金石だ。
菅首相は、消費税を含む税制の抜本改革に関する超党派の協議を呼びかけ、消費税率の「10%」への引き上げに言及した。
◆消費税論議を深めよ◆
国家財政の逼迫、社会保障予算の膨張を考えれば、引き上げは当然のことである。自民党が「10%」で先手をとり民主党が追いかけた形だが、引き上げを正面から論じようとする姿勢は、責任政党としていずれも評価できる。
ただ、手のひらを返したような民主党の方針転換については、前政権の失政を隠すための「目眩まし」などと評されている。
菅首相は、消費税率引き上げの理由と使途などを丁寧に説明し、合わせて税制全般の改革像を早急に提示しなければならない。
消費税率上げに反対を表明している政党は、税制論議を深める上でも、現実的な「対案」を示す必要がある。
今回の参院選の勝敗は、民主、国民新両党の連立政権の枠組みに変更をもたらし、政界再編の契機になる可能性もある。
民主、自民の2大政党の間で「第3極」を掲げる新党は、多数の候補者を擁立した。その戦いぶりは2大政党の戦績に影響を与えずにはおかないだろう。
民主党は、衆院に加えて参院でも、非改選を含めて過半数を制し、単独政権を手中にできるか。
それが果たせない場合は、連立与党で過半数を確保できるかどうかが焦点だ。仮に、過半数割れになれば、「第3極」政党の一部などとの連携もありえよう。
自民党は、与党の過半数阻止を目標にあげている。衆参両院で多数派が異なる「ねじれ国会」として、民主党主導の政治にブレーキをかける狙いがあるのだろう。
どんな「政権のかたち」が望ましいのか。有権者は、そうしたことも念頭に置いて、1票を行使することが求められる。
◆参院のあり方も課題だ◆
参院が「良識の府」でなく「政局の府」と言われて久しい。
民主党は、菅内閣の支持率が高いうちの参院選を望み、早々に国会を閉じた。参院では野党提出の首相問責決議案の採決をしなかった。これでは「良識」が泣く。
前回参院選で第1党になった民主党は、参院で政府提出法案や人事案を否決して、当時の自民、公明連立政権を揺さぶり、政治を混乱に陥れたこともある。
参院が政局の行方を左右するようなことがないよう、第二院としては強すぎる権限を見直した方がいいとの意見もある。各政党は参院の在り方も論じ合うべきだ。
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