財政健全化の困難さが改めて浮き彫りになったということだろう。
政府は22日、主要国で最悪の財政を立て直すための「財政運営戦略」を閣議決定した。
2020年度に国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)を黒字化するというのが最大の目標だが、歳出抑制に加え、消費税率を10%に引き上げたとしても達成は難しいことを示す試算も同時に示された。
あくまで目標達成を目指し、さらなる消費税率の引き上げや歳出削減などに踏み込んでいくのか。菅首相は、極めて重い宿題を背負い込んだといえよう。
財政健全化の目標がないのは、主要国で鳩山前内閣の日本だけだった。菅首相は、週末の主要国首脳会議(サミット)で目標を説明し理解を得る考えなのだろう。
目標はまず、国内総生産(GDP)に対する国と地方の長期債務の割合を、11年後の21年度以降、安定的に引き下げるとした。
この割合は、財政状況を国際比較する際の基準となっており、日本は現在1・8倍だ。財政危機のギリシャを上回っている。日本の国債への信認を維持する上でも、引き下げは必須の条件である。
その前段階として、現在、30兆円を超すPBの赤字額を、15年度に半減させ、20年度に黒字化させるとしている。
加えて、政府の新施策は財源を見つけてから実施する、という原則も打ち出された。
これは当然である。鳩山前内閣が編成した10年度予算は、昨年の衆院選での民主党政権公約(マニフェスト)に基づく、財源を考えないバラマキ施策が多い。
今回、こうした原則を掲げた以上、菅内閣はいまなお残るバラマキ政策を大胆に整理していかなければならない。
問題は、肝心のPBの赤字半減と黒字化に、早くも黄信号がともされていることだ。
内閣府によると、名目成長率が1%台後半の「慎重シナリオ」で推移すれば、20年度はなお約22兆円の赤字だ。3%台の「成長戦略シナリオ」でも、約14兆円の赤字が残る。
試算は消費税率の引き上げを想定していないが、菅首相が言及するように、2~3年後に税率10%を実現したとしても、どちらも黒字にはならない計算だ。
しかし、税率を13~14%にすれば、目標は達成できそうだ。菅首相はこうした数値を勘案しながら財政の舵を取る必要があろう。
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