党首討論 消費税の使途を知りたい

朝日新聞 2010年06月23日

党首討論 増税の説明にもっと理を

消費税率10%に言及した菅直人首相の意気込みは立派だが、明快さを欠く。参院選の争点に急浮上した以上、増税分をどう使うかといった説明も堂々とやってほしい。

きのうの9党党首による討論会も、消費税をめぐる応酬が焦点だった。税率アップによる増収分の使途について、首相は「社会保障に回すべき消費税が足りないので、今は赤字国債で埋めている。このままでは財政が破綻(はたん)してしまうので、この分をまかなう」と強調した。

だが、他の党首から「年金の財源に使うとした過去の説明と違う」「説明が足りない」などと突っ込まれた。首相は「財政資金を介護に使えば雇用も増える」といった中途半端な受け答えにとどまった。

こんな状態ではいけない。首相は参院選を通じ、増税分の使途を含む大筋を掘り下げてわかりやすく説明し、有権者の納得を取り付けるため力を尽くさなければならない。

とりわけ重要なのは、首相自身が掲げた「強い経済、強い財政、強い社会保障」と消費増税の関係である。増税で財政赤字を減らすだけでなく、経済成長を損なわず、社会保障の強化もできるという有機的な戦略の具体像を明らかにすべきである。

首相は「増税しても景気回復は可能だ」と唱え、名目3%成長を目標に据えた。だが、国民の理解を得るには、より具体的なシナリオを示す必要がある。例えば、消費増税分が回る介護分野で雇用拡大、賃金改善、サービス向上や産業の発展をいかに実現できるのか。展望を示してほしい。

消費税率の引き上げで「強い財政」を築く道筋もわかりにくい。

政府はきのう、2020年度までの財政健全化方針を定めた財政運営戦略と、向こう3年間の中期財政フレームを閣議決定した。

国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)の赤字を15年度には国内総生産(GDP)比で現状の半分に減らし、20年度には黒字化することを目指す。13年度までの国と地方の一般歳出の上限を今年度と同じ71兆円とし、新規国債の発行上限も44兆円余とすることに決めた。

新規事業を始める場合には新規財源の確保か旧来事業の終了を条件とするルールも盛り込まれた。ところが、目標をいかに達成するかという肝心の点が抜け落ちている。

首相は消費税率引き上げが早くて2~3年後と述べた。それにしても15年の赤字半減目標達成への大まかな展望ぐらいは示すべきではないか。納税者はもちろん、財政赤字が大きい国の債務不履行に警戒感を高めている世界の金融市場も、確かな展望に裏打ちされた政治的決意を知りたいところだ。

読売新聞 2010年06月23日

9党首討論会 負担伴う政策も率直に議論を

国政選挙は、日本の将来にかかわる重要政策を論じる格好の機会だ。各政党は、税制改革や成長戦略、外交などの論点を有権者に分かりやすく示してもらいたい。

24日の参院選公示を前に、日本記者クラブ主催の9党党首による討論会が開かれた。

消費税について、菅首相は、社会保障費の財源を赤字国債に頼る現状を是正し、国債の増加に歯止めをかけるため、税率引き上げの必要性を訴えた。超党派による議論の開始も改めて呼びかけた。

消費税率10%への引き上げを公約に掲げる自民党の谷垣総裁は、議論の前提として子ども手当や高速道路無料化など民主党政権公約の「無駄」の見直しを求めた。

民主、自民の2大政党が、国民に負担増を求める政策で足並みをそろえるのは、画期的なことだ。各政党は従来、増税は選挙にマイナスとの意識から、大衆迎合的な政策を公約に掲げがちだった。

今回は、それだけ国家財政が危機的状況にあるうえ、国民にも消費税率引き上げへの理解が広がっているとの判断があるようだ。

菅首相は、超党派の議論を呼びかける以上、まず民主党のバラマキ政策を大幅に見直す必要がある。消費税論議でも、当面、自民党と同じ税率にとどめておけば批判は少ないという安易な態度でいるとしたら、無責任だ。

与党・国民新党の亀井代表は、政権離脱カードをちらつかせ、公然と増税に反対している。

だが、菅首相は、動じるべきではない。選挙戦で論議を重ねたうえ、税率アップで合意できる野党との連携を視野に入れ、財政健全化に取り組むのが筋だろう。

日米関係について、菅首相は、「北東アジアの緊張関係はかなり高い」との認識を示したうえ、米軍の抑止力を評価し、日米同盟を深化させる考えを強調した。

谷垣総裁は、急速な軍備増強を続ける中国が、日本にとって「脅威」にならないようにすることが日米同盟の意義だと指摘した。

菅首相が「現実主義」的な外交に転換したことで、民主、自民両党の安保政策の違いは以前よりは小さくなっている。

討論会参加者が9人にも上り、各テーマの議論が深まったとは言えなかった。各政党は今後の論戦を通じて、有権者に必要な判断材料を提示してほしい。

今回の参院選は、昨年の政権交代を中間評価する重要な選挙となる。有権者も、各政党の主張の当否を見極める目が問われよう。

産経新聞 2010年06月23日

党首討論 消費税の使途を知りたい

参院選の公示(24日)を前に開かれた日本記者クラブ主催の党首討論会の政策論議で、菅直人首相の消費税の使途などをめぐる説明に曖昧(あいまい)さが目立ってきた。

民主党のマニフェスト(政権公約)にも明記していない消費税増税の方向性を首相自らが打ち出したものの、同党内などから「選挙を戦えない」などの慎重論が広がったことに配慮したものだろう。政府・与党の統一した方針としてとりまとめていく指導力を明確に示す必要がある。

討論会で、自民党の谷垣禎一総裁は「消費税を高齢者の医療、介護、年金に充てるのか。最低保障年金を年金方式でやるのか。それとも、成長分野に充てるのか」とただした。

首相は自身が掲げる「強い社会保障」の考え方から、「介護、医療の分野に財政資金を振り向けることができれば、そこに雇用が生まれる」と説明した。増税しても成長分野に支出し、税収増で財政を再建するとの考え方だ。

しかし、首相は21日の記者会見では、社会保障費用の多くが赤字国債で賄われている現状を強調したうえで、増収分はそれらに充当することが中心になるとの見解を示している。自ら議論を混乱させているようだ。

首相が超党派による財政再建検討会議への参加を呼びかけていることに対し、野党側には慎重姿勢が強い。逆に公明党は社会保障に関する協議を主張した。民主党が最低保障年金制度を掲げながら、その具体案を提示していないことも議論が進まない要因だ。

一方、首相は米軍普天間飛行場の移設問題について、「日米合意を守ることは前政権の約束であり、私の政権の約束だ」としながらも、沖縄側の理解が得られないまま強引に進める手法は避けたいとの見解を示した。8月末までに辺野古移設案の位置や工法などを決定する日米合意を完全に履行するのか懸念が残る。日米同盟を地域の安定要因と語る以上、約束を守らねばなるまい。

首相は「北朝鮮の核実験、韓国哨戒艦事件など残念ながら北東アジアの緊張関係はかなり高いレベルに存在する」と述べたうえで、「中国は大きな経済力ばかりでなく、軍事力も強めていることに注意しないといけない」と、中国の軍事力増強に警戒感を示した。こうした脅威にどう対抗するか、議論を深めてもらいたい。

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