参院選民主公約 「強い財政」道筋見えぬ

朝日新聞 2010年06月18日

参院選マニフェスト 「消費税タブー」を超えて

7月の参院選は、日本の政治をもう一歩前進させる可能性がある。

民主、自民両党がきのう参院選マニフェスト(政権公約)を発表した。両党とも消費税を含む税制抜本改革を打ち出し、超党派の協議を呼びかけた。

大変な様変わりである。かつては一方が消費増税に前向きな姿勢をみせようものなら、他方がすぐさま攻め立て議論はしぼむ。その繰り返しだった。

有権者に負担を求める不人気政策からは逃げる。そんな政治の無責任が続いた結果、国と地方の長期債務は今年度末に860兆円に達し、国内総生産の1.8倍になる見込みだ。

借金が税収を上回る惨状に加え、ギリシャに端を発したユーロ危機と世界の動揺。さすがの2大政党も、もう逃げられないと観念したのだろう。

自民党は消費税率「当面10%」をうたった。菅直人首相はこれを「一つの参考にしたい」と応じ、今年度内に税率などをまとめたいと踏み込んだ。

消費増税は単なる財政再建の手段ではない。ほころんだ社会保障を立て直して安心と成長につなげていく道であり、国の基本設計にかかわる課題だ。選挙後ただちに超党派の検討の場を設け、早急に方向を定めるべきだ。

有権者に甘い言葉をささやき、票を得る。長く続いた利益誘導政治から、負担の分かち合いを正面から呼びかける政治へと、今回を機に大きく転換させたい。

財源と不可分の社会保障についても、2大政党の間に接近が見られる。

自民党は、子ども手当を廃止する一方、地域の実情に応じて保育所整備や給食無料化などサービスの内容を選ぶ「子育て交付金」創設を打ち出した。

民主党も子ども手当の満額支給をあきらめ、現行からの上積み分は、地域の実情に応じてこうしたサービスにあてられるようにするという。

自民党は「手当より仕事」と掲げた。民主党も子育て支援や介護サービスの需要増に目をつけ、雇用に結びつける作戦に出る。

昨年の総選挙で民主党が子ども重視を打ち出し、自民党が今回、その方策は手当よりもサービスが良いと唱える。民主党はサービスを通じ雇用を生もうという。相互批判と競い合いが、政策の質を高める好循環といえる。

もとより、消費税にしても子ども手当にしても民主党が総選挙で掲げた主張の大幅な変更であり、「公約違反」のそしりを免れるのは難しい。

経済情勢などの不可避的な変化や、政権を担ってみて初めて得られた情報、経験を踏まえ、「率直なおわび」と「丁寧な説明」を重ねて、有権者の理解を得ることが大前提である。

2大政党の政策が互いに近づいていくことは、グローバル化時代の必然でもある。対立点の多くは力点の置き方やニュアンスの違いになっていく。

しかし、そのことは競い合いを通じ政策を進化させることにもつながる。この変化を前向きにとらえたい。

近寄ったとはいえ鋭い違いはある。両党の公約には正反対の言葉も並ぶ。

民主党は「『国のかたち』を変える」と訴え、自民党は「わが国のかたちを守ります」と唱えている。

自民党は伝統的な価値観を尊重し、「保守」の精神を強調する。具体的には「夫婦別姓法案と外国人地方参政権付与法案に反対し、わが国の地域社会と家族の絆(きずな)を守ります」。

民主党は伝統的な地域や家族の絆はゆるみ、それだけに頼っても孤立は防げないという考えだ。人々がNPOなど様々な活動でつながり、「官」が担ってきた公共サービスも含め社会の一員としての責任を負い、絆を結び直す。「新たな社会づくり」である。

自民党は憲法改正を公約の冒頭に掲げるが、民主党の公約に言及はない。

民主党は公共事業について、総選挙の時の「コンクリートから人へ」を盛らず、「あり方を見直す」としたが、それでも社会資本整備の前倒しもうたう自民党との違いはやはり色濃い。

2大政党の時代、マニフェスト選挙が定着するにつれ、両党は何を対立軸とするか模索を続けた。政策の本筋が似通うほど、違いを際だたせるため、あえて相手の逆を言い、争点を人為的に作り出す。そんな傾向も残る。

理念や政治哲学を練り上げ、具体策に反映させつつ、わかりやすい対立軸を形づくっていくことは容易でない。違う点、同じ点を見極め、判断する困難な仕事が有権者に委ねられている。

2大政党が近寄っていくと離れた位置にある民意がこぼれ落ちかねない。受け止めるのは少数政党の役割だ。

公明党は心の病や児童虐待、孤独死といった「新たなリスク」に対応する「新しい福祉」を提案する。社民党は「米軍への『思いやり』より沖縄との連帯を」と掲げる。国民新党は3年で100兆円の経済対策を訴える。

連立政権が続く時代にあって、大政党が少数政党とどう向き合うか。現在の民主、国民新両党の連立では、消費増税を試みても国民新党が壁となるだろう。かといって民主、自民の大連立では政権交代時代の否定に等しい。

2大政党をはじめ各党が競い合いつつ、政策課題によっては接点を探る。そうした流儀に日本政治は疎かった。今回はその学びの契機になる。

毎日新聞 2010年06月20日

論調観測 参院選公約 「まとも」な論争を期待

かねて民主党の政策を痛烈に批判していたある経済学者は、政権交代で良くなったことは何かと問われてこう答えた。「まともな野党ができたことだ」。自民党が「まとも」かどうかは議論が分かれるだろうが、年金や医療の危機を過剰にあおり、財源もないのに大盤振る舞いをする民主党に比べたら、野党の立場でありながら不人気政策と言われる消費税アップを公約に掲げる自民党の方がまともだという意味である。

その民主党が参院選のマニフェスト(政権公約)に消費税率引き上げを明記した。財政再建や社会保障を充実させる方針を示し、超党派での協議を呼びかけた。一方の自民党はさらに踏み込み、消費税率10%という具体的な数字をマニフェストに明記した。いよいよ「まとも」な土俵で政策論議が行われるということになるのか。

18日の各紙社説は各党の参院選公約について論評した。毎日の主張を整理するとこうなる。(1)財政再建を両党が意識した方向性は評価できるが、民主は与党としてより具体的な改革像を打ち出す責任がある(2)衆院選公約の工程表の改定を見送るなど、政策変更を国民に説明する姿勢に欠けている(3)バラマキ色の強かった衆院選公約の見直しは当然である(4)政策の優先順位と財源確保のスケジュール改定を見送ったのは理解できない(5)野党があえて税率提示に踏み切った姿勢は評価したい。

これらについての評価は各紙ともあまり差が見られない。東京が「消費税よりも、まず行政の無駄をなくすことに、党派を超えて力を合わせるべきではないか」と提案したことが異彩を放つくらいだ。危機的な財政や高齢化に直面している現状では政策選択の幅もおのずと限られたものになる。「2大政党の政策が互いに近づいていくことは、グローバル化時代の必然でもある。対立点の多くは力点の置き方やニュアンスの違いになっていく」(朝日)という指摘は、それを論評する側の姿を映しているようでもある。

外交・安全保障政策でも民主党は対米配慮をにじませた現実主義路線に転換した。その結果、ここでも自民党の公約に近づいた。読売は「政権政党として当然のこと」、産経は「マニフェストを見直したことは評価したい」と論評した。一方、毎日は「戦略と構想力を欠いた」鳩山由紀夫政権の教訓を無視して「自民党政策への回帰で当面を乗り切ろうとしていると受け止められても仕方ない」と指摘した。【論説委員・野沢和弘】

読売新聞 2010年06月20日

消費税公約 引き上げを国民に堂々訴えよ

今月24日公示の参院選に向け、民主、自民両党が消費税率の引き上げを含む税制の抜本改革を打ち出した。

先進国で最悪の財政状況を立て直し、社会保障制度を持続可能なものにすることが、多くの国民の願いだろう。それには、消費税率引き上げが避けて通れないことは明らかだ。

国民に痛みを伴う増税であっても、必要性を堂々と訴えることが政治の責任である。選挙戦での活発な論争を期待したい。

選挙戦術では困る

菅首相は参院選公約を発表した記者会見で、消費税について「2010年度内にあるべき税率や改革案の取りまとめを目指したい」と語った。

税率は、自民党が提案している10%への引き上げを参考にする考えを表明した。消費税の増税を封印してきた鳩山前首相の方針を、大きく転換するものだ。

1989年に3%で導入された消費税は、97年に5%に引き上げられた。以来、歴代政権は消費税問題に正面から取り組んでこなかった。今回、菅首相が税率引き上げの方針を示したことは、評価してよい。

ただ、首相は記者会見で、増税前に衆院選で信を問う意向も示した。こんな悠長な構えでは、せっかくの機運が失われかねない。

民主党には、「税率を自民党の主張と同じ10%にすれば参院選の争点にはならない」との思惑もあるという。これでは、従来型の選挙戦術と同じだ。

首相の方針に対しては党内から反発も出ている。首相は党内論議を急ぎ、党としての基本的な考え方を固めるべきだ。

財政再建は待ったなし

バブル崩壊後の景気対策の大盤振る舞いに、鳩山政権の衆院選の政権公約(マニフェスト)にこだわったバラマキ政策が加わり、わが国の財政は「借金漬け」の危機的な状況に陥っている。

国と地方の長期債務残高は、今年度末に860兆円と国内総生産(GDP)の1・8倍に膨らむ見込みだ。

10年度予算は、税収が37兆円余りに落ち込み、44兆円に膨らんだ新規国債発行額を下回る異常な事態である。

高齢化の進展で年間20兆円超の社会保障費は、毎年1兆円ずつ自然に増える。

09年度から基礎年金の国庫負担割合を2分の1に引き上げたが、これは、いわゆる埋蔵金で暫定的に賄っており、11年度以降、新たに2・5兆円という恒久財源も必要となる。

菅内閣が掲げる「経済・財政・社会保障の一体改革」を成し遂げるには、安定した財源があってこそである。

だが、国の税収を支えてきた所得税や法人税は、長期不況や度重なる減税措置で大幅に減少している。頼みの綱は、景気による変動が少なく、国民が広く負担を分け合える消費税しかない。

世界的に見ても、25%の北欧諸国を筆頭に16~20%のスペイン、英国、イタリア、10%の韓国などと比べ、日本の消費税率5%は例外的に低い水準だ。

読売新聞が6月に実施した世論調査では、消費税率の引き上げが必要と答えたのは66%で、必要ないとした29%を大きく上回った。国民の多くは、消費税の増税やむなしとの考えに傾いている。

低所得者対策が必要だ

消費税を巡る論点は、単なる税率や時期にとどまらない。幅広い議論が必要である。

一つは、増収分の使い道だ。消費税率を1%引き上げると税収は2・4兆円増える。税率を10%にすれば税収増は12兆円ほどだ。

現在は基礎年金、老人医療、介護の3分野に配分されているが、首相は医療や介護などの成長分野への積極投資で雇用を増やす考えを表明している。

増収分を安易に歳出拡大に回せば、いつか来た道である。消費税は、社会保障に限定する目的税化すべきである。

5%の消費税率の1%分は、地方に回すことが決められている。さらに、地方交付税に配分される分もある。その結果、国が使える消費税は7兆円程度しかないのが現実だ。

これでは10%に引き上げても十分とは言えないだろう。将来的には、欧州並みの15%以上への引き上げも考えるべきではないか。

低所得者の負担をどう軽減するかという問題もある。

消費税は誰でも同じ税率がかかるため、所得の多い人より少ない人に相対的に負担感が増す。

海外では、食料品など生活必需品の税率を低く抑える軽減税率を導入している。わが国でも検討すべきだろう。

生活必需品の消費税額相当分を低所得者に還元する手法もある。対象となる世帯の所得を把握するには、税と社会保障の共通番号制度の検討を急ぐ必要がある。

産経新聞 2010年06月19日

消費税公約 首相は全体像もっと語れ    

消費税の取り扱いが参院選の大きな争点になってきた。

自民党が「当面10%」への消費税率引き上げを掲げたのに対し、菅直人首相も消費税の改革案を今年度中にまとめる考えを打ち出したためだ。

税制問題はこれまで選挙戦で不利になるとして主要な争点から外され、結果的に税制抜本改革の先送りが続けられてきた。今回、避けて通れない課題を国政選挙で論じ合う意味は大きい。

しかし、首相の見解はマニフェストに明記されておらず、自民党の10%を「一つの参考とする」とした根拠も明確にしていない。

民主党の玄葉光一郎政調会長は「マニフェスト発表の場で自身の言葉で言ったのだから当然、党公約になる」と述べた。だが、首相見解は民主党の議論を経たものとはいえず、税率は据え置くとした連立政権合意とも食い違う。

国民新党の亀井静香代表は「消費税を上げると考えること自体、間違えている。断じて賛成しない」と反論しており、民主党内でも「首相の勇み足だ」などの反発が出ている。首相は増税の全体像をわかりやすく提示したうえで、自ら指導力を発揮し、与党内を説得しなければならない。

消費税については自民党のほかに、たちあがれ日本が2012年度に現在の5%から3%引き上げ、経済回復後にさらに4~7%アップを提起した。新党改革は10%以上とし、日本創新党も段階的に10%を提唱した。

首相は、政権与党が明確な姿勢を示さなければ批判を受けると判断したのだろう。自民党と同じ10%を掲げ、追及をかわすねらいもうかがえよう。

首相は超党派の財政健全化検討会議を設置するというが、福田内閣当時、民主党は社会保障国民会議への参加を拒否した。政権交代を目指しながら政治的な駆け引きを優先させ、負担と給付をめぐる国民への説明責任を共有しなかった。その姿勢の反省も必要だ。

自民党は消費税を社会保障と少子化に充てるとしている。こうしたことを党派を超えて議論することは歓迎したい。政権交代のたびに社会保障制度が変わって迷惑するのは国民だからだ。

民主党はばらまき政策を根本的に改め、消費税を充てる社会保障制度の将来像を明示することなどを通じて、議論に臨む前提を早急に整えなければならない。

毎日新聞 2010年06月18日

参院選民主公約 「強い財政」道筋見えぬ

参院選に向け民主、自民両党はマニフェスト(政権公約)を公表した。民主党はさきの衆院選公約を大幅に変更、消費税率引き上げも含めた税制抜本改革に向け、超党派で早期に結論を目指す方針を示した。

菅直人首相は今年度中に税制改革の結論を目指し、自民党が公約に明記した「消費税率当面10%」を参考とする考えも示した。財政再建を両党が意識した方向性は評価できるが、与党としてより具体的な改革像を打ち出す責任がある。衆院選公約の工程表の改定を見送るなど、政策変更を国民に説明する姿勢に欠ける内容と言わざるを得ない。

さきの衆院選で「政権交代」が看板だった民主党公約だったが、今回は内容も様変わりした。政治主導の体制作りなど「脱官僚」路線や「コンクリートから人へ」のスローガンは影を潜めた。

首相にとって、最初の試金石とも言える今回の公約である。2013年度までに9兆円の行政のムダを削り、約17兆円の施策の実現を目指した衆院選公約の実現は財源不足で壁に突き当たり、バラまき型政策の見直しを迫られたためだ。さきの公約でふれなかった消費税増税の議論に言及したほか、15年度までに基礎的財政収支の赤字を半減する目標を示した。一方で、子ども手当の満額支給や高速道路無料化は修正された。バラマキ色が濃かった衆院選公約の見直しは、むしろ当然である。

にもかかわらず、政策の優先順位と財源確保のスケジュールの改定を見送ったのは、理解できない。衆院選と性格が異なる点などを党側は理由に挙げるが、さきの公約の心臓部がお蔵入りしたままでは、首相の掲げる「強い経済、財政、社会保障」を三位一体で実現する道筋も不明ということになる。公約の変更について首相は「率直に理由を述べ理解をいただく」と説明した。ならば選挙の論戦を通じ、具体的シナリオを示すべきだろう。

一方、自民党公約は消費税について「当面10%」と明記し、超党派の円卓会議による合意形成を盛り込んだ。民主党との政策の差別化に苦慮したことがにじむ内容だが、野党側があえて税率提示に踏み切った姿勢自体は評価したい。

民主党はこれまで消費税について衆院選で国民の審判を仰ぐとしていた。参院選後早期の合意を目指すならば、なおのこと具体的な税制改革像や財政再建のスケジュールを有権者に示す必要があるはずだ。仮に自民党案を参考にするような言い回しに終始するようでは、与党として責任ある対応と言えまい。

読売新聞 2010年06月18日

参院選公約 民主党の現実路線は本物か

民主、自民など各政党が、7月11日投開票の参院選の公約を相次いで発表した。

消費税論議をはじめ、掘り下げるべき論点は数多い。各党とも、活発な政策論議を展開してほしい。

民主党の公約は、昨年の衆院選の政権公約に比べ、現実路線に大きく(かじ)を切った。単なる選挙向けのポーズでなく、地に足のついたものかどうかが問われよう。

財政健全化については、10年後に基礎的財政収支を黒字化する目標を掲げ、そのために「消費税を含む税制の抜本改革」の超党派協議を開始すると明記した。

自民党は公約で、社会保障分野で要する費用を根拠として示したうえで、消費税率の「当面10%」引き上げを掲げた。

菅首相は記者会見で、「自民党公約の10%を参考にしたい」と述べた。超党派協議を呼び掛ける以上、民主党としての税制改革の全体像を明確にすべきである。

民主党は、衆院選公約で示した子ども手当の「月額2万6000円」支給を削除し、現支給額の月額1万3000円に「上乗せする」と改めた。財源のめどが立たず、満額支給を断念したものだ。

しかし、高速道路無料化や農家への戸別所得補償制度など、バラマキ型の施策は、依然として残されている。これらについても、さらなる見直しが必要だろう。

外交・安全保障分野でも、在日米軍基地について「見直しの方向で臨む」との表現を削除し、米軍普天間飛行場移設問題では、「日米合意に基づいて、沖縄の負担軽減に全力を尽くす」とした。

衆院選の公約では触れなかった中国の軍拡への懸念にも、「透明性を求める」と言及した。

日米同盟の重要性や、わが国の置かれた安全保障環境を踏まえての路線転換は、政権政党として当然のことである。

今回の民主党の公約で特徴的なのは、衆院選公約で示した年度ごとの政策工程表が省かれている点だ。公約に合わせて必ず発表してきた「政策集」もない。

どの政策を断念し、どう修正したかを過去にさかのぼって検証されることを嫌ったのだろう。

衆院選の政策集には、永住外国人への地方選挙権付与の早期実現など、問題の多い内容が含まれている。今回、政策集の発表を見合わせた結果、これらの政策が今も生きているのかどうかが、まったくわからない。

民主党は、こうした疑問点について、速やかに説明すべきだ。

産経新聞 2010年06月18日

参院選公約 政策修正の理由明記せよ

民主党は月額2万6千円にするとしていた子ども手当を「1万3千円から上積みする」などの修正を加えた参院選マニフェスト(政権公約)を発表した。

ばらまき政策の完全実施が財源不足で困難になったためだ。現実を直視するのは歓迎するが、問題はなぜ修正に至ったかの理由をマニフェストの中できちんと説明しない姿勢にある。政治主導でムダをなくせば財源を捻出(ねんしゅつ)できるとしていたが、成果は乏しかった。その反省も不十分だ。

菅直人首相はマニフェストの発表で、消費税について「今年度中に税率や逆進性対策を含む改革案をとりまとめていきたい」と踏み込んだ。財政再建路線に転じること自体は好ましい変化といえよう。だが、首相の見解はマニフェストに明記されたものではない。明確な位置付けを示すべきだ。

一方、自民党は税制改革について超党派の「円卓会議」で議論することを提起した。首相がいう財政健全化検討会議とかみ合うものに発展させる必要がある。

残念なのは、民主党が「政治とカネ」の問題に真摯(しんし)に向き合わなかったことだ。「クリーンな政治」を掲げながら現実に起きた疑惑の解明への取り組みはみられない。民主党政権の体質が問われているとの自覚はあるのか。

民主党政権の最大の失政といえる米軍普天間飛行場の移設問題は、県外移設に固執したことで鳩山由紀夫前政権の瓦解を招いた。国益を損なった失政の原因や経過を国民の前に示す責務がある。

注目したいのは、民主党が「中国の国防政策の透明性」を求める姿勢を示したことだ。「豪州、韓国、インドなどとの防衛協力」の推進も挙げた。日米関係について「対等」の言葉は残したが「同盟の深化」をより重視した。

鳩山前首相は東アジア共同体構想を重視し、中国との信頼関係強化に力点を置いていた。中国や北朝鮮など日本を取り巻く安全保障環境の悪化に即してマニフェストを見直したことは評価したい。

だが、海上自衛隊への挑発行為にみられる中国海軍などに対する脅威認識を、より明確に示す必要があったのではないか。自民党は防衛大綱の改定を通じて「『質』『量』ともに必要な水準」の防衛力整備を主張した。日本の安全保障を実効性あるものにするため、7月11日の参院選投票まで論戦を深めてもらいたい。

毎日新聞 2010年06月18日

参院選民主公約 外交は一転、対米配慮

民主党の参院選マニフェストに盛り込まれた外交・安全保障政策は、昨年の衆院選マニフェストからの方針転換となった。日米関係の内容は、日米地位協定改定の提起を除いて自民党のそれと大差ない。対米配慮の姿勢がにじむ。これが、菅直人首相の強調する「現実主義を基調とした外交」なのだろう。

衆院選公約との大きな違いは三つある。第一に、衆院選で外交政策の冒頭に掲げられ、看板だった「緊密で対等な日米関係」は、地位協定改定を目指す項目の中でしか触れられていない。代わりに前面に出たのが「日米同盟の深化」である。

第二に、衆院選公約の「米軍再編や在日米軍基地のあり方の見直し」が削除された。そして、米軍普天間飛行場を沖縄県名護市辺野古に移設するとした「日米合意に基づいて沖縄の負担軽減に全力を尽くす」という項目が盛り込まれた。

日米合意で「見直し」に区切りがついたとの判断に加え、日本を取り巻く安全保障環境から在日米軍基地の新たな見直しは米国の同意を得にくいという考えがあるのだろう。

第三に、「『東アジア共同体』の実現」は引き続き掲げる一方で、中国に「国防政策の透明性」を求める方針を新たに盛り込んだ。

鳩山由紀夫前首相による「東アジア共同体の構築」の主張は、「対等な日米関係」とあわせて、米国内で「離米入亜」「親中国」の代名詞のように受け取られることもあった。このため、中国の国防政策に言及してバランスを取ったと見られる。

方針転換の結果、米国に提言したりモノを言うというより、対米協調を強く印象づけるものとなった。地位協定改定は、柱の一つとなる米軍基地の環境問題への対応が5月末の日米合意に盛り込み済みだ。日米関係は、「日米同盟の深化」や「沖縄の負担軽減」などを掲げる自民党の参院選公約とほぼ同じ内容である。

鳩山政権が普天間問題で米政府とぎくしゃくし、倒壊したことの揺り戻しなのだろう。菅民主党は対米協調こそが政権維持の前提という教訓を引き出したようだ。

しかし、鳩山政権の外交・安保政策の問題は、掲げた目標を実現する戦略と構想力を欠いたことだった。菅民主党はこの教訓を無視して、普天間の「辺野古回帰」と同様、対米方針の「自民党政策への回帰」で当面を乗り切ろうとしていると受け止められても仕方ない。

一方、自民党は、集団的自衛権行使を念頭に置いた安全保障基本法や、自衛隊の海外派遣のための恒久的な国際平和協力法の制定を掲げ、民主党との違いを鮮明にしている。

毎日新聞 2010年06月17日

7・11参院選へ 「出直し菅内閣」を問う

私たち有権者にとって再び大切な選択の時がやってくる。野党各党が論戦不足を激しく批判する中、国会は16日閉会し、今月24日公示、7月11日投開票となる参院選に向け、選挙戦が事実上始まることになった。

戦後初の本格的な政権交代から約9カ月。鳩山由紀夫前首相があえなく退陣し、菅直人首相で出直しを図る民主党政権に有権者は期待をつなげるのかどうか。つまり、政権交代したのがよかったかどうかの判断を有権者が下す参院選となる。

参院選は衆院選と異なり、政権選択に直結する選挙ではない。ただし、今回は単に現政権の中間評価にとどまらない。与党の民主党と国民新党が参院で過半数を維持すれば政権は安定するだろう。逆に過半数に達しなければ国会は衆参がねじれ、法案が容易に通らない状態になる。あるいは、選挙結果によっては連立の組み替えとなるかもしれない。いずれにしても、日本政治の行方を大きく左右するということだ。

それだけ重要な参院選であるにもかかわらず、国会を強引に閉会した民主党の姿勢は批判されて当然だ。

菅内閣は人事などで小沢一郎前幹事長の影響力を排除する「脱小沢」を貫いたことなどが評価され、支持率は急回復している。この勢いで一刻も早く選挙に突入したいと考えたのは明らかだ。一時、野党に提案していた党首討論や衆参予算委員会を取りやめ、16日は野党が参院に提出した菅首相に対する問責決議案の採決さえ拒否して国会を閉会した。まったく理解できない対応である。

前内閣は普天間問題と、鳩山前首相と小沢氏の政治とカネの問題に追われ、この国会は予算成立以外にはほとんど成果はなかった。菅内閣もまだ何もしていないに等しいのである。ところが、発足早々、荒井聡国家戦略担当相の事務所費問題も浮上し、これ以上国会が長引き、さらにほころびが出るのを恐れたと見られても仕方があるまい。

審議不足が明白な郵政改革法案を参院選後に先送りするのは当然としても、地域主権改革関連法案や労働者派遣法改正案など早急に成立させるべき多くの法案が棚上げとなった。インターネットを利用した選挙運動を解禁する公職選挙法改正も、やっと与野党で合意したというのに時間切れで実現しなかった。

小沢氏の政治資金問題に関する政治倫理審査会などの開催も、なし崩し的に見送られた。これらの責任は民主党にあると指摘しておく。

参院選公示を前に注目したいのは民主党のマニフェストだ。

長妻昭厚生労働相が来年度から中学生以下の子ども1人につき月2万6000円を支給するとした昨年の衆院選マニフェストの実現を、財源不足を理由に事実上断念する考えを示したように、菅内閣は財政再建優先にカジを切っている。17日に発表予定の参院選マニフェストは、こうした政策転換が反映されそうだ。

「脱バラマキ」も「脱小沢」の一環だろう。しかし、昨年の衆院選では鳩山、小沢両氏だけでなく、党を挙げて「政権交代すれば、いくらでも財源は出てくる」などと財源をあいまいにしてきた点を忘れてはならない。公約を変更するには、なぜ、そうなったのか、きちんと反省し、国民に説明するのが先だ。そうでなければ本当の出直しとはならない。

大きな争点となるであろう税制改革で、自民党は消費税率引き上げを具体的に公約に明記する方針だ。民主党も財政再建や社会保障制度改革のために引き上げが必要と考えるのなら、「今後、与野党で協議する」と逃げずに、まず政権与党としてどう考えるのか、具体的な数字を盛り込むべきだ。

鳩山前首相退陣のきっかけとなった普天間問題も解決のめどは立っていない。菅首相は移設先を辺野古付近とした日米合意を踏まえ、沖縄の負担軽減に努めると言うが、沖縄県民の理解をどう得るのかも、参院選の大きなテーマとなる。

普天間も、いくつかの国内政策もなぜ、約束通りに実現できなかったのか。それが前政権の失敗から最も学ぶべき教訓だ。政策実現のための道筋を具体的に書き込み、必要とあれば有権者の負担増も訴える--。そんなマニフェスト選挙の原点に民主党は立ち返ってもらいたい。

対する自民党は政権に返り咲く足がかりができるかどうかの正念場だ。離党者も相次ぎ、求心力は失われる一方だ。今回敗北すれば民主党以上に深刻な局面を迎えよう。

公明党や共産党、連立を離脱した社民党、昨年結党したみんなの党、そして初の国政選挙となる新党改革、たちあがれ日本などにとっても重要な選挙だ。2大政党化の流れがそのまま強まるのか。民主、自民両党に不満な人たちの受け皿となって「第三極」が伸びるのか。今後の政治の潮流を決める岐路ともなる。

国会での論戦が足りなかった分、選挙戦では活発な政策論争を強く望みたい。口蹄疫(こうていえき)の拡大で宮崎県などでは「今のままで選挙ができるのか」との声も出ている。内閣が万全の措置を講じるべきであるのは言うまでもない。

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