「H2B」1号機 打ち上げ成功で夢が膨らむ

毎日新聞 2009年09月12日

HTV打ち上げ 国際舞台の活躍に期待

国際宇宙ステーション(ISS)の運用に欠かせない無人の補給機「HTV」が鹿児島県・種子島宇宙センターから打ち上げられた。1週間かけてISSに近づき、18日にドッキングする。

HTVも、これを軌道に運び上げたH2Bロケットも、これが初打ち上げである。いずれも国産で、これまでの技術の集大成だ。日本の宇宙開発のステップアップにつながる重要な一歩であり、HTVが無事任務を果たすことに期待したい。

これまで、ISSに物資を輸送してきたのは、米国のスペースシャトル、ロシアのプログレス、欧州のATVの三つだ。このうちシャトルは2010年の引退が決まっている。

シャトル引退後には、ISSの外部に取り付ける実験装置を運べるのはHTVだけになる。ISS内部に大型機器を運ぶ唯一の手段ともなる。シャトルの後継機として課せられる任務は重要だ。

ISSに近づくランデブーの方法も独自に開発した。軌道を徐々に調整し、最後は秒速7・7キロで飛ぶISSの真下に相対的に停止させる。これをISSのロボットアームでつかむ。万が一にもISSにぶつかるわけにはいかず、高度な技術が求められる。安全に配慮しつつ、準備を重ねてきた成果を見せてほしい。

H2Bは、国産大型ロケットH2Aの打ち上げ能力を約1・4倍高めた。H2Aの第1段エンジンを2基束ねるなど、既存技術を利用し開発コストも抑えた。今後、年1機の割合でHTVを打ち上げる予定で、信頼性をさらに高めることが重要だ。

今回の打ち上げは、今後の日本の宇宙開発政策を考えるきっかけにもなる。ひとつには、HTVは人間が活動できる1気圧の与圧部を持ち、有人宇宙船開発の一歩という見方もあるからだ。

今のところ日本は独自の有人宇宙飛行計画を持たない。政府が6月に定めた宇宙基本計画でも、「有人を視野に入れたロボットによる月探査」という表現にとどまっている。一方、月・火星の有人探査計画を打ち出していた米国では、専門委員会が月再訪計画の見直しを求める報告書をまとめた。そうした状況の中で、日本が有人飛行にどうかかわっていくか、ビジョンが必要だ。

ロケットの側にも課題がある。大型化には成功したが、衛星の需要はむしろ小型に向かうとの見通しもある。日本のロケットをどう開発・活用していくのか、戦略がいる。

民主党は宇宙行政を一本化する政策を掲げている。宇宙の平和利用を堅持した上で、日本の技術力をどう生かすか。魅力的な道筋を示してほしい。

読売新聞 2009年09月12日

「H2B」1号機 打ち上げ成功で夢が膨らむ

人が乗って宇宙に行けそう――。そう思えるほど順調な()(しょう)だった。

宇宙航空研究開発機構が、国産の新鋭大型ロケット「H2B」1号機の打ち上げに成功した。

国際宇宙ステーションへと向かう無人輸送機「HTV」も、予定通り軌道に投入できた。

今後、地上からの遠隔操作で徐々に軌道を修正し、1週間かけてステーションに到着する。無事に荷物を届けられるか。山場はいくつもある。気は抜けない。

H2Bは、全長56メートル、重さ530トンと、これまでの国産ロケットの中で最も大きい。

宇宙機構と三菱重工業が共同開発した。大きな特長は、現在の主力ロケットH2Aの第1段エンジンを2基束ねて使い、打ち上げ能力を増やしたことだ。

既存の技術を生かしたため、開発費は約420億円と、H2Aの半分以下で収まった。大きなトラブルもなく、順調に進んだ。

大型ロケットの打ち上げ成功もH2Aを含めて、今回で連続10回を数える。

経験を重ねることの重要性を物語る成果と言える。

H2Bは今後も、ステーション運用期間中は毎年1回の打ち上げが続く。H2Aも、衛星や探査機の打ち上げに使われる。世界の商用衛星の打ち上げ受注も、長年の悲願となっている。

今回の打ち上げデータも十分に精査して、さらにロケットの信頼性を向上させるべきだ。

輸送機への期待も高まる。

バスの車体がすっぽり入るくらい大きい。全長10メートル、直径4・4メートルで、総重量は16・5トンだ。

今回は、ステーションに滞在中の宇宙飛行士の食料と生活物資のほか、日、米それぞれの実験装置を搭載している。

これまで、ステーションへの物資輸送の主役は米スペースシャトルだった。だが、維持費がかさみ退役の日が近づいている。

ロシア、欧州にも同様の輸送機はある。ただ、大型の機材を搭載できるのは、日本のHTVしかない。それだけに、輸送の成否は世界から注目されている。

HTVは、ステーションと結合後、宇宙飛行士が出入りする。このため、有人宇宙船並みの安全性を備えている。宇宙機構は、国産初の有人宇宙船開発にも、この技術を生かすという。

今回の打ち上げで、日本の宇宙技術は新段階に入った。新政権のもとでも、宇宙技術の基盤作りをしっかり後押ししたい。

産経新聞 2009年09月12日

H2Bロケット 国産宇宙船へ信頼高めよ

まばゆいオレンジ色の炎と燃焼ガスを暗い夜空に力強く噴射しながら、大型ロケットは一気に雲の上に駆け上った。

初登場の「H2B」の先端部には同じく新開発の無人補給機「HTV」が積まれていた。ともに日本の先端技術で開発された国産機である。

鹿児島県の種子島から飛び立ったH2BロケットはHTVを予定の軌道に運び、打ち上げは成功した。HTVは目下、国際宇宙ステーション(ISS)への18日到着を目指して飛行中だ。

HTVがISSとの結合を完了すれば、日本の宇宙開発力は新たな段階へと進み、米露の水準にぐんと近づくことになる。そうした大きな意味を持つ挑戦である。

輸送力で、これまでのH2Aロケットを上回る最大型ロケットH2Bが、三菱重工業と宇宙航空研究開発機構(JAXA)によって短期間、かつ低コストで実用化されたことは評価に値する。H2Aとの併用で今後、世界の衛星打ち上げ市場の一端を開拓していく展望が開けるはずだ。

宇宙貨物船ともいえるHTVを日本が開発した意義は、さらに大きい。大型バスほどのHTVにはISSで暮らしている宇宙飛行士のための食料や生活物資、実験機器などが搭載されている。

スペースシャトルは来年中に引退する予定なので、シャトルでしか運べなかった大型機材の代替輸送手段としての期待が高い。有人活動では米露の世話になってきた日本による初の対等な貢献だ。

HTVのすごいところは1気圧の空気が満たされた荷物室を備えていることである。これは将来、国産の有人宇宙船へと進化し得るすぐれた機能なのだ。

ISSは、世界15カ国の参加で実現した。月面再訪や有人火星探査が検討されている、これからの宇宙開発では、一段と国際協力の必要が増すだろう。すぐれた宇宙技術は、日本の存在感を高める。宇宙開発は国の科学技術力の総合的な指標であるからだ。

今後、H2Bについては、確実な打ち上げを重ねて信頼性の向上に努めてもらいたい。HTVに関しては、大気圏再突入と回収技術の研究開発を進めてほしい。

12月には野口聡一飛行士がロシアのソユーズ宇宙船でISSに向かい、長期滞在に挑む。今回の打ち上げで、日本の宇宙開発は、新たな段階へと進んだ。その確かな手応えが伝わってくる。

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