はやぶさ帰還 歴史的快挙を次に生かそう

朝日新聞 2010年06月16日

探査機帰還 はやぶさ君に笑われまい

多くの人々が胸を躍らせた小惑星探査機「はやぶさ」の挑戦が終わった。

3億キロかなたの小惑星イトカワに着陸して、再び地球に戻ってくる。当初は実現が危ぶまれた野心的な目標を見事に達成し、地球の大気圏に突入して燃え尽きた。月以外の天体との間を往復したのは、世界で初めてのことだ。歴史的な快挙といっていい。

イトカワの表面で採取した砂などを入れるためのカプセルは、はやぶさから切り離されてオーストラリアの砂漠に落下し、無事に回収された。

小惑星は太陽系ができたときの様子をとどめているとされる天体だ。カプセルの中身は日本に持ち帰って分析されるが、砂などが入っていればさらにまた金字塔を打ち立てることになる。

はやぶさが旅立った2003年は鉄腕アトムが誕生した年とされており、当初はアトムを愛称とする案が有力だったという。はやぶさは、自分の力で判断して行動するロボットなのだ。

重さ0.5トン、技術の粋が詰め込まれたちっぽけなロボットが、地上の探査チームの知恵と工夫に支えられて前人未到の大仕事をやってのける。世界の称賛を浴びたはやぶさは、日本の進むべき道を鮮やかに見せてくれたといえるのではないか。

真空の宇宙とはいえ、わずかな燃料で総行程60億キロもの旅ができたのは、最新鋭のエンジンのおかげだ。ここに日本の高い技術力が生かされた。

はやぶさは7年間に何度も危機に見舞われた。とりわけ7週間も交信が途切れたり、四つのエンジンが故障したりしたときは絶望視されたが、奇跡的に乗り越えた。故障しても動かし続けることができたのは、技術を熟知した技術者と研究者の力が大きい。

チームのリーダーである宇宙航空研究開発機構の川口淳一郎教授は「意地と忍耐と、最後は神頼み」だったというが、チームが一丸となってあきらめずにがんばれば、道が開けることも教えてくれた。

なによりも再認識させられたのは、高い目標を掲げ、あえて挑戦することの大切さだ。「世界でまだだれもやっていないことに挑戦したかった」(川口さん)という。

もともとは、新型エンジンなどの技術試験を目的とした計画だったが、小惑星探査という意欲的な目標を加え、それが、技術陣や管制チームの底力を引き出すことにつながった。

日本には、世界に誇る技術力がある。それをどう生かし、どう育てていくか。そこに日本の将来がかかっていることは間違いない。若者を鼓舞するような目標を掲げて挑戦する。それによって、技術も、そして人も、育てていきたい。

縮こまってはいられない。はやぶさ君に笑われる。

毎日新聞 2010年06月15日

はやぶさ帰還 60億キロの旅に拍手する

7年の長旅を終え、小惑星探査機「はやぶさ」が地球に帰ってきた。数々のトラブルに見舞われながら、その都度、プロジェクトチームの創意とチャレンジ精神で乗り越えての帰還である。

地球に届けたカプセルには小惑星イトカワの砂が入っていると期待される。その分析も楽しみだが、小惑星往復だけでも世界初の快挙である。60億キロの旅に拍手を送りたい。

地球から遠く、重力が小さい小惑星からの試料持ち帰りは容易ではない。宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発したはやぶさには、難度の高い複数の課題が課せられた。

独自に開発したイオンエンジンは、力は弱いが効率が高く、宇宙の長距離航行に適している。トラブルがあったとはいえ、長い運用に耐えることが確かめられた意義は大きい。改良を進め、宇宙帆船の技術などと組み合わせれば、新たな惑星間航行の時代を築けるのではないか。

日本からの指令が間に合わない宇宙空間で、自ら判断して小惑星に着陸する「自律航法」も実証できた。最後に、大気圏突入による高温を経てのカプセル回収という難題もクリアした。ほぼすべての課題を達成したといっていいだろう。

惑星科学の成果も重要だ。はやぶさの写真からイトカワの起源の手がかりが得られた。砂が分析できれば太陽系初期の知識が深まるはずだ。

はやぶさは社会現象にもなった。ネットには、けなげに故郷をめざす「はやぶさ君」への応援の言葉があふれた。背景には、満身創痍(そうい)の探査機が絶体絶命の状況から何度も再起したねばり強さがある。それを支えたチームの底力は大したものだ。

プロジェクトを率いたJAXAの川口淳一郎教授は「ある時からは神頼み」と話したが、一人一人の熱意と能力が幸運を引き寄せたのだろう。JAXAだけでなく、メーカーの提案も採用してきたチームワークの良さも鍵を握ったに違いない。

後継機「はやぶさ2」の計画にも注目したい。はやぶさの経験を生かし、イトカワとは異なるタイプの小惑星をめざす。問題は、来年度に開発を始めないと打ち上げ目標に間に合わないことだ。そうなれば、技術が継承できず、人材も失われる。

はやぶさの開発費は127億円。低コストでできる無人探査の魅力を再認識した人は多いだろう。米国が小惑星探査に意欲を見せていることも念頭に、ぜひ予算をつけたい。

日本の縮み志向が懸念される今、はやぶさは、あきらめずに挑戦することの素晴らしさも印象づけた。宇宙開発はもちろん、さまざまな分野で若者が自信と意欲を持つきっかけにもなってほしい。

読売新聞 2010年06月15日

はやぶさ帰還 歴史的快挙を次に生かそう

宇宙航空研究開発機構の探査機「はやぶさ」が帰ってきた。宇宙開発史に残る快挙と言える。

2003年5月に地球を出発した。05年11月に3億キロ・メートル離れた小惑星イトカワに着陸し、砂などのサンプル採取を試みた。帰還まで、宇宙の旅は7年の長きに及んだ。

初めて月以外の天体に探査機が着陸して帰還したことになる。

はやぶさ本体は大気圏突入で燃え尽きた。採取したサンプルを収めるカプセルは突入前に分離、豪州の砂漠に着地した。日本に運び内部を確認する。

小惑星の砂や石は、酸化などが進んだ地球の石と違い、太陽系の初期の状態に近い。太陽系の歴史を探るヒントになるだろう。

残念ながら、装置の不調で確実にサンプルが採取できたかどうか分からない。だが、着陸時に舞い上がった砂がカプセル内に入った可能性はある。

そもそも帰還自体が奇跡だ。地球―太陽間の40倍にあたる約60億キロ・メートルの飛行で、機体は各所が故障し、満身創痍(そうい)だった。

まずイトカワ離陸後に燃料が漏れた。制御不能になり、通信も途絶した。06年、幸運にも復旧し帰路についたが、長期の飛行で、ぎりぎりの運用が続いてきた。

活躍したのは、搭載された日本独自の新型エンジンだ。

イオンエンジンと呼ばれる。高圧ガスを噴く化学エンジンなどと比べて推進力は小さい。地上で1円玉を動かす程度の力だが、少ない燃料で長期間動く。これが、のべ4万時間、機体を制御した。

小惑星着陸を成功させた自動制御技術とともに、技術の高さを世界に示した。海外の探査機や衛星への売り込みも期待される。

心配なのは、次の計画だ。開発に約130億円をかけた「はやぶさ」の教訓を生かし、ほぼ同じ規模の予算で、別の小惑星の高度な探査を目指す「はやぶさ2」の開発が滞っている。

民主党が進める高校無償化に4000億円近くかかり、そのしわ寄せで、文部科学省の宇宙予算が大幅に削られたためだ。はやぶさ2の今年度予算は、政権交代前の概算要求額17億円が、3000万円まで圧縮された。

ばらまき予算よりも、意義のある計画に予算を投じるべきだ。

地球と小惑星の位置関係を考えると、次の探査機までに10年以上の空白期が生じかねない。経験が風化してしまう。貴重な技術を次世代につなぎ、発展させる取り組みを後退させてはならない。

産経新聞 2010年06月13日

はやぶさ帰還 不撓不屈みせた宇宙の旅

ついに「はやぶさ」が帰ってくる。7年間、60億キロに及ぶ宇宙の旅路からの帰還である。

本体は地球の大気圏で燃え尽きるが、直前に分離したカプセルは、パラシュートを開いてオーストラリアの砂漠に着陸する。日本時間の13日深夜の予定だ。

大人から子供まで多くの人が関心を寄せ、声援を送るはやぶさの帰還成功を願いたい。

はやぶさは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の研究チームが開発した小惑星探査機だ。平成15年5月9日に、鹿児島宇宙空間観測所からM5ロケットで打ち上げられた。

小惑星は太陽系の化石のような存在だ。それを調べることで、約46億年前の原始地球の素材がわかる。火星と木星の間を中心に、小惑星は数十万個存在する。

はやぶさが訪れたイトカワは、地球寄りのその一つだ。そこで土砂の採取を試みた。はやぶさが地上に届けるカプセルには、運が良ければ、イトカワの微細なかけらが入っている。

世界の惑星探査史上、月以外の天体に着陸した探査機が地球に戻ってくるのは初めてだ。自律的な判断能力を備え、ロボットとしての一面を持つ、はやぶさの成果は目覚ましかった。

新しい推進装置のイオンエンジンで宇宙空間を長期間航行し、その性能を実証してみせた。イトカワの外観の細密な画像を地球に送信し、物理的な性質についても多くの情報を収集している。

だが、2メートル角に満たない小さなはやぶさは、過酷な宇宙の長旅で満身創痍(そうい)の状態だ。姿勢制御装置やイオンエンジンも次々、故障した。7週間にわたって通信が途絶したこともある。

いずれも致命的なトラブルだったが毎回、はやぶさは立ち上がり、地球を目指した。不撓不屈(ふとうふくつ)のけなげさが人々の心を打った。親しみを込めて「はやぶさ君」と呼ばれることも多くなっている。これまでになかった現象だ。

強い意志にも似た、はやぶさの回復力は、研究陣の周到な設計や管制チームの臨機応変の対応能力によるものだ。世界一を目標にしたからこそ実現できた輝かしい成果にほかならない。日本の科学技術力の結晶である。

はやぶさがなすべき仕事は、カプセル分離だけとなった。最後の電力を振り絞り、地上に届けてもらいたい。頑張れ、はやぶさ。

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