「新漢字表」答申 「制限」の自縛解く好機だ

読売新聞 2010年06月14日

新常用漢字 日本語を豊かに表現しよう

常用漢字が29年ぶりに改められる。文化審議会が、改定常用漢字表を答申した。

常用漢字表は、法令や公文書、新聞、雑誌、放送などで使用される漢字の目安を示すものだ。1981年に制定され、1945字が掲載された。

今回の改定で、使用頻度の低い「(もんめ)」など5字を削除し、「俺」「(うつ)」「(ふた)」など196字を加えた。全部で2136字になる。

情報技術(IT)の進展によりパソコンや携帯電話のキーを押すだけで難しい漢字が出る。新しい機種のパソコンには約1万の漢字が搭載されている。書けなくとも読める漢字が多い。

こうした時代の変化に応じて、常用漢字を増やすのは必要なことだろう。日本語表現もより豊かで多様なものになる。

例えば、交ぜ書きの「ち密」や「軽べつ」は、「緻密」「軽蔑」と表記できる。「歌」と「(うた)」などの使い分けも可能になる。

さらに答申は、常用漢字以外の漢字を振り仮名付きで「使用することもできる」とした。こうした配慮はますます重要となろう。

新常用漢字を学校でどのように教えていくかが今後の課題だ。

現行の学習指導要領は、中学で「常用漢字の大体を読むこと」、高校で「常用漢字の読みに慣れ、主な常用漢字が書ける」ことを、それぞれ求めている。

今回の答申は、すべての漢字を書ける必要はないと明記した。一方で、小中学校では書き取りの反復練習が大切だと強調した。

文部科学省は、増える常用漢字をどう教えるかを検討する専門家会議を発足させる。書けなければならない漢字の範囲などについて具体的指針を示すべきだ。

新常用漢字表では、「しんにゅう」「しょくへん」は、2種類の字体が混在して使われている。

例えば「遜」や「餅」は、常用漢字ではなかったため、伝統的な字体に基づく表外漢字字体表に従って表記されてきた。今回、常用漢字表に加えられたが、字体がそのまま使われる。

ただし「◆」「●」も、許容字体として使用が認められる。

どちらの字体でもよいことをよく説明する必要がある。

改定常用漢字表は、約半年後に内閣告示の形で正式に決まる。

81年秋に告示された常用漢字表は83年度の高校入試、85年度の大学入試から出題された。入試への導入時期もすぐに検討しなければなるまい。

◆は一点しんにゅうの「遜」、●は食へんの「餅」

産経新聞 2010年06月14日

「新漢字表」答申 「制限」の自縛解く好機だ

常用漢字表の見直しを進めていた文化審議会が「改定常用漢字表」を川端達夫文部科学相に答申した。年内にも告示される予定だ。

1945字からなる現行の常用漢字表が告示されたのは昭和56年だった。その後のパソコン、携帯電話の普及で、国民の文字使用環境は大きく変化し、今では手で「書く」より情報機器を使って「打つ」のが主流となった。難しい漢字でもごく簡単に変換して打ち出せる。

改定はそんな時代の流れを国語政策に反映させる目的で行われたもので、「すべてを手書きできる必要はない」としたのが大きな特徴だ。画数が多く難しいなどとして追加見直しの声が多かった「鬱(うつ)」や「彙(い)」も、最終的に追加されたのは大いに評価できる。

平成17年に漢字政策の在り方について諮問した中山成彬文科相(当時)は、国民はより多くの漢字を使いたがっているようだと指摘した。昨今の漢字ブームなども考慮すれば、追加漢字が現行の約1割、196字にとどまったのは残念としか言いようがない。

「虎」が追加される一方で「鷹(たか)」「雀(すずめ)」などが落選した。使用範囲が限定的と判断されたようだが、このままでは「鷹揚(おうよう)」などの熟語や「門前雀羅(じゃくら)を張る」などの成句が、若い世代ばかりか国民の多くから忘れられていく。

戦後間もない昭和21年に制定された当用漢字表は漢字の使用に厳しい制限を設けたため、公文書だけでなくマスコミも、漢語に仮名を交ぜる交ぜ書き表記や代用漢字の使用を余儀なくされた。

当用漢字表の後を受けた常用漢字表では「漢字使用の目安」というふうに制限色が緩和された。が、それにもかかわらず一部マスコミはいまだに「牽引」を「けん引」、「改竄」を「改ざん」と書くなど、「表外字不使用」の自縛を引きずっている。

改定常用漢字表は現行表と同様に「目安」であることを明示し、「表内字だけを用いて文章を書かなければならないという制限的なものでない」ことも付け加えた。表外字には振り仮名の活用も提言している。今こそ先の自縛を解くチャンスではないか。

豊かな文章表現と美しい国語表記に、幅広い漢字の使用は絶対に欠かせない。「けん引」や「改ざん」の表記こそ、国民から正しい漢字知識を遠ざけようとする暴挙と心得るべきだろう。

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