毎日新聞 2010年06月12日
郵政担当相交代 なんとも奇妙な決着だ
郵政改革法案をめぐる混迷は、民主党と国民新党が確認書を交わすことによって、とりあえずは収拾が図られた形だ。しかし、日本郵政の今後の姿は、参院選を経た後の政治状況次第というのが、実際のところではないだろうか。
それにしても奇妙な決着だ。郵政改革法案が廃案となり、臨時国会に先送りとなったことを受けて国民新党の亀井静香代表が金融・郵政担当相を辞任した。しかし、連立は維持し、同党の自見庄三郎幹事長が亀井氏の後釜として入閣した。
今国会で郵政改革法案が成立できなかったことを亀井氏の辞任によってわびる一方で、確認書の中に、「同一法案を参院選後の臨時国会における最優先課題とし、速やかな成立を図る」という文言を入れることによって、郵政改革の見直しを再び約束する。
目線の先にあるのは郵政関連票で、それをつなぎとめるため、大立ち回りを演じたということなのだろう。しかし、下手な芝居を見せられた印象をぬぐえない。
確認書を取り交わしたとはいえ、郵政改革の見直しについて民主党側の興味はすっかりそがれている。連立を組んではいるものの、すぐに参院選だ。その結果によっては、国民新党がパートナーであり続けるとは限らない。
菅直人首相の誕生で支持率が急回復した民主党にしてみると、参院選前に無用の騒動を引き起こし、マイナスに作用するのは避けたいということなのだろう。
郵政改革の見直しについて、3月に政府案が発表された際、閣内から異論が噴出した。その中には当時財務相だった菅首相や、国家戦略担当相を務めていた仙谷由人官房長官の声もあった。
ゆうちょの預け入れ限度額と、かんぽの保険金限度額を倍に増やす一方で、政府が株式を保有し続ける。暗黙の政府保証がついたゆうちょやかんぽの拡大は、中小金融機関にとって脅威で、民業圧迫との声があがっている。
また、郵政改革の逆戻りについては、米欧から世界貿易機関(WTO)協定に違反すると指摘され、政府間で協議が行われている。
もともと民主党は、ゆうちょやかんぽは縮小すべきだという考えだった。しかし、参院で単独過半数に満たないため、国民新党に引きずられる形で、郵政改革の見直しを受け入れてきた。
いずれにしても、今の郵政改革法案には問題が多すぎる。国民や経済のためにどうしたらいいのかを、郵政改革の原点に戻り、仕切り直して再考すべきだ。
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産経新聞 2010年06月12日
亀井担当相辞任 郵政を政争の具にするな
国民新党の亀井静香代表が、今国会で郵政法案の成立が見送られることに反発して郵政改革・金融相を辞任した。
亀井氏のポストは国民新党の自見庄三郎幹事長が引き継ぎ、民主・国民新両党の連立は維持されるが、これほどわかりにくい結末もない。
そもそも、郵政民営化問題をめぐり民主党の基本方針がはっきりしていなかったことに根本的な問題がある。民営化の見直しを原点とする10議席に満たない少数政党に、400議席を超す大政党が振り回されてきたのもそのためだ。
社民党の政権離脱後、参院では国民新党を加えた民主党会派がかろうじて過半数を保っている。政権維持のために民営化問題を「政争の具」にしている姿勢が問われているのである。
自民党などは民営化問題を改めて参院選の争点とし、菅直人政権の姿勢を追及する必要がある。
民主党内ではかねて、民営化推進論と慎重論が混在していた。小泉純一郎元首相が民営化について国民の信を問うた5年前の衆院選では、民主党も郵貯の預入限度額を1千万円から段階的に500万円に引き下げる縮小案を提示したこともある。
3年前の参院選で自公政権を参院の過半数割れに追い込むと、民主党は国民新党と民営化凍結法案の成立を目指すなど、政権交代に向けた野党共闘の中で民営化逆行路線を強めた。政策より政局的な要素を重視したためだ。
問題は、政権交代までの間に、民主党内で民営化路線の是非を徹底的に議論する機会がほとんどなかったことである。
今国会に提出された郵政法案では、預入限度額が2千万円に引き上げられるが、菅首相は財務相当時に「数字は聞いていない」と亀井氏らの引き上げ方針に反発した経緯がある。
「資金の流れを官から民に変える」という郵政改革の根幹にかかわる点だ。民主党は次期国会で同じ内容の法案を出し直し、最優先で成立させることを国民新党に約束しているが、首相は法案内容について再吟味することが求められているのではないか。
国民新党は外国人参政権や選択的夫婦別姓に反対し、これらの導入を図ろうとした民主党にブレーキをかけてきた。連立の中でこうした問題を含めて徹底した政策論争を展開してもらいたい。
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