通常国会の会期が残り1週間を切り、会期を延長するかどうかが焦点となっている。
国民新党は、郵政改革法案を今国会で成立させるべきだとして、会期延長を主張している。
野党各党も、小沢一郎・民主党前幹事長らの「政治とカネ」の問題や、米軍普天間飛行場移設問題などをテーマに、会期を延長してでも予算委員会を開催するよう求めている。
これに対し民主党は会期延長に消極的で、党内には、首相の所信表明演説と代表質問だけで国会を閉会すべきだとの意見が強い。
菅内閣の支持率が高いうちに、16日に国会を終え、7月11日投開票の日程で参院選を実施した方が有利、と判断しているようだ。
会期末とはいえ、首相交代という異例の事態である。菅首相が真っ先になすべきは、内閣として取り組む政策目標を提示して、それを実施する具体的な道筋を明らかにすることだ。
参院選の争点を明確化するためにも、与野党が積極的に政策論争を行うことが求められる。
質問と答弁が一方通行の代表質問では、首相の政治姿勢や内政・外交全般にわたる考え方は十分わからない。やはり予算委を開催して、一問一答形式で双方向の議論をかわすべきだ。
論戦の機会を奪い、選挙の得失だけを考える。そうした姿勢は、大正から昭和初期にかけ、政友会と民政党などが、交互に野党側の質疑をさえぎる形で衆院解散を繰り返し、政党政治への信頼を失墜させたことを想起させる。
今回同様、通常国会中に首相が交代した2000年の森首相の場合、所信表明演説と代表質問だけでなく、衆参両院の予算委で質疑に応じてから衆院を解散し、総選挙に臨んでいる。
首相が交代した以上、国会論戦を通じて、有権者が1票を行使するための判断材料を提供するのは当然のことだ。民主党は予算委員会の開催に応じるべきだ。
「政治とカネ」の問題も、置き去りにされている。
小沢氏がいったんは出席の意向を示した政治倫理審査会も開催されないままだ。これで国会を閉じれば、「疑惑隠し」のそしりは免れまい。
菅首相は野党時代、予算委で政府を厳しく追及してきた。首相に就任したとたん、守勢に回るのでは、論客の名が泣くだろう。攻めの姿勢で野党との論戦に臨んでもらいたい。
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