民主党代表選 8か月半の総括が不可欠だ

毎日新聞 2010年06月04日

民主党代表選 刷新の覚悟が問われる

党を刷新できるか、覚悟が問われる。鳩山由紀夫首相の退陣表明に伴う民主党の新代表選びは菅直人副総理兼財務相と中堅の樽床伸二衆院環境委員長が出馬表明した。

首相と、小沢一郎氏の幹事長辞任を受け党の出直しが厳しく問われる局面だが、結局は小沢氏の存在が代表選の構図に大きく影響した。4日の代表選を、党の体質を改め、参院選に向けた政策の指針を示す場としなければならない。さもないと、信頼回復の足がかりはつかめまい。

野党としてこれまでも代表選を重ねた民主党だが、今回は首相選びと直結する意味で重みが格段に異なる。そんな中、まず名乗りをあげたのは鳩山氏と並ぶ党の創業者的存在の菅氏だ。知名度と実績を背景に自らが後任にふさわしいと自負しての出馬だろう。岡田克也外相、前原誠司国土交通相ら小沢氏と距離を置く勢力が支持に回り、他グループにも支援が拡大している。

これに対し、50歳の樽床氏は閣僚経験などの実績や知名度が乏しく菅氏と対照的だ。最大勢力である小沢氏系グループを中心に浸透を図っている。世代交代を掲げ、衆院の定数削減などに取り組む意欲を示した。

首相が退陣にあたり、小沢氏に連帯責任を求めた意味は重い。ところがフタを開ければ結局は小沢氏系の動向をめぐる駆け引きばかりにエネルギーが費やされた。結局、小沢氏系は自主投票となったが、小沢氏という要素を乗り切れない現実にやりきれなさすら感じてしまう。

それだけに、党刷新をどう実現するかは重要だ。菅氏は小沢氏を役職に用いない考えを事実上示し、政治とカネの問題など党浄化に取り組む姿勢をアピールした。しかし仮に代表に選ばれた場合、真に「脱小沢」を断行したかが試されるのは幹事長人事である。

一方で「反小沢や親小沢」は問題にならないと強調する樽床氏は、政権の二重構造の排除をどう担保するのか。4日の演説で、より具体的な説明が求められよう。

もちろん、政策論争も大事だ。菅氏は財政再建、社会保障、経済成長の一体推進を強調する。それならば、焦点の消費増税について自身の見解を、より具体的に語らねばなるまい。樽床氏もより明確に「なぜ出馬か」の動機と政権構想を語らないと唐突感はぬぐえまい。

民主党は4日中に国会の首相指名選挙、組閣まで行う予定だ。政治空白が好ましくないのは理解できるが、これだけ性急に政権を移行して出直しにふさわしい態勢が組めるか、疑問だ。新代表は原点に返り、国民新党との連立を含め、政権のあり方を点検すべきである。

読売新聞 2010年06月04日

民主党代表選 8か月半の総括が不可欠だ

鳩山政権の何を継承して、何を大きく変えねばならないのか。政権交代後8か月半の失政の真摯(しんし)な総括なしに、民主党の再生はあり得ない。

鳩山首相の退陣表明に伴う民主党代表選で、菅直人副総理・財務相と樽床(たるとこ)伸二衆院環境委員長が立候補を表明した。

菅氏は、「20年間の閉塞(へいそく)感を打ち破る先頭に立ちたい」と語った。樽床氏は、「キーワードは世代交代」と強調している。

通常国会は、多くの重要法案が未成立のまま、16日の会期末まで2週間を切った。その後には、参院選が控えている。

民主党が、政治空白を避けるため、短時日で鳩山首相の後継を選ぼうとする事情は一応理解できるが、大切な政策論議をおろそかにしてはなるまい。

党内の各グループの合従連衡だけで次期首相が決まるようでは、民主党が野党時代に批判してきた自民党の派閥政治による首相の「たらい回し」と変わらない。

鳩山政権が急速に支持率を低下させ、自民党政権末期の安倍、福田、麻生の各内閣よりも短命に終わったのは、なぜなのか。きちんと検証したうえで、反省すべき点は反省し、新政権の運営に生かす作業が欠かせないはずだ。

民主党では2004年以降、菅、岡田、前原、小沢、鳩山の各代表がスキャンダルなどでいずれも辞任した。小沢幹事長が代表を務めた3年余の期間を除けば、ほぼ毎年、党首が交代している。

与党として同様のことが繰り返されれば政治不信は極まろう。

米軍普天間飛行場の移設問題でぎくしゃくした日米関係をどう立て直すのか。日本経済を安定した回復軌道にいかに乗せるか。菅、樽床両氏は、明確な答えを提示してもらいたい。

両氏が小沢氏とどんな間合いをとるのかも注目される。菅氏が「小沢氏はしばらく静かにしてもらった方がいい」と述べ、樽床氏は「親小沢、反小沢に分ける考え方には立たない」と語った。

小沢グループは党内の最大勢力で、代表選のカギを握る。だが、小沢氏が役職を失っても、隠然と影響力を維持するようでは、首相という「表紙」を取りかえただけとの批判を免れないだろう。

きょう4日に選出される新代表はまず、どんな連立政権を組むかが問われる。国民新党との連立継続はともかく、参院選の選挙協力欲しさから、日米同盟を犠牲にし、再び社民党との連立を模索するような不見識は避けるべきだ。

産経新聞 2010年06月04日

民主党代表選 拙速で政策論争に欠ける

民主党の代表選に菅直人副総理・財務相と樽床伸二衆院環境委員長が出馬を表明した。

4日に党所属国会議員の投票により新代表を選出する。直ちに国会で首相指名選挙を行い、その日のうちに新内閣を発足させようとしている。

しかも、新代表を選出する両院議員総会では10分程度の演説しか行われないという。民主党が抱える本質的な問題点を徹底論議する絶好の機会だ。政策論争を通して新たな指導者を選ぶことを放棄している。これでは国民を無視した拙速きわまる後継選びと言わざるを得ない。

鳩山政権が国民の信を失い、8カ月余で行き詰まった原因は、政治とカネや米軍普天間飛行場の移設問題にとどまらない。

子ども手当に代表される大衆迎合的な政策や、支持組織への露骨な利益誘導など民主党政治への批判は根強い。鳩山由紀夫首相の指導力欠如と小沢一郎氏への権力集中によって生まれた権力の二重構造や独裁的な党運営の弊害も指摘されてきた。

民主党が主導する政権のあらゆる面が問われている。鳩山政権が続くほど国益が失われる、という痛烈な批判が少なくなかったことを重く受け止める必要がある。

党代表を経験した岡田克也外相や前原誠司国土交通相は、菅氏への支持を表明しており、岡田氏は「権力の二重構造は好ましくない」と、菅氏に対して小沢氏の影響力排除を求めている。

菅氏は出馬会見で、小沢氏について「国民の不信を招いた。しばらく静かにしていた方がいい」と語った。民主党が抱える本質的な問題として議論が必要だ。

新内閣発足を急ぐのは、国会を会期延長なしで16日に閉会し、参院選の投開票を7月11日とする日程から逆算したものだろう。鳩山首相退陣による党へのダメージを最小限に抑え、参院選に突入するねらいといえる。

国会審議の中断を極力避け、廃案の可能性が強まっている郵政法案を何とか成立させたいとの思惑も見え隠れする。新内閣が民営化に逆行する法案を最優先で成立させるなら、政策面でも国会運営でもこれまでと何ら変わらないことを強く印象づけるだろう。

こうした中で、民主党のマニフェスト企画委員会は成長戦略の数値目標を入れた参院選公約の原案を決めた。移行期間での重要な政策決定は理解しがたい。

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