「核拡散防止」会議 合意の着実な実践を

朝日新聞 2010年05月30日

NPT会議 核廃絶へ手札が増えた

「核のない世界」への道のりは長い。だが、破滅と背中合わせの核戦略に依存する現在の世界はあまりにリスクが大きい。目標は遠くても、核に頼らない安全保障へと、さまざまな政策手段を動員しながら一歩ずつ進んでいくしかない。

国連本部で開催された核不拡散条約(NPT)再検討会議は、64項目の行動計画を含む最終文書を全会一致で採択した。核兵器国と非核国の利害対立で交渉は難航したが、決裂した前回会議(2005年)の二の舞いは何とか回避した。文書は妥協の産物ではあるが、盛り込まれた数々の政策手段を最大限に生かしていくことが緊要だ。

たとえば、14年の再検討会議準備会合で核軍縮の動向を報告し、15年の再検討会議でその後の対応を考えることになった。

核廃絶への行程表を盛り込みたい。そうした多くの非核国の意向は実らなかったが、再検討会議が核軍縮を点検する機能を強めたことは大きな得点だ。NPTはそもそも、核不拡散をめざすだけでなく、核廃絶に向けた成果を積み重ねていかないと成り立たない。核兵器国はその重い現実を直視しなければならない。

これまでの核軍縮交渉は米ロが中心だった。今後は、英仏中が加わった多国間協議を模索していく必要がある。5カ国間では、核兵器の数だけでなく、米国が圧倒的優位に立つ通常戦力、ミサイル防衛なども課題になるだろう。いきなり政府間の協議が困難なら、専門家による政策対話をすぐにでも始めるなど、14年に向けて動き出してもらいたい。

最終文書は、NGOなどが求めた「核兵器禁止条約」構想に初めて言及した。日豪主導の国際賢人会議も昨年末、25年までに世界の核の総数を2千発以下まで減らし、核兵器禁止条約の準備も進めるべきだと提言している。

条約締結の時期が見通せているわけではないし、条約作りへの条件整備にも時間がかかることだろう。それでも、核廃絶を目指す限り、それを確たるものにする包括的な国際法が、やがて必要になる。世界の知恵を結集して、具体的準備を急ぎたい。

核実験した北朝鮮、インド、パキスタン。核開発疑惑の続くイラン、事実上の核保有国であるイスラエル。これらの国が核に手を出した背景には、根深い地域対立がある。地域問題での信頼醸成、和平・軍備管理交渉などを進めなければ、核危機が遠のかないのも現実だ。核に頼らない安全保障は、核保有国間の軍縮だけでなく、地域対立の行方にも大きく左右される。

核廃絶を強調する日本は、核保有国への働きかけに加え、もっと積極的に地域対立を緩和する外交手腕に磨きをかける必要がある。

毎日新聞 2010年05月30日

「核拡散防止」会議 合意の着実な実践を

10年ぶりの最終合意である。核兵器の拡散やテロの脅威から人類を守るにはどうすればいいか。約190カ国の代表がニューヨークの国連本部に集まって3日から始まったマラソン協議は「核兵器なき世界」を目標に掲げ、中東非核化会議の開催など数々の行動計画を盛り込んだ最終文書を採択した。5年ごとに開かれる核拡散防止条約(NPT)再検討会議は今回、確かな成果を上げて閉幕したといえよう。

とくに評価したいのは、最終文書が北朝鮮の核に厳しい態度を示したことだ。決裂状態で終わった前回05年の再検討会議後、北朝鮮は2度の核実験を実施してNPT体制を揺るがした。最終文書が北朝鮮の核実験を強く非難し、核兵器の全面廃棄を求めたうえで、北朝鮮を核保有国とは認めないことを再確認したのは、極めて重要かつ有益な判断である。

中東非核化への具体策で合意したことも歓迎したい。中東では核兵器保有が確実視されるイスラエルと、核兵器を持たないアラブ・イスラム諸国の対立が続いている。12年に開かれる国際会議には中東のすべての国が参加し、非核地帯の創設をめざすという。95年採択の「中東決議」に基づくものでイスラエルの核兵器を念頭に置くのは明らかだ。

オバマ米大統領は、非核地帯創設には中東包括和平が必要としてイスラエルだけを批判することに反対しているが、米国が常とする無条件のイスラエル擁護は逆効果になりかねない。イスラエルの核兵器保有を「公然の秘密」のまま放置すれば、対立するアラブ・イスラム諸国が核兵器技術の取得に傾くことは避けられまい。核をめぐる中東の危険な風土は、この辺で変える必要がある。

米英仏露中の5カ国に核兵器保有を認めたNPTは一種の不平等条約であり、「持つ国」が「持たざる国」に配慮しないとNPT体制は維持できまい。米露は再検討会議前に新核軍縮条約に調印したが、5カ国全体の核軍縮への努力は十分とはいえない。今回、核軍縮に具体的な期限を定める提案が葬り去られ、14年の再検討会議準備会合で核削減状況などを報告する程度にとどまったのは残念である。

最終文書には、核開発をめぐって国連の追加制裁に直面するイランをことさら刺激する文言は見られない。2回連続の決裂を避けるべく米国などが遠慮したのだろうか。その意味で最終文書は「妥協の産物」ともいえようが、核実験全面禁止条約(CTBT)の早期批准や兵器用核分裂性物質生産禁止(カットオフ)条約の交渉開始などは重要な合意である。「核なき世界」という遠大な目標に向かって、一歩一歩、合意の着実な実行が必要だ。

読売新聞 2010年05月30日

NPT会議閉幕 「核のない世界」への出発点に

ニューヨークの国連本部で開かれていた核拡散防止条約(NPT)再検討会議が、核軍縮の促進や核不拡散の強化のための行動計画を盛り込んだ最終文書を、全会一致で採択して閉幕した。

5年前の前回会議は、核兵器保有国と非保有国の対立が原因で決裂した。今回、文書採択に成功したのは、このままでは核拡散の脅威は増大するだけ、という強い危機感を双方が共有した結果だ。

これを新たな土台として、国際社会は、核の脅威を減らしていく努力を重ねていくべきである。

NPTは、核兵器保有国の増加を防ぐことを目的とする国際条約だ。保有国を米露英仏中の5か国に限定し、その他の加盟国は核兵器を持たないと誓約している。

そのNPT体制を大きく揺るがしたのは、北朝鮮である。NPTからの脱退を宣言した後、2度にわたり核実験を強行した。

濃縮ウラン活動をやめようとしないイランもまた、「原子力の平和利用」を隠れみのにした核兵器開発の道を歩もうとしている。

最終文書は、北朝鮮を「可能な限り強い表現で非難」し、6か国協議で自ら約束した核廃棄に取り組むよう求めた。平和を脅かす行為を看過しない、という断固とした国際社会の総意の表明を、北朝鮮は厳しく受け止めるべきだ。

オバマ米大統領の登場で、遅々として進まなかった核軍縮に大きな転機が訪れている。この機を生かして核不拡散体制を立て直すことは国際社会の重要な課題だ。

核保有国は、「核廃絶への明確な約束」を再確認したうえで、核軍縮を進め、2014年の再検討会議準備委員会で、進展状況を報告することになった。

米露両国は新たな核軍縮条約の批准、履行を急ぎ、中英仏とともに一層の軍縮に努めるべきだ。

非核国は今回、国際原子力機関(IAEA)が未申告施設を抜き打ち的に査察できる追加議定書を締結するよう「奨励」された。

原子力の平和利用を進める中で一層の透明性を確保しながら、核兵器開発をしていないことを立証していく必要がある。

最終文書は、焦点の中東の非核化構想について、その実現に向けた国際会議を2年後に開催すると明記した。NPT未加盟のイスラエルの核を不問に付すべきではないとするアラブ諸国の要望が反映された結果だ。

文書の採択には、イランも加わった。自らの核疑惑を払拭(ふっしょく)していくことが責務だろう。

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