満額支給の公約は凍結し、制度を全面的に見直す必要があるだろう。
6月から中学生以下を対象に「子ども手当」の半額支給(月1万3000円)が始まる。だが、期待より不安の方が大きい。
まず心配されるのは、支給窓口となる自治体の混乱だ。数多くの職員を投入して問い合わせなどに対応しているが、事務負担が大きく悲鳴が上がっている。
読売新聞が全国1750市区町村に聞いたところ、86か所で手続きが追いつかず、法律が定める6月支給に間に合わない可能性があるとしている。参院選前に手当が渡るように、政府が支給を急いだ影響と言えよう。
在日外国人など、子どもが国外で暮らしている場合にまで手当が支給されるため、問題が生じることも避けられない。
懸念された通り、兵庫県尼崎市で、タイに養子が大勢いるとして554人分の手当を申請するケースがあった。
厚生労働省は、親子が年に2回以上面会している、など支給要件を通知し、尼崎市での申請は受理されなかった。同省のホームページにも、「外国で50人の養子縁組を行っていても支給されない」との見解が示されてはいる。
だが、子どもが10人前後のケースで、市区町村が迷う事例が出てくるのではないか。自治体の負担はさらに増すが、養育の実態を厳正に確認した上で支給の可否を判断しなければ、国民の納得は得られまい。
何より不安なのは、半額実施で年2・7兆円、満額なら年5・4兆円という巨額の支出を要する制度が、財源の見通しを欠いたままスタートすることだ。
国債発行が税収を上回る緊急事態の財政下で、来年度以降、満額支給を始めたらどうなるのか。無駄の削減と予算の組み替えで捻出できる金額ではない。
ここは満額支給の看板をいったん取り下げるべきだろう。
民主党は参院選の公約で、来年度からの上乗せ分を保育サービスの充実策などに置き換えることも検討しているというが、半額支給にとどめればいい、というわけにもいかない。
子育て施策全体の議論をしっかりと詰めた上で、手当の額を再検討すべきだ。
子ども手当を恒久的に支給するなら、消費税率を引き上げるなどして財源を確保しなければならない。所得制限を可能にする社会保障番号の導入も不可欠だろう。
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