子ども手当 満額支給にこだわるな

朝日新聞 2010年05月27日

子ども手当 満額支給にこだわるな

鳩山政権の看板政策である子ども手当について、来年度から満額の月2万6千円にするという公約を見直す動きが出てきた。当然である。満額支給にこだわるべきではない。

今年度の手当の支給は来月から始まる。中学生までの子ども1人当たり月額1万3千円。来年度はどうするか。財政状況を見て、どれだけ上積みするかを判断し、保育やワクチンなどの現物サービスに回すことも検討するとの考えを、政府と党の実務者らでつくる委員会が示した。

党内には抵抗も根強いが、鳩山由紀夫首相や小沢一郎幹事長が出席する政権公約会議で「来年度の満額支給はできない」と、はっきり打ち出すべきではあるまいか。

公約へのこだわりはわかる。だが子ども手当を満額支給するには年間5.4兆円もの財源が必要だ。歳出の無駄を減らしても必要な財源を生み出せる展望が開けない以上、どうしても満額実施をするというのなら、消費税増税を含む税制の抜本改革とセットで考えるのが筋というものだ。

満額支給にこだわるあまり、保育所の整備や医療、福祉などの分野に十分な予算が確保できない。しかも子どもたちの世代に巨額のツケを回す。そんなことになれば、本末転倒だ。

今年度の半額支給さえ借金頼みなのだ。借金依存を一段と強める安易なやり方は、認められない。財源なしには満額支給などできないことを参院選前に率直に認め、現実的な政策へ手直しすることこそ、責任ある政治の姿ではないか。

子ども手当として配ったお金が本当に子どものために使われるのか。「2万6千円」の根拠は何か。さまざまな疑問も置き去りだ。このまま突っ走っていいはずがない。

子育て世代には、現金をもらうより保育所や学童保育の充実を進めてほしい、といった切実な声もある。

現金給付とそうしたサービスのバランスが大事だ、と国会で繰り返し説明してきたのは、ほかならぬ長妻昭厚生労働相自身である。

初年度、子ども手当が実際にどう使われ、どんな効果が出るのか。状況をよく見定めながら、制度のありようを再検討してはどうだろう。

日本の将来のために、子育てや教育をもっと支援したい、という考えは国民が共有している。人生前半の社会保障を充実しようという政策は大いに進めたい。

だからこそ、子どものための政策は、現金を配ることに偏りすぎてはいけないのではあるまいか。

緊急性、必要性の高い政策は何であり、財源をいかに確保すべきか。そうした政策論議を徹底することで、子ども手当制度の着地点も見えてくる。

読売新聞 2010年05月28日

子ども手当 全面的な見直しが必要だ

満額支給の公約は凍結し、制度を全面的に見直す必要があるだろう。

6月から中学生以下を対象に「子ども手当」の半額支給(月1万3000円)が始まる。だが、期待より不安の方が大きい。

まず心配されるのは、支給窓口となる自治体の混乱だ。数多くの職員を投入して問い合わせなどに対応しているが、事務負担が大きく悲鳴が上がっている。

読売新聞が全国1750市区町村に聞いたところ、86か所で手続きが追いつかず、法律が定める6月支給に間に合わない可能性があるとしている。参院選前に手当が渡るように、政府が支給を急いだ影響と言えよう。

在日外国人など、子どもが国外で暮らしている場合にまで手当が支給されるため、問題が生じることも避けられない。

懸念された通り、兵庫県尼崎市で、タイに養子が大勢いるとして554人分の手当を申請するケースがあった。

厚生労働省は、親子が年に2回以上面会している、など支給要件を通知し、尼崎市での申請は受理されなかった。同省のホームページにも、「外国で50人の養子縁組を行っていても支給されない」との見解が示されてはいる。

だが、子どもが10人前後のケースで、市区町村が迷う事例が出てくるのではないか。自治体の負担はさらに増すが、養育の実態を厳正に確認した上で支給の可否を判断しなければ、国民の納得は得られまい。

何より不安なのは、半額実施で年2・7兆円、満額なら年5・4兆円という巨額の支出を要する制度が、財源の見通しを欠いたままスタートすることだ。

国債発行が税収を上回る緊急事態の財政下で、来年度以降、満額支給を始めたらどうなるのか。無駄の削減と予算の組み替えで捻出(ねんしゅつ)できる金額ではない。

ここは満額支給の看板をいったん取り下げるべきだろう。

民主党は参院選の公約で、来年度からの上乗せ分を保育サービスの充実策などに置き換えることも検討しているというが、半額支給にとどめればいい、というわけにもいかない。

子育て施策全体の議論をしっかりと詰めた上で、手当の額を再検討すべきだ。

子ども手当を恒久的に支給するなら、消費税率を引き上げるなどして財源を確保しなければならない。所得制限を可能にする社会保障番号の導入も不可欠だろう。

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