相撲界と暴力団 抜本改革で癒着を断ち切れ

朝日新聞 2010年05月30日

相撲協会 これで「公益法人」とは

どこまで自覚のない人たちなのか。またまた角界で不祥事である。

昨年7月の大相撲名古屋場所で、暴力団関係者が土俵下の特別席で観戦、席の手配に親方2人が関係していたことが、愛知県警の調べで分かった。

日本相撲協会は税制面で優遇を受ける公益法人だ。だが角界はここ数年、力士暴行死事件や大麻問題、朝青龍騒動などで揺れ続けている。

先日も野球賭博疑惑で大関が警察から任意で事情聴取を受けた。こんな有り様では、公益法人としての適格性を疑わざるをえない。

名古屋場所で暴力団関係者が使った席は、協会に一定額以上の寄付をした個人や企業などに無償で割り与えられる「維持員席」である。維持員以外の利用は認められず、本来、一般客が手に入れることはできない。

親方2人は県警に対し、暴力団関係者に渡るとは知らずに仲介したと弁明し、直接の関与は否定している。

だが、維持員席の性格上、第三者に仲介すること自体が許されない。親方がそれを知らないはずはない。その席を不適切な方法で手配すれば、問題のある者に回りかねない。そんなことを認識さえしていなかったとすれば、協会運営を担う責任ある立場として、あまりにも情けない。

協会は27日の理事会に親方2人を呼んで事情を聴いた上で、降格などの処分を下した。当然である。

同じような問題が、名古屋場所以外で広がっている疑いもぬぐえない。不正な入場券の流通がないかどうか、徹底した調査を行うべきだ。

それにしても、協会は問題の深刻さを本当にわかっているのだろうか。暴力団との関係を取りざたされたのは初めてではない。横綱が祝儀を受けとったり、関取が組関係者と飲食中に発砲騒ぎに巻き込まれたりしたこともある。暴力団に甘い体質が依然根深いとしか思えない。

協会はこのところ、暴力団排除の姿勢を打ち出してはいる。親方に通達を出し、警察関係者による講習会を開く予定も立てていた。しかし、そんな取り組みを2人の親方たちはまったく意に介していなかった。

協会は今回の理事会で、規約に相当する文書に、反社会的勢力と一切の関係を持たない、などとする項目を盛り込んだが、現場への実効性ある指導がなければ絵に描いた餅に終わる。

文部科学省にも注文したい。協会から再発防止報告書を受け取る、といった型通りの対応ではだめだ。監督官庁として協会運営に目を光らせ、今度こそ強い指導を推し進めてほしい。

規約に相当する文書は、協会の目的を「相撲道の維持発展と国民の心身の向上」への寄与としている。だが、まず自らを律するのが先だろう。

毎日新聞 2010年05月27日

相撲と暴力団 協会は徹底的に究明を

大相撲の不祥事がまた明るみに出た。土俵下の特等席「維持員席」のチケット入手をめぐり、日本相撲協会の2人の親方が暴力団関係者に便宜を図っていたことが分かった。協会は27日の定例理事会で2人の親方の処分を決めるが、裏社会との黒い交際が明らかになれば「国技」を名乗る大相撲の信頼は失墜する。協会は事実関係を徹底究明し、ファンの疑念を晴らさなければならない。

問題となったのは昨年7月の名古屋場所。名古屋市を拠点とする山口組系の暴力団関係者が15日間で延べ約50人も土俵下の溜席(たまりせき)にある維持員席で観戦していたことが確認され、愛知県警の調べで、維持員席の手配に現役の2人の親方がかかわっていたことが分かった。

維持員は多額な寄付で協会の財政を支える重要なスポンサー。規約に相当する協会の寄付行為でも「維持員」は「役員」よりも先に1章を設け、「この法人の維持と存立を確実にし、事業を後援するものを維持員とする」と規定している。

維持員席は土俵下の溜席のうち、土俵に近い300席。テレビ中継でも表情までくっきりと映し出される特等席だ。捜査関係者の間では「服役中の組関係者にテレビを通じて自分の姿を見せるのが狙いでは」との見方もあるという。そんな形で相撲中継が悪用されていたとしたら笑い話では済まされない。

協会を支える重要な維持員のチケットが、どんな経路で暴力団関係者に流れたのか、協会のチェックはどうなっていたのか。2人の親方が関与したのは名古屋場所だが、東京場所など他の場所はどうなのか。両国国技館で行われた今年の初場所でも別の組織暴力団幹部の姿が維持員席で確認されている。今回のケースは氷山の一角ではないかとの疑いはぬぐえない。再発防止に向け、協会が解明すべき点は多い。

興行に伴う構造的な問題がありはしないだろうか。裏社会との接点を疑わせる事例はチケットだけではない。夏場所中、大関・琴光喜関が野球賭博に関与していた疑いが週刊誌で報じられた。ここ数年、モンゴル出身の横綱が協会の看板として活躍しているそのカゲで、日本人力士最高位の大関が相撲以外の賭けごとに熱くなっていたとしたら、ファンに対するこの上ない背信行為だ。27日の理事会では、この問題でも毅然(きぜん)とした対応が求められる。

一昨年秋、現役力士の大麻汚染など一連の不祥事で北の湖前理事長が引責辞任した後、検察・警察OBを理事・監事に迎え、体制を一新して再出発した協会が今回の事態にどう対応するか。相撲ファンは土俵外にも厳しい視線を送っている。

読売新聞 2010年05月27日

相撲界と暴力団 抜本改革で癒着を断ち切れ

不祥事続きの相撲界で今度は、多数の暴力団員の観戦に、現役の2人の親方がかかわっていたことが明らかになった。

角界と暴力団の癒着が疑われても仕方がない、ゆゆしき事態である。

暴力団員の観戦が確認されたのは、昨年7月の名古屋場所だ。愛知県警によると、土俵近くのテレビに映りやすい席で、15日間の場所中に延べ五十数人の暴力団幹部らが観戦した。

暴力団側の目的について、県警は、「刑務所でテレビ観戦している組員に、姿を見せるためだったのではないか」とみている。

これらの席は「維持員席」と呼ばれ、日本相撲協会に一定額以上の寄付をした個人や団体に無料で割り当てられている。現役の親方は、相撲案内所(茶屋)を通じて席を確保し、そのチケットが暴力団に流れたとみられる。

2人の親方は、「知人から頼まれた」「暴力団に渡るとは思っていなかった」などと話し、暴力団への直接的な便宜供与は否定しているという。

仮にそうであっても、相撲協会の運営を担うべき親方が、特別席での暴力団員の観戦という事態を招いた責任は大きい。相撲協会は27日の理事会で処分を検討するが、厳正な対処を求めたい。

両国国技館での今年の初場所でも、維持員席で暴力団幹部が観戦するケースがあったという。

相撲観戦が、暴力団の結束力の強化に悪用されることがあってはならない。相撲協会は、チケットが渡ったルートを徹底的に洗い出す必要がある。

相撲界と暴力団との関係を巡っては、大関琴光喜が野球賭博にかかわり、暴力団関係者から口止め料を払うよう脅されたという疑惑が週刊誌で報じられたばかりだ。警視庁は琴光喜から任意で事情聴取した。

暴力団とは関係を持たないという意識を末端にまで徹底させ、違反者には厳罰で臨む姿勢が、相撲協会には求められている。

時津風部屋での暴行死事件、大麻問題、横綱朝青龍の暴行騒動による引退――。相撲界は不祥事の連鎖を断ち切れないままだ。

今月の夏場所は、横綱白鵬の強さばかりが目立ち、13日目で早々と優勝が決まった。肝心の土俵は盛り上がりを欠き、土俵の外で醜聞が続いては、ファンの相撲離れに拍車がかかるだけだろう。

土俵際の相撲協会が、どう抜本改革を進めるのか。その取り組みをファンは注視している。

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