どこまで自覚のない人たちなのか。またまた角界で不祥事である。
昨年7月の大相撲名古屋場所で、暴力団関係者が土俵下の特別席で観戦、席の手配に親方2人が関係していたことが、愛知県警の調べで分かった。
日本相撲協会は税制面で優遇を受ける公益法人だ。だが角界はここ数年、力士暴行死事件や大麻問題、朝青龍騒動などで揺れ続けている。
先日も野球賭博疑惑で大関が警察から任意で事情聴取を受けた。こんな有り様では、公益法人としての適格性を疑わざるをえない。
名古屋場所で暴力団関係者が使った席は、協会に一定額以上の寄付をした個人や企業などに無償で割り与えられる「維持員席」である。維持員以外の利用は認められず、本来、一般客が手に入れることはできない。
親方2人は県警に対し、暴力団関係者に渡るとは知らずに仲介したと弁明し、直接の関与は否定している。
だが、維持員席の性格上、第三者に仲介すること自体が許されない。親方がそれを知らないはずはない。その席を不適切な方法で手配すれば、問題のある者に回りかねない。そんなことを認識さえしていなかったとすれば、協会運営を担う責任ある立場として、あまりにも情けない。
協会は27日の理事会に親方2人を呼んで事情を聴いた上で、降格などの処分を下した。当然である。
同じような問題が、名古屋場所以外で広がっている疑いもぬぐえない。不正な入場券の流通がないかどうか、徹底した調査を行うべきだ。
それにしても、協会は問題の深刻さを本当にわかっているのだろうか。暴力団との関係を取りざたされたのは初めてではない。横綱が祝儀を受けとったり、関取が組関係者と飲食中に発砲騒ぎに巻き込まれたりしたこともある。暴力団に甘い体質が依然根深いとしか思えない。
協会はこのところ、暴力団排除の姿勢を打ち出してはいる。親方に通達を出し、警察関係者による講習会を開く予定も立てていた。しかし、そんな取り組みを2人の親方たちはまったく意に介していなかった。
協会は今回の理事会で、規約に相当する文書に、反社会的勢力と一切の関係を持たない、などとする項目を盛り込んだが、現場への実効性ある指導がなければ絵に描いた餅に終わる。
文部科学省にも注文したい。協会から再発防止報告書を受け取る、といった型通りの対応ではだめだ。監督官庁として協会運営に目を光らせ、今度こそ強い指導を推し進めてほしい。
規約に相当する文書は、協会の目的を「相撲道の維持発展と国民の心身の向上」への寄与としている。だが、まず自らを律するのが先だろう。
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