児童ポルノ ネット画像の遮断も必要だ

朝日新聞 2010年05月25日

児童ポルノ ネット上の虐待断ち切れ

幼い男児や女児が性的に虐待され、抵抗のすべもなく屈辱を受けている。そんな写真や動画が、インターネットでは簡単に手に入る。

警察庁によると、画像を載せた者や撮影者を突き止め、摘発した例は昨年500件を超す。違法画像が見つかれば、サイト管理者への削除要請も行われる。だが海外サーバー経由のものなどは、たどり着くのは難しい。

違法な児童ポルノ画像の流通をせき止める、有効な手だてが必要だ。

プロバイダーなど通信事業者が自主的に取り組もうとしているのが、ブロッキングという手法だ。違法サイトのリストを基に、ユーザーがそのサイトを閲覧しようとすれば、自動的に遮断する。欧州などでも導入が広がる。

問題は、憲法で侵してはならないとされている「通信の秘密」とのかねあいだ。特定サイトへのアクセスを検知する目的で、ユーザーの同意なく通信を機械的に監視することは、私的検閲にあたり、本来は許されまい。

仮に政府がブロッキングにかかわり都合の悪い情報を遮断しようとするなら、なおさら危険なことだ。

しかし被害児童にとっては、性欲の対象にされた画像をだれもが見られる状態にあること自体が、拷問に等しい権利侵害となる。心に受けた傷は大人になっても残るだろう。

検挙や削除要請では深刻な被害を避けられない場合に限り、刑法で定める「緊急避難」にあたるという考え方で、ブロッキングを認めるべきだ。

とはいえ、副作用も心配な手法だ。ブロック対象の選定は第三者機関が透明な手続きで行い、捜査当局がむやみに介入できないようにする。児童ポルノ以外には拡大させてはなるまい。ネットユーザーも納得できるような仕組みづくりを、政府の協力も得ながら考えてほしい。

児童ポルノ画像は、子どもの性的搾取とも言うべきものだ。ネット上を漂う様々な有害情報の中でも、特別に許されないという認識を共有してゆきたい。国際協力による摘発強化を含め、幾重もの対策が必要だ。

例えば、ファイル交換ソフトでの流通はブロッキングでは止められない。児童ポルノ制作やネット投稿だけでなく、ファイル交換やダウンロードで違法画像を入手したり、持ち続けたりすることも、法で禁じるべきである。

昨年の通常国会では、自公与党が提案した「単純所持罪」を新設する児童買春・児童ポルノ禁止法改正案と、民主党の対案とを審議。捜査権乱用に歯止めをかけ、単純所持禁止の方向で、修正協議がまとまりかけていた。

ところが、その後の衆院解散と政権交代で議論は宙に浮いたままだ。対策が遅れるほど、深刻な被害が広がってゆく。政治の怠慢である。

毎日新聞 2010年05月26日

児童ポルノ ネット上のまん延防げ

児童ポルノの写真や動画がインターネットでは簡単に見られる。ネットに流されると回収不可能になり、被写体になった子どもにとっては自分のわいせつ画像が永続的にさらされる。児童ポルノがはんらんすることで子どもへの性犯罪を誘発する恐れも指摘されている。09年にネットを使った児童ポルノ事件の摘発は507件で前年の約2倍となったが、違法サイトは絶えず発生しており追いつけないのが実情だ。サイト管理者に対する削除要請も行われているが、利用者が閲覧しようとする際にプロバイダー(接続業者)が自動的に遮断できればさらに効果は上がる。この「ブロッキング」と呼ばれる方法は欧米を中心に導入する国が増えており、ようやく日本でも実施されることになった。

以前から日本の児童ポルノ対策の遅れは批判を受けてきた。どんな画像も一度ネットに流されれば世界中に広がるのであり、対策は各国が協調して行われなければ効果がない。日本発の児童ポルノが各国にまん延していることを重く受け止めるべきだ。また、児童ポルノと性犯罪を安直に結びつけることには異論もあるが、ネットを利用する人の中には当然ながら未成年者やポルノ映像に影響されやすい人も含まれていること、現実に子どもの性被害が深刻であることも考えねばならない。

プロバイダーが利用者の閲覧を検知する行為が、憲法や電気通信事業法の「通信の秘密」の侵害に当たるとの指摘もある。実際の運用は第三者機関が児童ポルノを掲載しているサイトのリストを作成して管理し、プロバイダーがリストに基づいてブロッキングを実施する。第三者機関がどのようなメンバーで構成され、どのような基準でリストを作成していくのかが重要になる。通信の秘密が侵害されるリスクを考慮しても子どもを守らなければならないからこそブロッキングは必要なのであり、それ以外の目的での「検閲」や中立公正に疑念が抱かれるようなことがあってはならない。一方、遮断された側から訴訟を起こされるリスクを回避しようとして実効性が薄れては意味がない。

ファイル交換ソフトでの流通はブロッキングでは止められないなど、対策はこれで十分なわけではない。昨年の国会では与野党が児童ポルノ禁止法改正案を提出し修正協議がまとまりかけたが、解散で宙に浮いたままになっている。野党になった自民党と公明党は改めて単純所持を処罰の対象とする改正案を国会に提出している。規制の対象をめぐって意見が分かれていることなどが議論の進まない背景にあるが、まず現実の被害に対して毅然(きぜん)と取り組むべきである。

読売新聞 2010年05月24日

児童ポルノ ネット画像の遮断も必要だ

インターネットによる児童ポルノの拡散に歯止めがかからない。

総務省は、児童ポルノが掲載されている有害サイトの閲覧をネット事業者が自主的に遮断するブロッキングを、本年度中に実施することでネット事業者などと合意した。

犯罪対策閣僚会議が来月に策定する包括的な児童ポルノ対策に盛り込まれる予定だ。

ブロッキングは、対象や方法によっては、憲法や電気通信事業法が保障する「通信の秘密」の不当な侵害に当たる恐れがあると懸念されている。

しかし、欧米では児童保護の観点から導入済みの国が多い。日本の児童ポルノ規制の遅れは、国際社会の批判も招いている。

総務省は、児童ポルノ以外の情報を遮断しないなど一定の条件が満たされるなら、現行法でも可能だと見ている。

ネット上には無数の児童ポルノが氾濫(はんらん)しているが、摘発されるのはそのごく一部だ。性的暴行を受ける子どもの画像が繰り返しコピーされ、いつまでも消えない。

ブロッキングを導入すれば、被害拡大を効果的に防ぐことが出来る。すべてのネット事業者にこれを義務づけるには、新たな立法措置も必要になろう。

ネットの普及により通信と放送の融合が進む中では、通信も放送と同じように規律の下に置かれるべき場合もあるだろう。

不当な権利侵害とならぬよう十分に配慮するのは当然だが、子どもを守るための措置は、広く国民からも理解されるはずだ。

ただし、課題も多い。ブロッキングの対象となる児童ポルノのアドレスリストはどのような団体が作成・管理し、ネット事業者に提供するのか。アドレス管理団体を誰が監督するのか。具体策を詰めなければならない。

最近は、ファイル交換ソフトによって児童ポルノがパソコン間でやりとりされるケースも多い。ブロッキングは困難で、犯意を立証しにくいため摘発も進まない。

併せて、児童ポルノの単純所持を禁止することも必要だ。

児童買春・児童ポルノ禁止法は児童ポルノの有償無償の提供や提供目的の所持を禁じている。法改正で、私的に収集する単純所持も禁止すれば摘発しやすくなる。

単純所持を禁止する法改正案は昨年夏、民主、自民、公明の3党でほぼ合意していたが、衆院解散・総選挙で審議未了のまま廃案となった。法改正に向けての議論を急がなければならない。

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