哨戒艦沈没報告 北に断固たる制裁とれ 日米同盟強め韓国と連携を

朝日新聞 2010年05月21日

韓国艦撃沈 北朝鮮に断固たる外交を

46人もの兵士が犠牲になった韓国軍の哨戒艦の沈没は、北朝鮮製の魚雷によるものだった。そして、それは「北朝鮮の小型潜水艦艇からの発射以外に説明がつかない」。5カ国からなる合同調査団がきのう、そう発表した。

戦争の引き金になりかねない撃沈だったということだ。日本を含む東アジア全体の安全をも大きく揺るがす許しがたい暴挙である。

動機は不明だ。金正日総書記への忠誠心競争が暴走した結果なのか。軍の威信を高め、後継体制づくりに利用しようとしたのか。昨秋、北朝鮮艦艇が海上の事実上の境界を南に下って韓国軍に撃退されたが、その報復との見方もある。いずれにしても異様な国家の異様な行動である。

北朝鮮は報告書を「でっち上げだ」としている。だが、1968年には韓国大統領府への襲撃を図った。83年にビルマ(現ミャンマー)訪問の大統領一行を狙ったラングーン爆弾テロ、87年の大韓航空機爆破と、韓国に対してテロを繰り返してきたが、北朝鮮は関与を認めていない。

冒険主義に走ることをいとわない危うい体制であることが改めて如実に示された。

しかし、この攻撃は北朝鮮自身にとっても無謀の度が過ぎたのではないか。経済の窮状は深刻化し、金総書記は健康不安を抱えている。国の先行きはますます不透明になっている。

また、決定的とも言える証拠が出たことで、これまでそれぞれの思惑から事態を大きく動かすことに慎重だった周辺国も態度を変える可能性がある。

韓国の国民の憤りは激しい。李明博大統領は「断固たる対応措置をとる」と語った。国連安全保障理事会での制裁を呼びかける方針だという。

北朝鮮にこれ以上の暴挙を重ねさせてはならない。同時に朝鮮半島の緊張をいたずらに高めない。これは日本を含め地域全体で取り組むべき課題だ。

まず、米中の役割が大きい。ことに中国が重要な役割を担わねばならない。さきの金総書記の訪中では、経済支援などで中朝間に溝があったともいう。北朝鮮の言動を中国が不快に思っているからでもあろう。中国には、経済面での強い影響力を生かし、北朝鮮の挑発的な行動を抑え、外交の場に引き出す努力を続けてもらいたい。

鳩山由紀夫首相は「韓国、米国をはじめ関係各国と緊密に連携・協力していく」と述べた。きょうクリントン米国務長官が来日して鳩山首相らと会談する。長官は中韓も歴訪する。月末には日中韓の首脳会議も開かれる。

北朝鮮は東アジアで最大の不安定要因であり、この事件はすぐれて日本の問題でもある。米国、韓国との深い関係を生かし、中国に働きかけを強める。外交努力が待ったなしだ。

毎日新聞 2010年05月21日

北朝鮮魚雷 共同対処で制裁措置を

まがまがしい物証が白日の下にさらされた。韓国海軍哨戒艦「天安(チョンアン)」の沈没事件につき、軍と民間の多国籍合同調査団は「北朝鮮製魚雷による水中爆発」が原因と断定し、魚雷のスクリューなど残骸(ざんがい)を公表した。爆発時に発生する物質がこの残骸と天安の両方に付着していた事実なども確認し、信頼度を高めた。

また、「魚雷が北朝鮮の小型潜水艦艇から発射されたという以外の説明はできない」という判断も、潜水艦部隊の動向など状況証拠にも依拠しているものの十分な説得力があり、妥当と言えよう。

鳩山由紀夫首相は「韓国を強く支持する。北朝鮮の行動は許し難い」とコメントした。一方、北朝鮮の国防委員会は声明で、調査結果を「捏造(ねつぞう)」と決めつけ、制裁などに対しては「全面戦争を含む強硬措置」で応えると宣言した。金正日(キムジョンイル)総書記を委員長とする事実上の最高機関による異例の直接反応である。

きょう訪日するクリントン米国務長官は、中国、韓国と続く3カ国歴訪中、「天安」沈没問題も重要議題とする。この歴訪の事前説明でキャンベル国務次官補は、北朝鮮をめぐって「近日中に非常に深刻な状況に直面する」と述べた。危機局面に入ったと言わざるを得ない。日米韓は細心の注意を払い、緊密に協力する必要がある。

韓国の李明博(イミョンバク)大統領は既に「断固たる対応」を宣言している。しかし武力報復の選択肢はない。事態がより深刻化する危険や経済への悪影響を考慮してのことだ。既存の南北協力事業のうち、北朝鮮側地域に韓国企業を誘致している開城工業団地は運営を維持するという。厳しい対立と冷ややかな協力が共存する南北関係ならではの緊張状態が続くことになる。これはやむを得まい。

韓国政府は問題を国連安全保障理事会に持ち込み、対北朝鮮制裁に結び付けたい意向だ。しかし北朝鮮の後ろ盾になっている中国は一貫して慎重姿勢をとってきた。現状のままでは制裁決議どころか議長声明での非難も難しいだろう。

だが安保理以外にも制裁的措置をとる方法はある。以前に効果が証明された米国の金融制裁強化や「テロ支援国家指定」の復活、米韓合同軍事演習によるけん制などだ。

46人もの犠牲を出した事件は到底容認できるものではない。核問題を扱う6カ国協議の進展が一時困難になろうとも、まず確固たる共同対処で北朝鮮の行動を変えさせる必要がある。それが核問題の解決にもつながるという展開が望ましい。

そのためには結局、中国の協力が不可欠だ。選択肢の少ない日本も、こうした点で知恵を出したい。

読売新聞 2010年05月21日

韓国哨戒艦沈没 やはり「北」の魚雷攻撃だった

朝鮮半島の西側の黄海で、3月26日に起きた韓国海軍哨戒艦「天安」の沈没事件について、韓国の軍・民間合同調査団は「北朝鮮の魚雷攻撃」によるものだった、と結論づける調査報告を発表した。

名指しされた北朝鮮は、ただちに「捏造(ねつぞう)だ」と反発し、制裁に対しては「全面戦争を含む各種の強硬措置で応える」と恫喝(どうかつ)した。

今後の展開次第で、北朝鮮が危険な挑発行為に出る恐れもある。日米韓の3か国は連携を強め、これを断固阻止する決意で臨まなければならない。中露両国も、これに呼応すべきだ。

調査団には、米、英、豪、スウェーデンの専門家も加わった。

「北朝鮮の犯行」を裏付ける決め手となったのは、沈没現場の海域で回収したスクリューを含む魚雷用の推進動力部品だった。北朝鮮の輸出兵器カタログに載った魚雷の設計図に示された部品と大きさや形状が合致していた。

そうした物的証拠も公開しての発表は客観的で説得力がある。

当の北朝鮮は、事件との関与を否定している。だが、日本人拉致や、韓国の4閣僚らを爆死させた27年前の爆破テロなどで、ウソを重ねた北朝鮮のことだ。額面通りには受け取れない。

事件現場は、韓国と北朝鮮の艦艇が衝突を繰り返してきた一触即発の海域だ。昨年11月にも、機関砲を撃ち合い、北朝鮮側に損害が出た。魚雷攻撃はその報復だとする見解が韓国内にはある。

韓国は今回の事件を機に、防衛政策の抜本的見直しに入った。米韓同盟の一層の強化を打ち出す見通しだ。左派政権の対「北」融和政策の結果、北朝鮮への警戒が薄れていたことへの反省がある。

韓国政府は、国連安全保障理事会に提訴する方針だ。

鳩山首相とオバマ米大統領は、李明博大統領との個別の電話会談で韓国への支援を約束した。安保理では、北朝鮮の責任を厳しく問う文書の採択に尽力すべきだ。

中国が、調査結果発表を受けて北朝鮮非難の姿勢を見せるかが、注目される。この際、中国には毅然(きぜん)と対処してもらいたい。

北朝鮮の核廃棄を目指す6か国協議の再開は、今回の事件の影響で、当面ずれ込むと見られる。だが、それは協議復帰を渋る北朝鮮にとって、核兵器開発の時間を稼ぐことにつながる。

日本の安全を直接脅かす北朝鮮の核開発を野放しにはできない。日本としては、6か国協議の早期再開の道を探る必要がある。

産経新聞 2010年05月21日

哨戒艦沈没報告 北に断固たる制裁とれ 日米同盟強め韓国と連携を

韓国海軍の哨戒艦「天安」沈没事件の原因について、韓国軍と民間専門家による国際合同調査団が「北朝鮮の小型潜水艦から発射された大型魚雷によるもの」と断定する調査報告を発表した。北朝鮮は関与を否定しているが、報告は具体的事実を網羅し、信頼に足る内容である。

事件は46人の犠牲者を出し、韓国に対する戦争行為に等しい軍事的暴挙といわざるを得ない。昨年春の弾道ミサイル発射と核実験の強行に続き、北東アジアの脅威を高め、世界の平和と安全に対する許し難い挑戦である。日本は米韓との連携を強化するとともに、国連安全保障理事会などを通じて協力し、国際社会の総意として断固たる制裁を発動すべきである。

◆直視すべき危険な現実

事件は日本の防衛と安全保障にも重大な問題を突きつけた。何よりも朝鮮戦争勃発(ぼっぱつ)60年の節目に起きた事件が象徴するのは、日本の安全に直結する北東アジアで、戦争再発につながる危機と緊張が半世紀以上を経て今なお続いているという現実だ。

にもかかわらず、鳩山由紀夫政権下で米軍普天間飛行場移設問題も解決できず、日米同盟は深刻な空洞化の危機に瀕(ひん)している。ミサイルと核の脅威に加え、北のさらなる挑発や朝鮮半島有事の備えも含めて、政府は国の総力を挙げて防衛態勢を再構築すべきだ。

事件が起きた北方限界線(NLL)海域は朝鮮戦争休戦協定直後の1953年夏に設定され、南北の武力衝突が繰り返されてきた。今回の事件も、昨年11月に起きた大青海戦で韓国側が北朝鮮艦艇に甚大な被害を与えた事件に対する周到な「報復」とみられる。

北朝鮮は合同調査団報告を「でっち上げ」とし、韓国側の報復や制裁に対して「全面戦争を含む強硬措置で応える」と警告した。一片の反省もなく、米国や李明博・韓国政権への対決姿勢を鮮明にしたことは、今後も同様な攻撃や挑発があり得るとの前提で対応しなければならない。

とりわけ韓国は、11月に主要20カ国・地域(G20)金融サミット開催を予定している。北の攻撃はこれを威嚇・妨害する効果を狙っているとも考えられる。

報告を受けて、李大統領は週明けにも韓国政府の対処方針を公表するが、少なくとも新たな対北制裁の追加に向けて国連安保理に問題を提起する可能性が高い。米国内では、過去に北朝鮮が起こしたラングーン事件(83年)や大韓航空機爆破テロ(87年)を想起し、ブッシュ前政権時代に解除された「テロ支援国家」に北を再指定すべきだとの意見もある。

米政府は「休戦協定違反」と厳しく非難した。今後は、クリントン国務長官が21日に来日して岡田克也外相らと協議し、訪中や米韓協議を経て具体的な対応を詰めていく見通しだ。

その場合、日本政府は核、ミサイル、拉致問題を一括解決するとの既定方針を貫くためにも、テロ支援国家再指定をオバマ政権に強く求めるべきである。また安保理制裁を履行する上で懸案となっていた北の船舶に対する貨物検査法案が20日、衆院を通過したのを踏まえて、制裁の実効性をさらに高めるために早急に成立させる必要があることもいうまでもない。

◆中国の責任は大きい

北の暴挙をやめさせる上で、とりわけ中国の責任は大きい。中国政府は今月初め、沈没事件に対する北の関与説が強まっていたにもかかわらず、金正日・北朝鮮総書記の訪中を受け入れ、6カ国協議の早期再開へ向けた経済支援について話し合った。

大規模経済支援では合意に至らなかったとの観測もあるにせよ、今回の事件で中国政府が消極的対応を示しているのは理解できない。現在は6カ国協議の再開よりも事件への対応を優先する必要がある。北が協議に無条件復帰しないかぎり、北に見返りを与える形で復帰を促すべきではない。

鳩山首相は20日、関係閣僚会議を開き、「米韓を含む関係各国と緊密に連携・協力していく」との談話を発表した。基本方針として当然だが、テロ支援国家再指定問題も含めて、米韓の態度表明を待つ姿勢では主体性に欠けるといわざるを得ない。

今回の国際調査も、日本の直近で起きた事件である以上、何らかの形で貢献することもできたはずだ。人ごとではない。日本の安全を自ら守る毅然(きぜん)たる姿勢と日米同盟を強化する指導力を発揮しなければ国の安寧は保てない。

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