企業決算 技術生かす経営革新を

朝日新聞 2010年05月16日

企業決算 技術生かす経営革新を

企業の3月期決算発表で業績の回復ぶりが鮮明になったとはいえ、上昇気流をつかむには、新時代に即した経営改革が問われている。

東証1部上場企業は、全体で最終赤字に陥った1年前の奈落を脱し、黒字に転換した。売上高が減っても、利益が増えた例が目立つ。必死のリストラが奏功した。

自動車、電機など輸出産業は新興国経済の活況からも恩恵を受けた。半面、小売りなど内需関連はデフレに苦しむ。円高や原材料高、政府による景気対策の効果の息切れなど心配の種は尽きない。

それでも、前向きな設備投資や研究開発など「守りから攻めへ」の動きが広がり、今年度は本格的な増収増益への期待が高まる。

順調にいくかどうかは、経済成長が勢いを増す新興国向けビジネスの成否にかかる。だが、日本企業は売れ筋の低価格品を作るのが苦手だ。そこを克服するには、経営の革新を大胆に進めなければならないだろう。

すでに新興・途上国の市場で浸透しているのはサムスン電子など韓国企業だ。まねのできない面もあるが、学ぶべき点は多い。

日本企業は独自開発した製品に機能を次々と加えて高級品を作ることに熱心だが、新興国市場をよく知る韓国企業は、高級品からどんな機能を除けば売れるかという「引き算の開発」に長じている。

もちろん日本企業に強みはある。長年にわたる研究開発で生み出した独自技術の蓄積は大きい。だが、ここでも問題を直視しなければならない。

DVDなど日本企業が特許の大半を握る製品でも、世界的な普及期に入るとアジア企業に押されて日本製のシェアが急落するパターンが繰り返されてきた。この結果、日本の産業に閉塞(へいそく)感や疲弊感すら漂う。

技術の粋は半導体やパネルなど基幹部品に組み込まれるようになり、これらを買えば世界中どこで組み立てても品質にほとんど差が無くなってきた。このため、経費の安いアジア企業が特許料を払ってでも優位に立てる。同様の現象は太陽光発電など環境分野にも見られ、電気自動車でも起きるのではないかと警戒される。

巻き返すには、技術を買いたたかれないための工夫をこらす必要がある。デジタルカメラの場合、日本企業独自の技術が1台の中に完結しており、他国の企業はまねができない。高収益で、国内工場も増えている。

こうした事例を参考に、他の分野でも勝負どころの技術を特許や契約で守りつつ、世界市場で売る製品の開発戦略を磨いてほしい。

知的財産戦略を軸に、もうかるビジネスモデルを再構築する時だ。

読売新聞 2010年05月17日

企業決算 本格回復への道は半ばだ

企業業績はV字回復でどん底を脱した。だが、先行きは不透明で、本格的な回復への道はまだ半ばだろう。

東証1部上場企業の2010年3月期決算の発表がピークを迎えた。上場企業全体の税引き後利益は、2期ぶりに黒字に転換する見通しだ。

一昨年秋のリーマン・ショックと世界不況に直撃された昨年3月期決算は、主要企業が巨額赤字に転落し、戦後最悪だった。

2期連続の赤字を覚悟した企業も多かったが、実際には、黒字に転換したり、赤字を大幅圧縮させたりした企業が相次いだ。

全体の約3割が、リーマン・ショック前の税引き後利益の水準を回復した。予想以上に早く、各企業が業績悪化に歯止めをかけ、試練を乗り切ったと言えよう。

最大の原動力は、リストラやコスト削減の徹底だ。売り上げが減っても利益が出せるよう、体質を絞った結果、上場企業全体の売上高は前期比で減少しながら、利益が増える減収増益を実現した。

業種別では、世界不況からいち早く脱した中国などの新興国市場向けに、輸出を増大させた自動車と電機が牽引(けんいん)役になった。

自動車やデジタル家電の販売を支援する各国政府の景気刺激策も追い風に生かしたのだろう。

利益を倍増させたホンダが代表例だ。トヨタ自動車も2期ぶりに黒字を確保し、復活した。前期は巨額赤字の日立製作所も、黒字化が視野に入ってきた。

一方、小売り、不動産、商社などの非製造業は苦戦し、業績の回復にはばらつきがある。

資生堂は、アジア市場に活路を求める戦略強化を打ち出した。内需型の企業も、外需をいかに取り込むかが重要だ。

だが、企業の経営環境はまだまだ厳しい。今期の業績に慎重な企業が多いのも当然だろう。

世界景気は持ち直してきたが、ギリシャ危機をきっかけに不安が再燃した。欧州経済の低迷が長期化すると、世界全体に波及しかねない。日本にとっても、急激な円高・ユーロ安は、輸出企業の採算を悪化させる。

各国政府がとった景気刺激策の効果も剥落(はくらく)しつつあり、鉄鉱石などの値上がりも懸念材料だ。

各社は、業務の「選択と集中」を一層加速し、財務基盤を強化しなければならない。

リストラ主導では限界がある。新たな成長市場を開拓し、競争力ある製品を生み出すなど、「攻め」の姿勢が肝要である。

産経新聞 2010年05月17日

企業決算 業績回復に気を緩めるな

企業の平成22年3月期決算発表がピークを迎え業績の回復傾向が鮮明になっている。一昨年秋のリーマン・ショックに端を発した世界同時不況を乗り切り、先行きにも明るさが見え始めた。

だが、売上高はなお減少が続いており、エコカー減税などの政策支援とリストラ効果が収益水準を押し上げている構図は変わらない。日本企業は新興国市場の開拓や付加価値製品の開発を通じ、さらなる成長に向けて収益力を高める取り組みが求められよう。

米国のリコール問題に揺れたトヨタ自動車の決算は、2期ぶりに最終損益が黒字に転換した。アジアを除く海外市場で販売台数は減少したが、人件費の削減や生産コストの低減などによって1兆円規模で収益を改善した。直前まで赤字決算を予想していたというものの、同社お得意の「カイゼン」でV字回復を果たした形だ。

パナソニックやソニーなど大手電機メーカー各社も旺盛な新興国需要に支えられ、本業のもうけを示す営業利益で軒並み黒字を達成した。エコカー減税やエコポイント制度なども追い風となった。自動車や電機など日本を代表する輸出産業は水面下から確実に浮上しつつあるようだ。

東証1部企業を対象にした民間シンクタンクの調査によると、22年3月期の売上高は前期比で平均10%以上減少したが、経常利益は27%増えた。国内市場は物価が継続的に下落するデフレで、売り上げ増は当面厳しい。それだけに企業は、合理化努力を緩めることなく、利益を生み出す体質への転換を進める必要がある。

企業業績の回復傾向が顕著とはいえ、今年度の経常利益予想はピークだった20年3月期の6割前後と控えめだ。ギリシャ危機による世界経済への影響が不透明であることに加え、原油など資源価格の高騰で生産コストの上昇懸念が強まっているからだ。

企業の収益を本格的な回復軌道に乗せるには、新興国市場だけでなく、やはり内需の掘り起こしが欠かせない。低価格競争とは一線を画す新たな価値観を創造する商品やサービスの開発が必要だ。

従業員に対する利益配分も問われる。今春闘の賃上げは小規模だったが、国内総生産(GDP)の約6割を占める個人消費の活性化は景気の本格回復に不可欠だ。その意味でも企業は、早期に収益基盤を立て直す必要がある。

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